修学旅行へ行こう4
思春期。人は、性を意識し始める頃をそう呼ぶ。
体の変化が始まった頃で、女性は9歳、男性は11歳くらいから始まると本で読んだことがある。女性の方が大人びてくるのが早いのは、このことも関係しているのかもしれない。
お嬢様は10歳、もう思春期の時期に入っていると思える。ラウルは中身は18歳なので、言うまでも無い。何が言いたいのかというと、とにかく気まずいのだ。
ここにたどり着くまでの宿は、完全に別の部屋でお互い泊まっていたので問題なかったのだが、今回は放火にあった宿と同じタイプの3LDKの為、同じ部屋になってしまう。
「お嬢様、誰か先生をここに呼んできます。流石にお嬢様とふたりでこの部屋に泊まるのは、旦那様に叱られそうですから。」
「何で? 別に一緒に寝るくらい、良いんじゃない?」
何を言い出すのか、お嬢様は。
まぁ、確かにまだ子供と言える年齢だから大丈夫かもしれないが、ラウルの中身は18歳だ。正直、若い女性の体には興味がある。理性というブレーキが故障してしまうとまずい。まぁ、どちらかと言えば、胸は大きい方が好きだが。あ、決してお嬢様のお胸が残念だということではない。
「一応、世間体というものがあります。未婚のお嬢様が、俺と二人だけで寝泊まりしたと噂でも流れては大変なことになってしまいます。」
「ラウルは難しいことをいうのね。別に川の字になって皆で眠るのも楽しいわよ?」
やっぱり、お嬢様はまだ精神的には子供なのでしょう。とにかく、ラウル自身の身の潔白のためにも、先生を連れてくる必要があるようだ。
ラウルはお嬢様に許可をもらい、先生を呼びに部屋を出た。もちろん、外にいる護衛に十分に気をつけるようにお願いしておいた。
一階フロントへ行くと、教員をまとめている学年主任の先生がいたので話しかけた。
「すみません、先生。シルフィお嬢様の部屋に担当の先生がいません。誰かに来てもらえませんか?」
「ああ、そうでしたね、すぐに手配しましょう。」
「よろしくお願いします。」
ラウルは安心して自分の部屋に戻る。部屋の前まで来て何か違和感があったが、結局何が引っかかっているのか解らず、気にせず入っていく。
「お嬢様、先生がもうすぐ来てくれますよ。」
部屋の中から返事はない。おや? 風呂にでも行ったのでしょうか? それともトイレか。ラウルは念のために周囲の魔力を調べる。
【サーチ】
その結果、部屋の中には誰の魔力の反応も見つからなかった・・・。慌てて、部屋の外へ飛び出る。外の護衛もいなくなっている。
「さっきの違和感はこれか。」
ラウルの背中にゾクゾクッと寒気が走る。まずい、どうやら少し離れた隙に、誰かがお嬢様をさらっていってしまったようだ。
ラウルは慌てて再度【サーチ】を使用する。【サーチ】は魔力調査の方向を指定できる。さっきはこのフロア全体を調べたが、次は下方向へ、宿の全体を調べるつもりで魔法を使用した。
すると、ラウルが登ってきた階段とは別の階段から、かなり接近している二つの魔力を感知した。おそらく、お嬢様を担いで階段を降りているところだろうと判断した。
残念ながら、ラウルひとりだけでは犯人を捕らえるのは難しいかもしれない。ラウルは1階のフロントへ行き大声で叫ぶ。
「シルフィお嬢様がさらわれた! 至急、護衛の方を何人か寄越してください!」
そして、再度【サーチ】を使用する。今度はより遠くへ届くように、魔力を多く魔法に込めた。お嬢様はすでに宿の外へ運ばれている。急がなければ。
外に出ると、辺りはすっかりと薄暗くなってきていた。ラウルは近くに居た冒険者と教員二名を引き連れて犯人を追う。もうだいぶ離されている。ラウル達はかなり急いであとを追う。
普段はあまり運動しないこの体、レベルも1なのですでに息が苦しい。こんな事ならば、毎日運動しておけば良かったと反省する。しかし、空間把握の魔法を習得していて本当に良かったと思った。
しばらくすると、犯人の後ろ姿が視界に入った。大きな麻の袋を担いだ大男がのっそのっそと路地を走っている。あれだけの袋を担いでいるとやはりそれほどスピードはでないようだ。そして、その大男をよく見ると、部屋の外にいた護衛だった。
「あいつだ! あいつがお嬢様を担いでいる!」
「あいつは!? さっき用事があるとかいって出掛けて行った護衛じゃないか?」
「そうです。あの担いでいる荷物から、おそらくですがお嬢様の魔力を感じます。捕まえてください!」
「「おうっ!」」
冒険者達はすぐに犯人に追いつき、敵を制止させる。こちらを振り向くと、お嬢様が入っていると思われる大袋を降ろし、剣を抜いてその大袋に刀身をそっとくっつけた。
「ちっ、もうバレたか。。おいっ少しでも動いてみろ、この女を始末するぞ!」
冒険者の男は、お嬢様を人質にし壁を背にして脅してきた。
あの刀身を消去するとしても、お嬢様と近すぎてお嬢様の一部まで消してしまいそうで怖い。せめて男が袋を手放せば・・・。
くそっ・・・、どうする?




