護衛任務7
ラウルとシルフィの会話を、不思議そうに眺めていたセバスは質問をした。
「それでフィデル様、こちらのお嬢さんはどのようなご関係なんでしょう?」
「ニルバーシュ伯爵の一人娘で、シルフィだよ。俺の婚約者ですよ。」
「なんと、フィデル様にはすでに婚約者もいらっしゃるのですか。流石です。」
「うん、シルフィは俺が奴隷の時にも、ひとりの人間として接してくれました。優しい人です。俺にとって一番大事な人でもあります。」
そう言うと、シルフィは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
ラウルもセバスに一つお願いがあった。
「セバス、これからは俺のことをラウルと呼んでくれますか?」
「え!? しかし・・・。」
セバスはフィデルの名前で呼びたいのだろう。
「今は、第一王子の子供が生きていると知られたくないので、お願いします。」
「わかりました。ラウル様。」
まぁ、第一王子の子供だと言い切ることもできないが、多分俺だもんな。。
ラウルはこれからのことを相談することにした。
「セバスは今後はどうするつもりですか? 俺達と行動を共にするのですか?」
「ラウル様の騎士ですので、当然同行いたします。」
「ですよね。」
メアリーさんの方を向き、質問する。
「メアリーさんは、セバスさんとどのような関係なのでしょう?」
「夫婦です。」
なるほど、一応想定内の返事が来た。
「メアリーさんはこれからどうしますか?」
「もちろん旦那についていきます。ラウル様には負担をかけないようにしますので、連れて行ってもらえないでしょうか。」
「負担だなんて考えてもいませんので、安心してください。もちろん、一緒に来てもらいますね。」
メアリーさんは、実は近衛兵団の副団長だったらしい。セバスさんに思いを寄せていて、共に近衛兵団を辞めたそうだ。それからは、剣をまったく触っていないらしく、戦力にはならないと自己申告があった。雑用や、情報収集など裏方を頑張ってくれるそうである。
ラウルはシルフィと少し相談した結果、異次元の家のことを話すことにした。
「えーと、これからお話しすることは極秘事項です。決して誰にも話さないように気をつけてくれますか?」
「はい。なんでしょうか?」
セバスは少し緊張気味で話の続きをじっと待っています。
「実は、俺は空間魔法術士なのです。」
「はい、非常に珍しいですが、私も何人か知っていますよ。」
「ただ、少し規格外らしくてですね、自分の作った異次元空間に自分の家を建ててるんです。」
「は?」
やはり、そのような反応をしてしまいますよね。。
「これから、セバスさんとメアリーさんの住む家も作りますので、異次元の入り口をこの壁に作らせて貰いますね。」
「は、はい。・・・え?入り口ですか?」
論より証拠ともいいますので、ラウルはとっとと壁に入り口を繋げた。
壁の向こうに広い空間が広がっているのが見える。
「え?、えー?」
「早速、家を作りますのでついてきてくれますか?」
「は、はい。」
夫婦揃って驚愕の顔をしている。
ラウルは気にせずに家を作る準備を始める。壁際まで来ると、手をかざしてイメージをする。すると、壁に車輪でもついたかのように、するするーっと奥に広がっていく。ある程度動くと、止まった。
「このくらいかな。」
セバス夫妻はすでに何も言えなくなって、ただ呆然とみている。
ラウルは次に広がったスペースに向かって手を伸ばす。
「はっ」
(ぽんっ)
気がつくと、目の前に隣に立っている物とまったく同じ家が建っていた。
「はい、セバス達の家です。自由に使ってくださいね。」
そう言ったのだが、返事はなかった。初めてラウルの力を見た者は、だいたいこうなった。平常運転に戻るまでにしばらく時間がかかるのである。
ラウルはセバス夫妻を引っ張っていき、家の中を案内してまわる。魔道具の説明など最低限のことは伝えておかなければいけない。火災には十分に気をつけて貰うようにお願いもした。
一通り説明すると、ラウル達の家に招待してニーナの紹介をする。もうひとりの婚約者かと驚かれたが、犯罪奴隷ですと答えるともっと驚いていた。
(随分とにぎやかになってきたな。。)
ラウルはセバス夫妻をぼんやり眺めながらそう思った。
セバスは、何かいいたそうな顔をしていた。
「セバス? どうかしたのか?」
「あ、はい。ラウル様。。私は空間魔法はあまり詳しくはないのですが、伝説の空間魔法の中に『クリエイトワールド』と呼ばれる異世界空間に、自分だけの世界を創造するというとんでもない魔法があると聞いたことがあります。もしかして、今いる空間が『クリエイトワールド』で作られた世界なのではないでしょうか・・・?」
「えー? 『クリエイトエリア』で作っただけなんだけどなぁ。」
ラウルはアイテムボックスを拡張した魔法で、実際に人間が中で生活できる世界を創造する究極の魔法、『クリエイトワールド』を無意識に作り出してしまっていたのだ。『ワープ』が『クリエイトエリア』で作られた魔法だったのと同じように、『クリエイトワールド』も『クリエイトエリア』で作られることを、ラウルは知る由もなかった。




