お嬢様、冒険者になる
家族会議が終わり、夕食を頂くことができた。そして、その日は泊まらせてもらった。
翌日。朝食を頂いた後、お嬢様は冒険者として俺に付いてくることになっている。念の為、ニーナは護衛として朝食の時から外に出している。
「今からニーナをお嬢様専属の護衛に任命する。命をかけてお嬢様を守るのです。それがニーナにとって償いになりますから。それから、お嬢様に危険が迫っているとき以外は、人に危害を加えないこと。この二つを必ず守るように。いいか? これは命令だ。」
「はい、ご主人様。」
ラウルは、お嬢様が出てくるのを待っていた。
門の所には、馬車と荷車が一台。嫌な予感がする。
お嬢様が出てきたので早速質問をする。
「お嬢様、この馬車と荷車はどうしたのですか?」
「え? 私の荷物とこれから移動するための馬車でしょう?」
「その貴族だとひと目でわかる様な、ヒラヒラとした服装は?」
「え? 何かおかしい?」
(駄目だ、世間の常識から教え込まないといけないのか?)
「お嬢様、貴族という身分は冒険者では隠しておくものですよ。そんなヒラヒラした服だと一目で貴族だとばれてしまいます。」
「え? 何故、貴族の身分を隠さないといけないの?」
「それは、それが普通だから・・・ん?」
(あれ、言われてみれば、何故、貴族は身分を隠すのだろうか? 別に隠す必要はないのでは? いや、でも、他の冒険者に貴族だと知られると、恐れられてしまうから? それか、悪徳冒険者がもしいたら、貴族のお嬢様だとバレると狙われて危険だから隠すのか?)
「ん? どうしたの、ラウル?」
「えーと、他の冒険者に身分の高い貴族だと知られると、恐れられてしまうから隠すのではないでしょうか?」
「恐れられるかしら?」
「はい、突然ギルドで跪かれても困るでしょう?」
「それは困ります。。」
「なので、その服装は冒険者としては駄目でしょうね。。」
「うーん、そうですわね・・・。でも私、冒険者の服なんて持っていませんわ。」
「仕方ありません、今から買いに行きましょう。」
「やったー、買い物行きたい!」
ラウルはとりあえず、荷車に積んであった荷物を全てインベントリ内に収納した。そして、馬車に乗り込み、ギルド近くの防具屋へと向かった。当然、荷車は置いてきた。
屋敷を出るときは、旦那様も奥様も見送りに来ていた。屋敷に勤めているメイド達も全員で手を振ってくれていた。旦那様は泣いていたようだ・・・。前もって、旦那様からは決して少なくない金額を受け取っている。お嬢様の養育費のつもりなのだろう。
平民街に入り、防具屋の前まで来た。
馬車はここからは必要ないだろう。御者に話して帰ってもらった。
防具屋の中に入ると、お嬢様は注目の的になった。貴族の令嬢がこんな所に来ることは、まずないからだろう。(何しに来た?)と怪しむような目でこちらを見ている。
「う、何か見られているような気がします。」
「気のせいではないですよ。早く買って着替えてしまいましょう。」
「わかりました。」
ラウルは、商品の中でもっとも品質が良い品物を探していった。すると、何故か古着置き場の中で見つかった。使い尽くされたような傷んだローブである。品質は最高品質。価値は金貨で数十枚と表示されていた。
「お嬢様、掘り出し物を見つけましたよ。」
「え!? そのような汚い服を着なければ駄目ですか?」
「ええ、後でこの服の価値をお教えします。」
俺は、このローブを先にカウンターへ持って行き、支払いを済ませた。
「ええと、貴族様とお見受けいたしますが、そのような服でよろしいのでしょうか?」
「はい、これで結講です。おいくらですか?」
「では、銀貨2枚になります。」
安い。。本当の価値からすると、この店は大損だ。。
商人としては失格だろうが、こんなの鑑定スキルでもないと気がつかないだろう。
「えーと、この服は特別なので、金貨5枚で買わせて頂きます。」
「え?」
驚く店主に金貨5枚を渡す。
「よろしいのでしょうか?」
「はい。それでも安いと思いますから・・・。」
それからお嬢様に試着室へ行ってもらい、ローブに着替えてらう。
「ラウル、着替えましたがサイズが大きすぎますわ・・・。」
「大丈夫です、その服に魔力を流してみてください。」
お嬢様が魔力を服に流し始める。すると、服は少し光を放ちながらお嬢様の体に合わせて、形を変えていく。痛んだ箇所も自動的に修復されていく。
「すごいわ! サイズがぴったりになりました。痛んだところも修復されて、汚れも綺麗になっているようです。不思議な服ですわね。。」
「はい、どうやら魔法の技術が使われているようです。」
店主はその様子を見て唖然としていた。
(これで金貨5枚は安い。。)
ラウルは一緒に自分の防具も買うことにした。防御力をあげているので、左手に装備する為の盾が欲しい。同じように鑑定していくと、またしても、古びた盾が最高品質であった。それも、服と同じように中古品の中にぞんざいに置かれていた。
「これはいくらになりますか?」
「え? ・・・えーと。」
店主は先ほどの事もあったので、悩んでいるようだ。
しかし、貴族様にふっかける勇気もないようで・・・。
「えー、銀貨50枚になります・・・。」
「わかりました。これも金貨5枚で買いましょう。」
「ええええー」
ラウルは店主に金貨五枚を渡す。
「店主、目利きの者を雇った方がよろしいと忠告しておきます。」
この盾の価値は、鑑定スキルで見ると『値段はつけられない』と表示されていた。。
間違いなく、国宝級の一品だろうと思う。




