犯罪奴隷 エミリ
ギルド内は何故か大騒ぎになった。ラウルは受付に聞いてみる。
「そんなに珍しいことでもないでしょ?」
「いえいえ、珍しいですから!」
受付の話によれば、この王国の中にアイテムボックスの魔法を使えるのは、ほんの一握りだそうだ。ラウルはおかしいと感じていた。学園では荷物持ちだと自己紹介もしたのだが、驚かれることはなかった。
(ああー、荷物持ちとは言ったけど、アイテムボックスの魔法が使えるとは言っていなかったなぁ。)
もしかしたら、学園のみんなには、ラウルはお嬢様の荷物を担いで走り回っていると思われているのかもしれない。
「とにかく登録を済ませてくれませんか?」
「わかりました。アイテムボックスを使えるのでしたら、Cランクからのスタートになります。」
「え? 何故ですか?」
「アイテムボックスを使えるのでしたら、高ランクのパーティから誘われる事が多いので、特例で認められています。あまり本人の実力は問われませんから。」
それだと、本当にただの荷物持ちで、メンバーとして見てくれないだろう。
「いや、魔物をまだ一度も倒した事がないので、Eランクからゆっくり上げていきたいのですけど? まだパーティを組むつもりもありませんし。」
「そうですか。それではEクラスで登録しますね。」
すると後ろから突然声がかかる。
「ちょっと待てよー。俺たちのパーティに誘おうと思っていたのに、Eランクじゃ一緒に組めないだろう?」
なるほど、こういう輩が多いからCランクから認められるのか。しかし、これは悪い慣習ではないか。いきなり自分には場違いな狩場に連れて行かれて、もし何かあったらどうするのか。
「あの、お誘いは嬉しいですが、慣れるまでは1人でのんびりやりたいので、他をあたってくれませんか?」
「あん? テメーは黙ってついてくればいいんだよ!」
駄目だ、この人話にならない。しかし、喧嘩になればラウルの魔法だと手加減が難しい。それに、唯一無傷で対抗できるかもしれない収納を利用した瞬間脱衣は、この汚い男には使いたくない。
(収納・・・、そうか生存可能空間に収納を試してみるか。)
ちょうど良いと思いラウルは魔法を発動する。
【クリエイトエリア】
これで生存可能な空間はできた。そしてこの空間にこの男を収納するイメージで唱える。
【プッシュ】
目の前の男が消える。成功である。『プッシュ』は押し込むという意味らしい。
「え!? 消えた?」
「あれ、いなくなりましたね。ちょうど良いです、今のうちに登録をお願いします。」
「え? だって消えましたよ?」
「急いで帰ったんじゃない?」
「そんな・・・。」
このあと、無事に登録が完了した。Eランクからのスタートです。冒険者の証である銅製のプレートももらえた。受付に礼を言ってラウルはギルドの外へと出て行った。
「おっと、流石に男を戻さないと駄目だな。」
【ポップ】
するとギルドの扉の向こう側で少し騒がしくなった。『ポップ』は飛び出るという意味である。ラウルは騒がしい声を無視して、宿屋を探す事にした。
冒険者ギルドの近くには宿屋も沢山建っていた。その中で、普通より少しオシャレな宿を選ぶ。まだ昼を少し過ぎた頃だったので、チェックインできるか心配だった。聞いてみると、もう部屋に入れるらしい。
部屋に入ると犯罪奴隷がいる空間をここにつなげた。するとドタバタと飛び出てきた。
「な!? どうしたのだ?」
「ばかぁ、トイレどこー!!」
あ、そうだった。中はトイレもないんだった。その女は、すぐに廊下へ消えていった。しばらくすると、部屋の扉がノックされた。開けると顔を真っ赤にした女が立っていた。
「すまなかった。」
「い・・・、いえ。酷いこと言ってすみませんでした。」
「えーと、エミリさんだったっけ?」
「名前は17番です。」
「へ?」
「エミリは任務上のコードネームです。」
「そうなんだ。」
ラウルは練習がてら、17番と呼ばれる女の住居を整える事にした。
まず、今までいた空間を削除する。ついでに、さっき冒険者ギルドで作った空間も削除した。そしてラウルは、魔力を大量に生成しながらイメージしていく。
まずは扉が必要である。そこを開けて入ると玄関がある。玄関から右手のドアを進むとユニットバスがある。トイレの魔道具はウォシュレットで、水もちゃんと流れて下水処理機能付きだ。お風呂の魔道具もちゃんと水もお湯も出る。もちろん綺麗な飲める水だ。お風呂の水もトイレの下水処理機能へ運ばれる。処理された水はトイレの水へと再利用される。
玄関から正面のドアを開けると、8畳くらいの部屋とキッチンがある。部屋にはフカフカのベット。机、椅子もある。キッチンにはすぐに火がつくコンロを設置。水も清潔な飲み水が出る。使用後の水はトイレの下水処理機能へ。それぞれの部屋にはスイッチで光る魔道具が設置済み。
ここまで細部までこだわってイメージしていく。そして創造!
【クリエイトエリア】
ラウルたちの目前には、イメージ通りの住居ができていた。
「ふー、君の住む家ができたよ。今日からここに住んでくれ。」
2人で中を確認して回ったが、問題はないようだ。付いてくる17番はずっと呆けていた。信じられないようである。
そして余程気に入ったのか、呼んでも出てこなくなった。
おい、奴隷仕事しろ。




