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豚の角煮をつくろう

 醤油を使った料理を考えてみた。


 前世では中学の頃に母親を亡くしていて、家事はよくやっていた方だと思う。なので料理には多少の自信を持っていた。流石に醤油から作る羽目になるとは思わなかったが。

 数少ないレパートリーの中から、ラウルは豚の角煮を作ろうと決めた。昔、クックパッドでレシピを検索したことがあるのでよく覚えている。


 豚の角煮に必要な材料は、豚バラ肉、米のとぎ汁、水、醤油、ワイン、砂糖。この世界でもワインはすでに存在している。米から作る日本酒もどきは、まだ発明されていないようだ。


 ラウルは必要な食材を買うために商店街へと向かった。お金はメイド長から預かっている。屋敷に足りなかった物は豚のバラ肉のみ。それを手早く購入し、すぐに屋敷に戻った。


 「さて・・・、やるか。。」


 気を引き締めて戦場に向かう。調理場という戦場へ。今日の醤油の評価で、ラウルの人生が決まると言っても過言ではないのだ。


 自信はある。前世であれほど広まっていた調味料だ、この世界でも需要はあるはずなのだ。しかし、前世と味覚の違いにより、醤油が万人に好かれなかったらどうしようという不安も正直あるのだ。


 これは賭けである。この世界では煮る料理は少ない。ほとんどない、と言っても過言ではない。そこにあえて挑戦する。醤油をたっぷり使用して煮込む料理、豚の角煮でだ。


 ラウルは昼過ぎに調理場に入ると、他の使用人達がご飯を炊く準備をしていた。すぐに、米のとぎ汁を貰うことができた。前もってお願いしていたのだ。豚肉をブロックごと出してまな板の上にドンッと乗せて、素早く肉に包丁を入れていく。ある程度サイズを整えると、下茹でを始めることにする。


 豚肉は米のとぎ汁で下茹ですることで臭みを消すことができる。そして数回下茹でと蒸すのを繰り返すことで油を落とすことができる。30分ほどゆでて、火を止めて蓋をして30分蒸す。それを数回繰り返すのだ。

 味付けには、醤油、ワイン、砂糖を使う。それらを鍋に入れてから仕上げにかかる。ゆで方は沸騰してから30分ほど煮る。大事なのは、30分経過してから完全に冷めるまで待つことだ。冷めるまで待つことで、肉に味がしみ込む。その上でもう一度加熱して出来上がりだ。


 完成した時には、すでに夕食の時間になってしまっていた。急いで最後の一品として食卓に並べる。他のメイド達も手伝ってくれた。全員のところにお皿が行き渡ったのを確認すると、ラウルはその場に立ち上がる。


「本日は特別に自分の作った料理が一皿追加されております。自分が2年もの時間をかけてやっと完成させた醤油という調味料を使って料理しています。まずは自分が毒味しますので、それから皆様召し上がって頂ければ幸いです。」


 ラウルは伯爵家の三人に深く頭を下げて礼をした。


「この豚肉のような物がそうかね? 随分と色が黒ずんでいるようだが・・・、大丈夫なのか? しかし香りは実に良い・・・、良い匂いがするな。」


「はい、大丈夫です。長時間煮込んでいたのでそのように色がついていますが、とても柔らかくなっていて、とろけるような美味しさですよ。それでは、まずは自分が食べさせて頂きますね。」


 そう言って俺はナイフを使って、豚肉をすっと切る。とても柔らかくなっているので、簡単に切れてしまう。フォークでその肉を口に含むと、肉の旨味が肉汁と一緒にジュワァーっと口の中に溢れ出す。


 美味い。冗談抜きで美味い。この世界に来て初めて美味いと思った。しばらく呆けていると、周りの視線に現実に引き戻される。


「すみません、あまりの美味しさに言葉が出ませんでした。。どうぞ皆様も召し上がりください。」

「あははは、そんな大げさな。」


 ここで皆さんも肉をひとかけら口に含んで何度か咀嚼した。


 時間が止まる。誰も、ひと言も感想がでてこない。。


 辺りが静寂に包まれていく。皆、黙々と夢中で食べている。言葉を発する時間ももったいないくらいかぶりつく。


 ラウルも同じく我慢できずに肉にくらいつく。そのまま、熱いご飯を口の中にかき込む。


 (うっめぇぇぇーーーっ、ごはんに肉汁が垂れていて、またそれがマジでうめぇぇぇぇ! これはたまりませんな。)


 数分が経った頃、皆が食事を終えてゆっくりと息を吐いた。


「どうでしたか?」

「おいしかった・・・。」

「うん、うまかったな・・・。」

「はぁー・・・、おいしかったですわ。」


 みなさんグルメ番組のレポーターは向いていないとラウルは感じた。皆の顔は、実に満足した笑顔でいっぱいでした。良い手応えを感じます。




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