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南部、スラム街再開発事業

 数日後、社宅の建設がスラム街で開始された。スラムでその日暮らしをしていた者も雇われて働くことができた。自分たちの住居を自分たちで作るのだ、モチベーションも高かった。社宅ができるまでは宿屋で宿泊できるように領都の多くの宿屋も貸し切られた。

 従業員用社宅は、鉄筋コンクリート製で、単身用と家族用の部屋が用意された。高さはなんと領都では初めての6階建てになる予定だ。その社宅が4棟作られる。


 南門は南に大きく張り出した形になっていて、馬車専用の荷受けターミナルになっている。街に入らなくても荷の積み降ろしを可能にした。もちろん、今まで通り街に入ることも可能だ。馬車用の駐車場も馬小屋も完備されている。御者はそのまま街に入って宿泊したり、別の荷馬車に乗り換えそのまま出発することも可能になった。誰がどの荷馬車で何処へ行くのかはアベル商会が一元管理している。もちろん、人も荷物も入出領管理局で検査検疫はされることになるが。

 ここでも新たな試みが始まっている。以前までは、御者が荷の積み降ろしもやるのが普通だったが、ここでは完全に分業となっている。御者は馬車の操車に専念でき、荷の積み降ろし専門の仕事につける者がまた増えた。これにより、高齢で諦めていた御者も仕事を続けられるというメリットもある。


 南門は短期保管庫と同じ建屋内にあり、短期保管庫からは醤油工場、長期保管庫、領都南部地域への連絡道路と繋がっている。保管庫内では魔力で車輪を動かすという画期的な魔道具も初披露された。これに加えて、木の板に車輪を取り付けただけの『パレット』と命名された簡易荷車も発明された。これにより馬が必要なくなり、魔力を持つ人間が馬車から切り離された荷車や、パレットを、牽引する光景が見られるようになった。魔力が多い者は長く仕事ができるため、その分給料は高給になった。魔力の少ない者は魔力切れになる前に交代することになる。魔術師にはなれなかったが、魔力だけは持っているという平民もどんどんと採用されていった。


 この南門の設計、魔力で稼働する牽引車、『パレット』、鉄筋コンクリート造りのアイデアは、全て一人の者が提案し、即採用された。その者は伯爵家に客人として招かれていた只の平民だと噂されている。


 醤油工場はというと、建屋はできているものの問題が発生していた。いままでは、壺で醤油を作ってきたのだが、工場では壺での生産は少なすぎるのである。そこで、ラウルが監督人となって木製の大きな木桶を作ることになった。呼ばれたのはタライ職人。洗濯などで使用する木製のタライを作る人たちだ。しかし、水漏れしない巨大な木桶など作ったこともない職人達は、大変な苦労を味わうことになった。

 木の側面を何本も繋げていき、最終的には円になるようにするのだ。しかし、その接合面の角度が非常にシビアであった。少しでも角度が違えれば、上手く円にならずに水漏れする。そのため、何度も、何度も、何度も、接合面の角度を調節し、やっと水が漏れない巨大な木桶がひとつできたのは2ヶ月が過ぎていた。ひとつできれば、あとはそのデータに基づいて同じ物を作るだけだ。

 この時、巨大な木桶を作成したタライ職人に、領主から特別に領地御用達の醤油桶職人の称号を賜った。もちろん、特別に多額な報奨金も付けてだ。この職人には毎年桶を発注することになるだろう。


 いよいよ工場での第1回目の醤油仕込みが始まった。監督はラウル。指揮はルクスがとっている。ルクスは役職が工場長となった。

 大豆と小麦は隣の村で収穫され領都へと運ばれる。村では農地改革を行い、元のあった畑より農地エリアは10倍以上となっている。塩だけは近くから採取ができず、遠くの海沿いの港町から取り寄せている。

 従業員は全員が元スラム街から雇われている。待遇は、社宅完備で家賃は工場で働くならば無料。工場で昼飯が支給される。給料は月固定で銀貨30枚だ。銀貨一枚が1000ゴールドなので、3万ゴールドとなる。平民の給料としては平均的だが、元スラムの人間からしたら破格の額である。むしろ、家賃がタダで昼食付きなのを考えれば、平民の給料としても破格だといっても良いだろう。

 仕込みは毎月行われることになった。


 塩水が投入されひと月経つと長期保管庫へと送られていく。長期保管庫には熟成される醤油が保管される予定である。長期保管庫では、1日1回撹拌作業が必要なので、それ専門の人員も雇ってある。魔力牽引車の性質上、馬力はあまりでない。坂道は登ることができないので長期保管庫の1階に醤油は保管される。2年の月日が経ち、出荷できるほど完熟すると、また工場へと戻され圧搾・火入れ工程を経て出荷される。


 ちなみに、長期保管庫の2階は、醤油の研究や工場勤務者のための食堂などがある。3階は衛兵達の詰め所と休憩所、4階はそのまま防壁の上にでられる構造になっている。

 

 領都は王都アルジェとおなじく城郭都市であるが、その歴史は浅く防壁も比較的新しい。どうやら王都の城壁に憧れた過去の領主が、無理をして王都に真似た防壁を建てたらしい。南門を設置するに当たり、その防壁を一部解体したのだが、中に鉄筋は入っていなかった。今現在は南門付近の防壁のみ鉄筋コンクリートで補強されている。


「この地域では地震は発生しないのかなぁ・・・?」


 ラウルはなんとなくそう感じていた。鉄筋も入っていないコンクリートの防壁が何百年も前から無傷で残っているのだ。そう考えてもおかしくはないだろう。もし地震が起こっていれば、この防壁は簡単に崩れていただろうとラウルは考えていた。


 順調に醤油作りが開始され、種麹の生産も毎月の仕込みに間に合うようにいろいろと工夫が必要となっていた。


 



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