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旦那様と交渉

晩ご飯の後、すぐに旦那様に呼び出された。


「やあラウル、晩ご飯のあの肉は実に美味だったぞ!」

「ありがとうございます。」


「それで、お主はあの調味料をこの世界に広めたいと申していたな?」

「はい、自分はこの調味料で商売がしたいと考えております。」

「ほう。」


 旦那様は何やら真剣に考えている様子だ。


「理解していると思うが、お主は奴隷だ。待遇的には使用人と同等だが、奴隷には違いない。私の妻が命令すれば調味料のレシピも強制的に聞き出すことは可能なのじゃぞ? ワシらがそうするとは思わなかったのか?」

「別にそれでもかまいません。使用人として働かせていただいてますし、住む場所も用意して貰っています。給料もいただいていますし、学校にも通わせていただいております。今の待遇を守っていただけるのなら醤油のレシピくらい無料で差し上げます。」


 それを聞いた旦那様は、奴隷を相手にするような目ではなく領主の顔になった。


「それでは商売などできまい?」

「はい、無理矢理レシピを言わされるようでは、商売など不可能です。そうなると、商売を考える余裕はありません。今の待遇を維持する方が何よりも優先すべき事ですので。」


 それを聞いた旦那様は少し残念そうな表情を見せる。


「ふむ、わかった。お主がその【醤油】? とやらで商売を始めるとして、その計画を申してみよ。」


 その言葉を聞いたラウルは、内心でガッツポーズを決める。


「はい、それでは恐れながら申し上げます。自分は醤油を作るまでは可能です。しかし、この領地での販路を待っておりません。なので、販売に関して旦那様に力をお借りしたいと考えております。」

「ふむ・・・、この調味料で豚肉があのように美味しくなるのだ。間違いなく売れるだろう。これは大きな商機と見るべきだと思う。」

「ひとつ問題があります。」

「申してみよ。」

「はい、原材料を仕込んでから、完成まで2年かかるのです。」

「何だって? では、次にあの肉が食べられるのは2年後か?」

「いえ、毎月給料が入る度に仕込んできたので、次に完成するのは来月です。」

「そ・・・、そうか。」

「はい。」

「うむ、わかった。しばらく醤油の製作は中止するように。あと、新しい調味料に関しては、一切外に漏らすことは禁ずる。本日より箝口令をしく。調味料の生産・販売については、こちらで調整してみる。なぁに、ラウルにとって悪いようにはしないつもりだ。」

「はっ、ありがとうございます。」


 そこで俺は部屋から出された。どうやら、醤油について前向きに考えてくれるようである。


 今日以降、醤油の情報は極秘事項となった。旦那様より、屋敷内の全員にそのように指示が出た。



 数日後、旦那様から呼び出された。


「おお、ラウル来たか。まぁ、かけたまえ。」

「失礼致します。」


 ラウルは深く頭を下げる。


「では、新しい調味料についての決定を伝える。」

「はい。」


(いざとなると緊張する。最悪の結果にだけはならないでほしいが。)


 最悪の結果とは、奴隷として命令され、レシピを無償で提供。そのまま俺は使用人として働かされることだ。もしかすると、他にも知っていることがあれば全部教えろと命令されるかもしれない。


「ラウルは、新しい調味料について、そのレシピ、作り方全てを領主である私に公開すること。」

「う・・・、は、はい。」

「この屋敷内でしばらくは調味料の作成責任者として監督してもらう。」

「よろしいのですか?」

「うむ。まだあるぞ。」

「はい。」

「調味料を作るための新規工場を建設する。」

「えええええ!? 凄いです。」

「そして、できた調味料はこの領地の特産品として王国内に広げるつもりだ。」

「おおー、素晴らしい計画です。」

「それでだ、お主にはこの屋敷で工場で働く責任者に作り方の指導をして貰いたい。」

「畏まりました。」

「それから・・・。」


 旦那様は一息ついて続けて話し始める。


「お主ヘの報酬についてじゃが。」

「は、はい!」

「調味料の発明の報酬として、5000万ゴールド支払う。」

「なーーーーーっ!」

「つまり奴隷から解放するという意味だが、問題ないか?」

「は、はい。ありがとうございます!」

「あと、調味料の純利益から、3%をお主に支払うことになった。」

「おおおおおおおおお!」

「勘違いするなよ? 純利益からだからな? もしも利益が出なければ報酬は無しだ。」

「はい、理解しております。」


「最後に、お主の身分を領主家の客人待遇とする。」

「客人待遇ですか?」

「そうじゃ、不服か?」

「申し訳ありません、客人待遇がどのようなものかわからなくて・・・。」

「そのままだが? お主は奴隷の使用人の身分から解放し、伯爵家の客としてこの屋敷に滞在することを許すと言うことだ。」

「えええええええええええ!?」

「さっきから、叫びすぎじゃ。」

「し・・・しかし、よろしいのでしょうか?」

「うむ・・・、この調味料は正直どれだけの儲けを出すのか、見当すらつかん。。しかし、間違いなくこの領地一番の売れ筋商品になるだろう。それの対価なのだ、むしろまだ安すぎるかもしれん。」

「ありがとうございます。旦那様に、伯爵家の皆様に深く感謝を。。」


 ラウルはその場で深く頭を下げた。本当に嬉しかったのだ。

 

 そして、この日を境にラウルの人生は大きく変わっていく。




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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも論として王が認めなきゃ貴族になれないだろうし仮にも貴族が消えたのならマトモな国ならすぐ分かるよね?というかわからないなら国としても王としても無能だよな(笑)
2021/04/29 12:48 退会済み
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