クラス対抗 魔法大会2
今度はS3チームとの対戦だ。
同じクラスではあるが、名前はまったく覚えていない。申し訳ない。
「試合始め!」
今回、ラウルはバックアップに専念することにした。
召喚師のムニダがロックゴーレムを召喚した。どうやらゴーレムを前衛として盾にするつもりらしい。ロックゴーレムは岩の体をまとった魔法で作られた疑似生命体である。
ゴーレムが相手の陣地に向かって突進していく。相手もただ見ているわけではない、当然魔法の攻撃が飛んできた。火の玉、氷の矢、風の刃。いろいろな種類の魔法が飛んでくる。ラウルはゴーレムの援護に回る。
【カット】
ゴーレムの前方に大きな青い正方形が出現する。魔法はそれにぶつかり消滅していった。ゴーレムは無傷で相手の陣地に突っ込んでいった。
ラウルは、お返しにと【ファイアボール】を唱えて相手陣地に飛ばす。
ラウルは空間魔法しか使ってこなかったが、魔法の授業では当然空間魔法なんて教えてくれない。では何をしていたかというと、普通に他の属性の魔法を習得していた。無属性で他の属性の魔法には適性はないが、覚えられないということはない。ただ、適性がある人よりもより多くの魔力を消費したり、魔法を発現させるまでに時間がかかる。
一番簡単な『ファイアボール』でさえ、普通の人は魔力50で撃てるのだが、俺は一発300消費する。非常に燃費が悪い。
「ラウル、中級魔法をつかうわ。少しの間だけでいいから援護してくれる?」
「はい、お嬢様。」
お嬢様が何やら長い呪文を唱えはじめた。徐々に詠唱が進むにつれて、敵の陣地で変化が現れる。空気中の水分が少しずつ凍り付き、キラキラと空中を漂いだした。敵も気がついたのか、防御魔法を唱え始めるが少しだけ遅かったようだ。
【フラッシュフリーズ】
魔法が行使されると、一瞬のうちに敵陣地は白く染まった。その中に氷の氷像が4体。生徒が凍ったままHP1になっている。お嬢様の放った範囲瞬間凍結の魔法だった。
たまたまゴーレムの相手をしていた魔法剣士だけがその範囲から外れていたようだ。だが、その者にも同時に4つの魔法が命中する。そして、怯んだその男をゴーレムが無慈悲にぶん殴る。
この瞬間ラウルたちの勝利が確定した。
ラウルたちは、この次もすぐに試合である。決勝戦だ。少しくらい休ませてほしい。相手はあのマルクが率いるA1チーム。
試合会場に、A1チームが入ってきた。マルクの魔法技術、剣技、どれをとってもSクラスの実力だと思う。何故、Aクラスでくすぶっているのかよくわからない。もしかしたら、計算か文字の読み書きが苦手なのかもしれない。
相手チームの職業は、魔法剣士、強化魔法術士、攻撃魔法術士が二人、ヒーラーである。戦術は前回と同様、強化魔法術士がマルクを強化し、マルクが単独で突っ込んでくるのを攻撃魔法使い二人が援護するのだろう。
「試合始め!」
試合開始と同時に強化魔法術士がマルクに対魔法防御の魔法をかけたようだ。俺の空間魔法対策だろうか? 空間を直接切り抜く俺の魔法は、魔法では防御できないはずなのだけど。
そのままマルクがこちらに突っ込んでくる。
「平民ー! 覚悟しろ~!」
何やら喚きながらこちらに突っ込んでくる。ラウルは冷静に魔法を行使する。
【バインド】
すると、マルクの動きが止まった。
「うお、動けない!? 魔法防御をもらっているはずなのに」
魔法だと無効化されるかとも思ったが、どうやら通ったようだ。そこにラウルたちのチームメンバーから容赦ない魔法が飛んでいく。それらの魔法を、魔法剣でどんどん切り裂いていくマルク。
「おお、すごい。」
「ラウル感心している場合ですか。」
お嬢様に怒られてしまいました。その時、周りの魔力に大きな揺らぎを感じた。
「ん? なんだろうこの魔力の揺らぎは?」
魔力感知スキルによって、周囲の魔力の異常を感じ取った。どうやら、この訓練場に設置されている魔道具に異常が発生したかもしれない。もしかしてHP1で止まらなくなったのではないだろうか。
その一瞬の隙を突いたのか、少し前寄りにいた相手チームのヒーラーが突然加速した。
ラウルは大声で叫ぶ。
「ちょっと待て! 魔道具の異常が発生している可能性がある!」
大声で叫ぶも、ヒーラーは止まらない。ラウルの目前まで来ている。ラウルは仕方がなく、前方に『カット』によるバリアを張った。
【カット】
ヒーラーはまったくスピードを落とさずラウルのバリアをかわし、真横を超高速で走り抜け、お嬢様の方へ走っていく。ヒーラーのくせに何を考えているのか。まるで暗殺者のような動きである。
(ん? 暗殺者?)
嫌な予感がして、ラウルはすぐさま後ろにいるお嬢様の周りをバリアで囲んだ。
【カット】
その直後だった、ヒーラーの手には短刀が握られていて、お嬢様の首めがけてスローモーションのように吸い込まれていく。お嬢様の首のすぐ横で、ヒーラーの短刀がバリアによって弾かれた。
「きゃぁ」
「お嬢様!」
ラウルは、そのヒーラーの後ろから回し蹴りを放つが、軽く躱された。何だこいつは? ヒーラーにしては体術もマスターしている。
すぐにラウルの攻撃魔法がヒーラーに放たれたが、それすらも軽く躱す。
(こいつ・・・、本当に学生なのか?)
ふと見ると、マルクも唖然とした顔でヒーラーを見ている。そしてヒーラーに向かって出てきた言葉は、
「お・・・、お前は誰だ?」
である。




