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護衛任務6

 ラウルはセバスに答えます。


「確かに、俺はフィデルに容姿がそっくりなのかもしれない。しかし、それだけでは俺がフィデルだと証明することはできないでしょう。髪の色だって、まったく生まれないわけでもないし、瞳の色だって同じ色の瞳を持つひともいるかもしれない。他に、フィデルだけにしかなかった身体的特徴とかはなかったのですか?」

「流石にそこまでは知りません。。しかし、私はあなた様がフィデル様だと確信しております。昔、遠くからですが幼少の頃のフィデル様を見たことがあります。その時の面影がラウル様にそっくりなのです。」


 ラウルはなんとなく感じていた。フィデルがラウルなのだろうと。

 普通に考えれば、3歳で文字の読み書きなんて絶対に不可能だ。前世の知識があったから可能だったのだろう。前世の知識を持っているのは転生者くらいだ。この時代にラウル以外に転生者がいることはまずない。つまり、フィデルがラウルなのである。


(だからって、どうしようもないだろ。今さら俺が第一王子の子供だと訴えるのか? 俺に国王をやらせろと訴えるのか? それこそ国を混乱させてしまう。それは国民にとってマイナスでしかない。)


 ラウルはセバスに質問を投げかける。

「セバスさんは、一体何者なのですか?」


 セバスは少し悲しい顔をして答える。

「私は、フィデル様のご両親を守れなかった男です・・・。」


 セバスは重い口を開いた。

「私は当時、バルサニール王国近衛兵団の団長を拝命しておりました。近衛兵の主な仕事は王族の護衛でした。ある日、王の護衛と、第一王子の護衛の任務が重なってしまいました。私を含め、主力の近衛兵は王の護衛につき、第一王子は少ない近衛兵と冒険者が雇われておりました。報告があがってきたのは夕方過ぎで、すでに王の護衛は終わっていました。報告の内容は、第一王子が盗賊に襲われたというものでした。たまたま通りかかった巡回中の衛兵が発見したらしいのです。私達はすぐに第一王子の襲撃された場所に向かいましたが、そこは酷い惨状でした。生きている者は誰ひとりとしていなかったのです。」


 セバスの懺悔のような告白はまだ続いた。


 地面は一面が赤黒く変色し、呻き声すら聞こえてこなかった。静まりかえっているその場所で、セバスは力なくその場に両膝をついた。ひとり、またひとりと、亡骸を調べていく。護衛についていた近衛兵も冒険者も全員の死亡が確認された。第一王子のウェイン様は馬車の前で、妻のジェイル様は馬車の中で事切れていた。息子のフィデル様だけが見つからなかった。

 目撃者は誰ひとりおらず、捜査はすぐに暗礁に乗り上げた。周辺の盗賊を片っ端から拘束し、情報を集めたが誰ひとり有益な情報はもっていなかったのだ。


 その後、捜査は打ち切られ、国を挙げての国葬が執り行われた。

 当時のロイ国王は、息子の死を受け止めきれず体調を崩し、一年も経たずに崩御される。それだけ第一王子を大切に思っていたのだろう。噂によると、精神的な病に伏したらしい。次の王になられたのが、ウェイン様の弟、第二王子のダグラス様であった。


 よく問題として上がるのは、跡目争いであろう。しかし、兄弟の中は決して悪くはなかったそうだ。確かに第一王子派と、第二王子派の派閥は存在していたが、第一王子派の方が圧倒的な勢力を有していたために派閥間の争いもなかったという。


 ラウルは不思議に思った。近衛兵の団長まで登り詰めた男が、何故国を出てこんなところで冒険者をやっているのだろう。それも、酒に溺れているように見受けられた。


「セバスは何故今冒険者をしているのですか?」

「それは、第一王子を守れなかった責任を取って近衛兵を辞めたのです。」

「自ら辞めたのですか? それとも責任を取らされて辞めさせられた?」

「それは後者ですが。私自身も処分に納得しておりますので。。」

「そうでしたか。」


 おそらく、第一王子が亡くなった為に、第二王子派が急激に勢力を伸ばしたのだろう。おそらく話から推測すると、セバスは第一王子派だったのだろう。


 ラウルはしばらく考えた後、結論を出す。


「セバスさん、俺がフィデルだという明確な証拠はありません。」

「う・・・、はい。確かにラウル様の仰るとおりです。。」

「しかし、俺がフィデルではないという明確な証拠もないのです。」


 それを聞いたセバス、驚いた顔でラウルを見つめてきた。


「もしも、俺がフィデルだとしたら、セバスは俺に何を求めるのですか?」

「それは・・・。」


 セバスは言葉に詰まる。数秒間経ってから再び口を開いた。


「フィデル様に求めることは、ただひとつ。フィデル様の騎士として仕えることを許して欲しい。そして、今度こそ主を守り切ってみせたい。」


 セバスは過去の清算をしたいのだろうか。自分の過去の過ちを、ラウルを守護することで償うつもりなのかもしれない。


「俺、平民だから騎士に叙爵するなんて無理ですよ。」

「形だけで・・・。いや、フィデル様が私のことを騎士として心から認めて貰えるのなら、私にとってそれは叙爵と同じことでございます。フィデル様の言葉だけで、私は騎士としての誇りを取り戻すことができるでしょう。」


 ラウルは決心した。セバスのためにも良い主になろうと。


「わかりました。それでは、私はこれから二つの顔を持つことにいたします。貴族としてのフィデルという顔。そして、平民のラウルという顔。」

「フィデル様・・・。」

「セバス、フィデルとして命ずる。今日からお前は私、フィデルの騎士として共に生き、共に苦難の道を進むと誓え。」


 それを聞いていたセバスは身震いをした。

 自然と涙が目から溢れ出る。


 セバスは、魂で感じ取った。この方は間違いなくフィデル様だと。もはや、証明など必要ないのだと。目の前に立っておられる方は、間違いなくフィデル様だと。

 セバスはその場に跪く。そして頭だけを主へと向け誓いの言葉を述べる。


「お、おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!」

 セバスの魂からの叫びが辺り一帯を包み込んだ。それだけでビリビリとあたりを震わす。


「私、セバスは、フィデル様の剣となり、盾となり、身命を賭してでも主様をお守りすることを誓います!」


「セバスよ、決して死んではならない。そなたが死んでしまっては、その後は私を誰が守るのだ? 私の寿命か、セバスの寿命が尽きるまでは死んではならない。」

「う・・・、肝に銘じます。」


 主はなんと心優しい方であろうかと、セバスはまた涙した。


「ラウル・・・、喋り方まで変わるのって、なんか気持ち悪くない?」

「ぐぅ・・・、お嬢様。それは結講心にグサッと刺さります。。」


 (少し格好をつけすぎただろうか?)

 結局、シルフィには叶わないなとラウルは思ったのだった。。




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