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初めて醤油を作る 2

 屋敷に戻ってからも、安静にしていたおかげで次の日には腫れも随分引いていた。


 昨日の今日なので、大事を取ってラウルは学校を休むことになった。正確には、要らぬトラブルに巻き込まれないように、旦那様から休むように要請された。

 

 何故か、代わりに旦那様が学校に行くと言い張っていた。奥様があわてて止めていた。トラブルの予感しかしない。


 相手は侯爵家。ラウルは伯爵家で働いている使用人とはいえ、身分は奴隷。普通に考えれば、ラウルが一方的に悪いことになって切り捨てられるはずだ。それで穏便に事を納めるだろう。

 しかし、この伯爵家は違っていた。身をもって盾となり、お嬢様を守り抜いた英雄的な扱いをされた。今回の件は、断固として抗議していくと息巻いていた。奥様は子供の喧嘩に大人が出て行くのはあまりよくありませんよと否定的だ。


 やはり、この家は少し変である。

 

 相手は侯爵家。伯爵家としては、やはり抗議しにくい相手である。


 結局、事の詳細を国王様の耳に入れて、判断を仰ぐこととなった。

 子供の喧嘩で大げさだと思うかもしれない、しかし、小さな火種が国の内乱を招くこともあり得る。念のためにも国王様にも耳に入れておいた方が良いとの判断だ。

 朝方、手紙を持った早馬が王都に向かって出発した。





 昼過ぎ、ラウルは学校を休んだのを良いことに、さっそく醤油作り始めた。


 まずは原材料の大豆と小麦を混ぜて煮た。水気を切ってからそこに種麹をまぜて発酵をさせる。すぐに塩水を入れようとも思ったが、なんとなく数日発酵させた方がいいと思い、三日後に塩水を入れた。大豆、小麦、塩水は比率1:1:1である。


 もちろん、比率は適当だ。今後、何度も比率を変えて作ってみる必要があるだろう。


 あとは、毎日1回かき混ぜるだけで数ヶ月で完成すると思う。現在の鑑定結果は、品名:諸味(もろみ)、評価:評価不能(最低品質以下)と表示されている。おそらく、毎日かき混ぜて発酵が進んでいくと高品質になるのではないだろうか?


 ラウルは毎日とにかくかき混ぜた。来る日も来る日も、雨の日も風の日も、台風の時も。


 いつぞやの侯爵家嫡男が奴隷を殴った騒ぎの件は、侯爵家が伯爵家のご令嬢に謝罪するという事で決着がついた。謝罪の内容には、奴隷の俺など居なかったかのように書かれてあった。


 (まぁ、当然だろうな。間違っても侯爵家の者が、奴隷に謝罪するなどあってはならないことなのだ。)


 そして、お嬢様宛の見舞金をそのままラウルが受け取ることになった。ラウルは一発殴られたくらいで気絶してしまったのだ。これは失態である。これは受け取れないと、断固拒否したのだが、結局お金は給料としてラウルの手元にやってきた。


 ラウルは、侯爵家に感謝しながら、嬉々として大豆を買いに走った。もちろんその見舞金を握りしめて。





 ある日、諸味(もろみ)の品質がやっと高品質になった。原材料を仕込んでから、2年が経過していた・・・。


 「こ・・・、こんなに時間がかかる物だったのかよ。。」


 ラウルは10歳になっていた。


 「あとは、搾るだけだ。」


 仕込んでいた諸味の量が500グラムである。そして、布に入れて搾って完成した醤油の量はたったの100mlだった。


 「少なっ」


 その生醤油を最後の工程である火にかけた。これは、中にいる微生物を死滅させる為である。これでやっと完成である。たったの100mlだが、この世界で初めて醤油が作られた瞬間だった。ラウルは早速、醤油を鑑定した。


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鑑定結果

品名:こゆくち醤油 品質:高品質

産地:スフィア王国ニルバーシュ伯爵領


大豆と小麦の比率が1:1で作られた醤油。

自然の中でゆっくりと熟成された一品。【2年物】


小麦がそのままの状態で入れられており、その分品質が下がった。

小麦を炒って砕いていれば、品質が上がっていた可能性がある。

大豆も水に浸してから蒸していれば、さらに良い。

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 アドバイスまでしてくれている。この鑑定スキル、万能すぎるだろう。


 早速、旦那様に醤油の完成を報告することにした。旦那様に面会を求めると、すぐに許可が下りた。


「ラウル、お主が面会を求めるとは珍しいな。どうしたのじゃ?」

「はい、あたらしい調味料が完成いたしました。そしてこの世界に広く広めたいと考えております。そこで、伯爵家の皆様にも是非味わって頂きたく、本日の夕食に新しい調味料を使用した一皿を私が作ってもかまいませんでしょうか?」

「新しい調味料だと? それはお主が以前から作っていたあれか?」

「はい。」

「う・・・、うむ。試しに作ってみるが良い。。ただし、お主がまず一番始めに毒味をかねて食べるのじゃぞ?」

「はっ、畏まりました。」

「もし、食べられないと判断されても、落ち込むでないぞ?」

「は、はい。」


(うーん、あまり期待はされていないようだ。)

 



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