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商業ギルドに登録

 突然だが、ラウルは今商業ギルドに来ている。同行者は、旦那様とアベル商会のルクスである。旦那様が受付に行くと、ギルド職員がすぐに出てきた。


「これは領主様。ようこそ商業ギルドへ。奥の方でお話を伺いますので、こちらへお越しください。」

「うむ。」


 領主ともなると、顔パスで奥の部屋へと通されるらしい。まぁ、当然か。しばらくすると、ギルドマスターと名乗る男がやってきた。


「お待たせ致しました。ギルドマスターのビシネル=アーラントです。」

「うむ、今回は新規事業について相談があってきた。」

「新規事業ですか・・・。」


 男は、側にいた従業員に目配せする。すると従業員は礼をして部屋を出て行った。どうやら人払いをしたようだ。それだけ新規事業には慎重ということだ。


「では、詳しく話して頂けますか?」

「うむ。実はな、新しい調味料の開発に成功したのだ。」


 そう言うと、ラウルの方へ目配せする。ラウルは、前回ルクスさんと作った醤油の残りが入った小さな壺を机にコツンと置いた。醤油はたったの10ml程度しかない。


「ほう? これは少し味見をしても大丈夫ですかな?」

「うむ、ほんの少しだけしかないがな。」


 男は小さな壺をつまんで持ち、上のフタを取る。少し匂いを嗅いだ仕草をすると、少し驚いたような顔をした。


「おお、良い香りがしますね。」

「そうであろう?」


 そして、上に開いた穴から指を入れ、少しだけ指先についた醤油を舐める。


「なんと・・・、これは確かに初めての味ですな。しょっぱいながらも、ほんのりと甘くもある。不思議な味です。」

「うむ、それでこれを作る工場を近々建設を始める予定じゃ。」

「なるほど、それで私どもにこれを売ってほしいと?」

「いや。」

「え?」


 男は肩透かしを食らった。大きな商機だと期待していたのだろう。


「まずは貴族のみに売るつもりじゃ。なので創業を開始しても、しばらくは大きな販路は必要ない。」

「そうなのですか・・・。」


 男は少し残念そうな表情を見せる。


「まぁ、心配せずとも、まとまった量が生産できるようになれば、価格を下げて平民にも広く売るつもりじゃ。その時はお願いすることになるじゃろう。」

「おお、その際は是非お声をおかけください。では、今回の要件は?」

「うむ、この調味料の原材料のひとつを、こちらのラウルが用意するのじゃがな、商業ギルドへの登録がまだなのじゃ。ギルドへの登録と、口座の開設を頼みたい。」

「そうでしたか、畏まりました。」


 商売を始める場合、必ず商業ギルドへと登録が必要になる。それは納税の関係で必要で、王国の法律でもそのように決められていた。同時に銀行業務もしていて、預金口座を開くことも可能である。

 商業ギルドもランク分けされており、Sランクが一番上で、あとはA~Eまでである。ランクは納税額や、信用度、登録年数の長さなどでも変動する。冒険者ギルドと違って、こちらのランクは下がることもある。何か問題があると、信用度が下がり、ランクも下がることもあるのだ。ちなみに破産するとギルドからも抹消される。


 ラウルたちは、次に工場の建設予定地に向かった。


 工場予定地は商業区の隅っこにあった。防壁のすぐ側にその空き地はあった。いかにも高そうな土地だと思った・・・。こんな所に建てるより、もっと安くて良さそうな土地があると思うのだが。


 ラウルが何やら不満げにしていると、旦那様が不審がって聞いてきた。


「ん? ラウルどうした? 何やら納得いかないような顔をしているが。」

「あ、いえ。申し訳ありません。何でもないです。」

「よい、素直に申してみよ。」

「・・・、では、恐れながら申し上げます。ここよりもスラム街を再開発して、そこに工場と従業員用の住宅を建てれば良いのではと思いまして。土地も安そうですし、そこの住民も仕事につけます。なにより、治安が良くなる可能性もあります。」

「何!? スラム街じゃと? う・・・ううむ、あそこは貴族は入ることも難しい無法地帯じゃぞ・・・。工事すらまともにできるのか怪しい。」 


 ううむ、かなり難しそうだな。


「それではまず、住宅から作り、そこに住んでもらうことからはじめては如何でしょう? 人はまず安心して生活できる住居があれば、心も安定するものだと思います。」


「うーむ、土地も安いだろうし、従業員用の社宅だといえば予算も通るだろうが・・・。」

「いっその事、南門を作ってそこから工場へ直接入出庫できるようにしたらどうでしょう? 原料の大豆や小麦、塩なども他から仕入れる必要があるのですよね? 醤油関係専門の南門があれば、かなり便利かと思われます。渋滞の緩和にもなりますね。」

「・・・。簡単に言ってくれるが、それはもう大規模な公共事業になってしまうぞ。」

「将来的に見れば、ここの工場で王国全ての醤油を生産するのです。それを考えれば、倉庫だって必要ですし、とてもじゃないですがここの土地だけでは足りないと思われますが。。」

「うむむむむむむ・・・。帰ってもう一度議会に提案してみよう。。」

「はっ、ありがとうございます。」


 それを聞いていた、アベル商会のルクス。目をギラリと輝かせて言った。


「あの、その倉庫や運送事業にも一枚噛ませて頂けないでしょうか? もちろん、我が商会からもそれ相応の資金を出させて頂きます。」


 流石の商人である。目聡い。




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