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修学旅行へ行こう5

「ちっ、もうバレたか。。おいっ少しでも動いてみろ、この女を始末するぞ!」


 男はじりじりと逃げようと右の方向へと動いていく。ラウルは少々危険かもしれないが、今しかチャンスはないかもしれないと魔法を使用した。


【カット】


 その瞬間犯人にめがけて突っ込んだ。


 犯人の肩(もちろん、お嬢様よりできるだけ離れた利き腕の方の肩である。)の部分に青い立方体が現れ、次の瞬間には肩が立方体の形にえぐり取られるように消えた。そのまま腕の部分は剣を握りしめたまま地面に落下していく。刀身がお嬢様から離れた隙に、俺は犯人の顔面に拳をめり込ませる。人間の顔なんて殴るのは初めてである。正直言って、殴った拳の方が痛い。

 犯人は殴られた勢いで後頭部を壁にぶつけ、そのままズルズルとその場に倒れた。俺は急いで麻の大袋を敵の手から奪い去る。


 袋の中を開いてみると、予想通りお嬢様を発見した。手足を縛られ、口には猿ぐつわを嵌められ、目は目隠しされていた。酷い状況である。


「お嬢様!!」

「ん? んーーーー!」


 急いで猿ぐつわを外し、目隠しを取る。


「ラウルー!」


 お嬢様は震えて泣き出してしまった・・・。ゆっくりとその体を支えながら謝罪する。


「お嬢様、遅くなって申し訳ありません。」

「・・・。」


 お嬢様は声を押し殺して、泣いている。とにかく、最悪の事態は避けられたようで、少し安堵した。今回はお嬢様がさらわれた。その責任はラウルにもある。流石に何もお咎め無しはないだろう。まさか、犯人が護衛をしていた冒険者だったなんて、気づけという方が無理だと思うのだが。おそらく買収されていたのだろう。


「すみませんが、その男の治療をお願いします。大事な証人なので。あとで尋問してください。」

「わかりました。」


 先生達にその場の指揮を任せ、ラウルは泣き止むまでお嬢様をずっと抱きしめていた。麻袋の上から。


(早く、手足の縄もほどかないといけないのだが・・・。)


 流石に修学旅行は中止となった。ラウルたちには、高級宿で事情聴取が待ち受けていた。



 二日後、カルロス=ニルバーシュ伯爵が宿に到着した。かなり早い到着だった。もしかしたら、夜通し走ってきたのかもしれない。


「シルフィ! 無事か!?」

「はい、お父様。ラウルのおかげで無事救出されました。」

「いえ、さらわれたのは自分の落ち度であります。如何様にも罰してください。」

「そんな、ラウルは何も悪くないわ!」

「うむ、詳しい話は馬車の中で聞いたよ。ラウル、確かに一度離れたのはお主の失態になるが、それでも救い出してくれたのはそれを補って余りある。ありがとう、ラウル!」

「はっ、ありがとうございます。」

「それでだ、今回の事件は王都内での伯爵令嬢の誘拐になる。流石に国王様のお耳にも入るだろう。しばらく帰れないと覚悟しておくことだ。」

「畏まりました。」


 どうやら、事件は俺が想像していたより大きくなってしまったようである。


 王国騎士団と近衛兵団で大捜査が開始されていた。犯人の冒険者は多額の報酬に目がくらみ、お嬢様を誘拐したと供述した。お嬢様の引き渡し先はすでに誰もいなかったため、そこで手がかりは途切れている。王国はおそらく闇ギルドが関わっているだろうと推測しているらしい。

 

 ラウルとお嬢様も何度か話を聞かれたが、城に出向くようなことは無かった。数日後には領地に帰る許可が出た。結局観光することも無く、旦那様の命令で足早に王都を離れることとなった。

 帰り道は、お嬢様と同じ部屋になることも無く、平和そのものだった。伯爵領の当主が同行しているだけあって、護衛の数は半端ではない。間違いなく襲われることもないだろう。


 三日後、俺たちは無事にニルバーシュ領へ到着した。その日はゆっくりと休みをもらえた。翌日、旦那様に呼び出された。


「ラウル、今回もまた娘の命を救ってくれてありがとう。」


 旦那様が頭を下げる。今回は奥様まで・・・。やめてほしい、心臓に悪いです。


「止めてください! 今回は俺にも失態がありますから・・・。申し訳ありませんでした。」


 ラウルも負けじと頭を下げる。


「本当に感謝しているのだ。。娘が麻袋に入れられてさらわれたなら、普通は簡単には見つかることは無かっただろう。ラウルが魔法で娘を追跡してくれたおかげだ。本当に深く感謝している。」

「たまたま空間把握の魔法を覚えていて良かったです。俺なんかでも役に立てました。」

「ラウルは自覚していないだろうが、娘の魔力を追跡できる能力など、空間魔法術士だけの特技と言っても過言ではないぞ。誰にでもできることではないのだ。自分の功績を高く誇っても良いのだぞ?」

「そもそも、一時もお嬢様から離れなければ、誘拐されなかったわけですし・・・。」

「護衛が娘をさらうなど、普通はありえんことだ。そこまで責めるつもりは全くないぞ。」

「わかりました。では、今回呼び出されたのは?」

「それだ、何か褒美をやらねばならん。何か欲しいものはないか?」

「そんな・・・、褒美なんて受け取れません。」

「・・・。」


 う、断るのも失礼だったな。


「失礼しました。それでしたら・・・、空間魔法の初級編を全てマスターしましたので、中級編をマスターしたく思います。魔法書を探してみましたが見つかりません。中級編の魔法書を頂きたく思います。」

「うむ、それは良い。早速調べさせよう。・・・、いやまて、学園の図書館は調べたのか? あそこには大概の書物なら貯蔵されているはずなのだが。」

「はい、閲覧可能エリアはすべて探しました。」

「そうか、では図書館の全ての本の閲覧権を授ける。それでも、もし図書館にもなければまた言ってきてくれ。また手配しよう。」

「ありがとうございます。」


 図書館の全ての本が読めるようになった。これで覚えられる魔法がまた増えるかもしれない。


 ラウルは、次に学校へ行ける日が楽しみになった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 本来メイド執事騎士など従者と呼ばれる者は最低でも最悪の事態を考えて行動するのが当たり前だ。生きてるだの無事だのは所詮結果論にすぎん
2021/04/29 13:00 退会済み
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