犯罪奴隷を迎えに行こう
平民街へ向かう途中に、貴族御用達の商店が並ぶところがある。ラウルは丁度いいと思いアベル商会へと入っていった。
「すみません、ラウルと申しますが。」
「いらっしゃいませ、ラウル様。」
「種麹の納品は、自分で持ち込むことになりましたので、来月の分持ってきました。」
「畏まりました。では受領書を発行しますので少々お待ち願います。」
昨日の今日なのに、もう話が通っているのだろうか?
スムーズに事が運んだ。
「では、こちらになります。振り込みの方はいつもの口座でよろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします。また月末持ってきます。」
ラウルは受領書を受け取り店を出た。
そのまま平民街へ続く門の前に到着する。
「あれ、ラウル様ではないですか? 馬車ではないのですか?」
門の衛兵が訪ねてきた。
もう顔を覚えられているんだな。
「はい、今日から冒険者として頑張ることになりまして。」
「え? 伯爵様のところクビになったのですか?」
(おいおい直球だなぁ。)
「旦那様の希望でレベルを上げることになりまして・・・。」
「あ、失礼致しました。」
「気にしないでください。」
「しかし、学校はどうするのです?」
「自由登校になりました。テストだけ受ければ進級はできるそうですよ。」
「おお、優秀なのですね。」
「いえいえ、旦那様のおかげです。」
別れを言って、ラウルは平民街へ入った。
奴隷商人の店は、昔は路地からまだ奥に入ったところにあったが、今では南門までメインストリートができ、その通りに面している。かなりの良い立地条件になった。
「こんにちは。」
「はーいって、ラウルじゃないか!」
「どうも、ご無沙汰しています。」
「領主様の使いって、ラウルだったのか。」
どうやら喜ばせるために、ラウルが来ることは黙っていたらしい。
「えっと、犯罪奴隷を引き取りにきました。」
「ああ、少し待っていてくれ。」
少し待っていると奥から1人の小柄な女性を連れてきた。
先日はフードを被っていてよく見ていなかったが、真白なショートカットの髪をしていて目はクリッとしていて大きい。鼻も口も小さい。結構整った顔つきをしている。
いつもお嬢様を見ていたので、多少美人を見ても動じなくなっている。そもそもお嬢様と比べたら、彼女がかわいそうである。
「では、領主様からの推薦状を拝見させてください。」
推薦状? あ、これのことかな?
ラウルは旦那様から預かっていた書類を渡す。
「これで良いですか?」
「えっと、はい、これで大丈夫です。では早速、ラウルを主人とする主従契約の儀式を始めますね。」
奴隷商人は呪文を唱え始めます。
すると、ラウルの時と同じように魔法陣が地面に浮かび上がります。一度、大きく輝くと魔法陣は消えていった。
「はい、これで終了です。」
「ありがとうございます。」
「では、犯罪奴隷に関しての注意点を説明させていただきます。」
「はい。」
それから長い説明が始まった。
犯罪奴隷は基本的に忌み嫌われるものである。人権はなく、物として扱われる。如何なる理由があっても、当店では返品・交換不可である。お金も返金しない。まあ、お金を出してまで購入するお客は珍しく、その使用目的はろくなものではない。
(そこで俺をチラッと見るのはやめてほしい。)
仮に性的な目的で使用しても、法的には全く問題ないが、その事による不利益などにも当店では一切関知しない。
おおまかにはそのような内容だった。要するに自己責任でよろしくという事である。
事件に関することは、昨日のうちに衛兵たちが全て聞き出したらしい。今日にでも旦那様に伝えられるだろう。
「大丈夫ですよ、ちゃんと面倒は見ます。」
そう言ってラウルは店を出た。
さてと、あとは冒険者ギルドへ行って登録してくるだけだ。
その前に、この子の収納場所だな。
「すまんが、ここにちょっと入っていてくれるか? 後で、住みやすくするので。」
「・・・はい。」
彼女は嫌そうな顔をして、ラウルの作った空間へと入っていく。
この空間は、クラス対抗魔法大会の時に彼女を拘束したものだ。彼女からすると本当に嫌だろう。あとでベッドくらいは運び入れようと思う。
(これが本当の箱入り娘。なんちゃって。冗談を言っている場合じゃないな。)
ラウルは冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは商業区の東にある。宿もこの地区にかたまっている。
冒険者ギルドは初めてきたが、レンガ造りで3階建てのようだ。観音扉を開くと、正面に受付、右側には食事処がある。ここは夜には酒場になるらしい。2階は応接室やギルドマスターの部屋があるようだ。地下には訓練場や、備品の倉庫がある。
ラウルは受付に行き、冒険者として登録したいとお願いした。
「はい、新規の登録ですね。こちらに記入をお願いします。」
記入項目は、氏名、年齢、特技などであった。
指名、年齢を書き、特技にアイテムボックス持ちと書いた。なんとなくスキルであるインベントリスキルと書くと、ちょっとした騒ぎになりそうだったから。魔法のアイテムボックスならば前例もあるし、そこそこ使える人もいるだろう。
紙を提出すると、大騒ぎになった。
(あれぇ、アイテムボックス持ちも少ないのか?)




