夜更けに眠れないので色々と考えてみた
ラウルは、明日から学校に通う事になった。
寝る準備ができ、ベットに横になる。闇が支配する中、物思いに夢中になり夜も更けていった。
当面の目標、それはやはり奴隷から解放されることだと思う。しかし、奴隷から解放されると、8歳のラウルはたちまち生活に困るだろう。住む家もない、仕事も自分で見つけないといけない、一人で生きていく術がないのだ。たどり着く未来は、スラム街で犯罪に手を染めるしかないのかもしれない。
そう考えると、今の現状は奴隷の身分だが生活は保障されている。住む所は豪邸だし、食事は毎日三食出る。仕事も与えられているし、学校にも通わせてもらえることになった。
むしろ、今が幸せすぎるのではないか? 可能ならば、このまま伯爵家で侍従として雇われたいとも思う。しかし、せっかくインベントリスキルも、鑑定スキルも授かったのだ。前世の知識を活用して、何か商売ができないかとも考える。
(前世の知識・・・俺は何を知っている?)
前世でよく読んでいたライトノベルに出てきたのは、醤油を発明して大儲けをしていた。しかし、それは醤油の作り方を知っていることが前提だ。当然、ラウルは醤油の作り方など知らない。なんとなくわかるのは、大豆を発酵させているくらいだ。
この世界に来てから、確かに調味料に欠けている。食事に満足したこともない。この世界にあるものは、砂糖と塩、あと唐辛子くらいではないだろうか? どうにかして醤油を発明できれば一人でも生きていけるかもしれない。
電気はこの世界ではまだ発見されていないようだ。その代わり、魔法が電気の代わりのようなことをしている。ボタンひとつで魔道具が明かりを照らしてくれるし、コンロでは火が簡単につくし、お湯も簡単に蛇口から出る。乾電池の代わりに魔石と呼ばれる物が使用されている。むしろ、電気よりもクリーンエネルギーなのではないかとさえ思う。
(そろそろ眠くなってきた・・・。寝るか。)
ラウルは、心地よい眠気に身を任せた。一瞬で意識が深いところへ落ちていく。
(明日は、醤油作りでも試してみようか・・・。)
◆
朝日が部屋へ差し込む頃、ラウルは自然と目が覚める。前世では目覚まし時計で起こされていたが、この世界にはそのようなものはない。ゆっくりとベッドから起き上がると、先日、買ってもらった衣服に着替える。使用人の個室なので、水場やトイレは部屋にはない。共同トイレや、共同水場がある。少し眠気を感じながら、部屋を出て共同水場で顔を洗う。
使用人の朝食は、数名のグループで順番にとっていた。しかし、ラウルは使用人としての仕事を免除されているため、現在は屋敷の清掃や、食事の準備などはしていない。現在の役割は、お嬢様の荷物持ち兼、護衛だ。
旦那様からは魔法の才能も期待されている。もちろん、ラウルも魔法には興味がある。是非、習得しておきたい。
最近は、お嬢様の部屋まで行くことはなくなった。馬車で待っているとお嬢様は侍女を連れてやってくる。侍女から荷物を受け取ると、インベントリに収納する。そして、お嬢様と侍女を先に馬車に案内する。最後にラウルが乗り込み、お嬢様の正面にある座席に座る。そして、侍女のエミュさんに睨まれる。ここまでがルーチン化している。
「今日からラウルとも同じ学校で学ぶのですね。編入試験満点だったって聞きましたよ? きっとクラスもSクラスに配属されるのではないかしら?」
「Sクラスですか?」
「ええ、クラスは実力順なのよ。Sクラスが一番優秀で、A、B、Cと順にランクが下がっていくのよ。」
「任務の都合もありますし、多分、お嬢様と同じクラスになると思います。」
「そうかしら? まぁ、そうですわね。」
「はい、旦那様の影響力もかなりのものと推察されますので、先生に圧力をかけている可能性もあるかと・・・。」
「あー、ありえそうですわ。」
「まだ魔法のバリアで攻撃を防ぐ事くらいしかできませんが、命に代えてもお嬢様だけは逃がしてみせます。」
「あ、ありがとう。」
そういって、お嬢様はうっすらと頬を染める。隣のエミュさんは、苦虫を噛み潰したような顔でラウルを睨む。
少し、キザだったかもしれない。
学校に着くと荷物をお嬢様にお渡しして、職員室へ向かった。護衛なのに早速離れることに少し抵抗があったが、初日は先生と一緒にクラスに案内されることになっているので仕方がない。
先生と一緒に歩いて行くと、目的地はやはりSクラスだった。
「えー、今日からうちのクラスに転入生が入ってきました。みなさん、仲良くするように。あと、伯爵家の方なので失礼のないように・・・。」
(その後半の説明はいるんか?)
だが、伯爵家の関係者で間違いはない。自己紹介も伯爵家の使用人の方向でアピールするべきだろうか。ラウルはそう考えた。
「シルフィお嬢様の荷物持ち兼、護衛係のラウルと申します。よろしくお願い致します。」
クラスは大盛り上がりになった。これは失敗したかもしれない。




