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護衛任務3

 先頭の馬車からリサさんが降りてきた。


「少年、何かあったのか?」

「南の方から何かがやってきています。戦闘準備をお願いします。」

「うん? 何故わかる?」

「俺は空間魔法術士ですから、索敵魔法が使えます。」

「ほう・・・。」


 リサさんは納得したのかしていないのか、微妙な顔で戻っていった。

「戦闘準備ー! 南の方角から敵が接近中だそうだ!」

 そして、大きな声で指示が飛ぶ。すぐに南の方角に数人が走る。

 ラウルたちは、馬車の前で最終防衛ラインを死守する。


 敵が近づくにつれ、詳細が判明する。ラウルは最前列の冒険者に向けて叫ぶ。

「敵、オーク。数は6!」

「そんなことまでわかるのか!」


 次第に、遠くから草をかき分ける音が聞こえてきた。そして、目の前の木と木の間からオークが顔を出す。その数、6匹。


「グルアァァァァ」

 オークが喚きながら襲ってくる。その手には大きな棍棒のような物が握られている。すでに敵味方共に混戦状態になっており、ラウルが得意とする空間魔法の『カット』では味方まで傷つけてしまう可能性があった。

(うーん、こんな時には俺の魔法は使い物にならないのよねぇ・・・。)

 ラウルと同じ理由で、攻撃魔法が得意なシルフィも味方が近すぎて魔法が撃てないでいた。


「ニーナ、ここは大丈夫だから、皆の援護にまわってくれ。」

「はい、ご主人様。」


 ラウルはニーナを前線に送る。

 ラウル自身も盾を装備して馬車の前でじっと待つ。


 冒険者の隙をみて、一匹のオークが前線を突破してきた。すぐさま、シルフィが炎の玉をオークへ投げつける。一発、二発と命中するが、オークの足は止まらない。


【カット】


 ラウルは、オークの進行方向に大きく長方形をイメージして空間を切り抜いた。オークは、そこにぶつかって止まる。一応、防御結界のつもりである。バリアとも言うが。棍棒で必死に攻撃してくるオークだが、数回攻撃されるくらいであれば結界は耐えるだろう。正面の結界を回り込んでこちらにやってくるという頭脳はどうやら無いようである。

 ラウルは、オークの心臓付近を小さく立方体に空間を切り取る。


【カット】


 魔法を実行すると同時に、オークは動きを止め倒れた。やっと一匹倒すことができた。この様に、正確に心臓の辺りをイメージして魔法を使用する場合、かなりの集中力を必要とする。しかも、敵が足を止めているときしか使えない。

 前線の方を見ると、どうやら残り二匹だけになっているようだ。

(あの様子なら、大丈夫そうだな。)

 数分後、全てのオークは生命の活動を停止していた。


「おつかれさまです。オークは俺が収納しておきます。後で売却金を分配しましょう。」

「わかった。」


 反対意見はないようである。ラウルはオークを収納してまわる。

 そして、再び車列は動き出した。

(うん・・・、盾の出番は無かったな。新しく覚えたスキル、『かばう』も使うタイミングがなかった。)


 それからしばらくは敵に襲われることもなく、順調に馬車は進んでいた。次第に陽も傾き、辺りも薄暗くなってきた。


「そろそろ野営する場所を探しましょうか。」


 アベルさんはそう言った。少し広くなったところで馬車を止め、野営の準備にとりかかる。

 流石に、野営の時は異次元空間の家で休むことはできない。女性陣にも我慢して貰って、今晩は馬車の中で眠ることになった。当然だが、男女別々に馬車で寝る。ひとりずつ交代で見張り番を出すことにした。当然、依頼人のアベルさんと御者の三人は馬車で休んで貰っている。


 その晩は、特に夜襲も無く平和な夜だった。

 見張りの順番が来たので、ラウルは馬車から降りる。外には獣よけのために焚き火が行われていた。そこにはシルフィの姿があった。


「ラウル!?」

「お嬢様。」

「もう、またそうやって呼ぶ。。」

「あ、ごめん。シルフィ。」

「う、うん。」


 名前で呼ぶと、シルフィはまだ恥ずかしそうにする。

 焚き火の向こう側にいる彼女は、炎の光に照らされて少し赤く輝いて見える。周囲の闇の色とのコントラストでより美しさが際立っていた。


「ラウル、そっちに行ってもいい?」

「う、うん。」


 シルフィは、ラウルのすぐ左隣に座り直す。すぐ目と鼻の先に彼女の顔があります。

(近い・・・。)


 しばらく、どうでもいい話が続きます。ふと、会話のキャッチボールが途切れたとき、シルフィの手がラウルの手と重なりました。


(えっ)


 シルフィの顔をみると、シルフィもラウルの顔を見ていて目が合う。その数秒見つめ合っただけで、心臓は高鳴り、体は火照って仕方がありません。シルフィの顔も少し桜色に染まっていて、目も少し涙目のように潤んで見える。


「シルフィ・・・。」

「ラウル・・・。」


 お互いの名前を呼び合った後、彼女はそっと目を閉じます。

 

 ラウルは彼女の顎に触れ、少し上に向けると目を閉じて顔を近づけていきます。

 ラウルは自分の心臓の音が聞こえてしまうのではないかと、心配してしまうほど、緊張していました。

 ゆっくりとまたゆっくりと顔をシルフィの唇に向けて近づけていきます。そして、何かとんがったものに当たった感触を自分の唇が感じ取る。


「ふごっ。」


 目を開けると鼻の頭がありました。


「さすがご主人様、期待を裏切りませんね。」

 突然、その声は後ろの方から聞こえた。二人は飛び跳ねるように驚きの声をあげます。


「きゃぁああああ」

「うわあぁぁ」

 いつの間にか、ラウル達の後ろにニーナが座ってニヤニヤと笑っています。


「ら、ラウル。私はそろそろ寝ますわ・・・。お、おやすみなさい!」

 シルフィは慌てて馬車へと走って行ってしまった。。


「い、いつからそこに?」

「えーと、『シルフィ、ラウル・・・』のあたりからです。駄目じゃないですか。見張りの人がこんな近くに人がいるのに、まったく気がつかないなんてー。」

「う・・・。すまなかった。。」


 スキル『消音』を使って近づいてきたのか、まったくラウルは気付かなかった。これでは見張り番失格である。


 次の交代の男が来るまで、ラウルは気まずい時間を過ごした。。




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