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前世で処刑された公爵令嬢、幼女からやり直して家族の破滅フラグを全部折ります  作者: NN


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仲間の集結

 公爵邸。セレスティアの自室。


 夜。蝋燭の灯り。テーブルの上に紅茶とお菓子。ナターシャが用意してくれたフリーデリケのクッキーと、リディアが持ってきた南方の干し果物。


 六人が集まっていた。


 ヴィオレッタ・フォン・モンテヴェルデ。赤い巻き髪。鋭い金色の目。だが、セレスティアの前では仮面を外している。


 リディア・フォン・アルカディア。黒い長髪。凛とした横顔。故国の諺を胸に。


 アネリーゼ。金色の短い髪。白い法衣ではなく、今夜は私服。柔らかい表情。


 コンラート・フォン・ヴァイスハウプト。大きな体。腕を組んでいる。壁に背を預けて立っている。


 フェリクス・フォン・アルヴェイン。銀髪。眼鏡。書類の束を脇に抱えている。兄として。研究者として。


 ナターシャ・ペトロワ。セレスティアの半歩後ろに。控えめに。だが、全てを聞いている。


 そしてセレスティア。


 七人。


 セレスティアはテーブルの前に立った。全員の顔を見た。


 一人ひとり、見た。顔を。目を。


 来てくれた。全員が来た。断った人間は一人もいなかった。「今夜、集まってほしい」という連絡だけで、理由も詳細も言わないまま。それでも全員が来た。


 「みんなに話したいことがある」


 部屋が静まった。


 「宰相がわたしを陥れようとしている」


 誰も驚かなかった。全員がある程度は知っていた。だが、セレスティア自身の口から聞くのは初めてだった。


 「聖魔力脅威論。暗殺未遂の裏事情。貴族院での攻撃。全て、宰相が仕掛けている。目的は公爵家の排除。そしてわたしの排除」


 セレスティアは全てを話したわけではなかった。前世の記憶のことは言えない。だが、今の危機と、これから起きることの一部を共有した。


 「証拠は集まりつつある。宰相の直接関与を示すものはまだ足りないけれど、マティアスの独走の証拠、三百年前の記録、侯爵の証言。少しずつ揃っている」


 「だが、まだ足りない、ということだな」


 フェリクスが眼鏡を押し上げた。


 「うん。まだ足りない。宰相自身を追い詰めるには、もう一つ、決定的な証拠が必要」


 「それをこれから集める」


 「うん。だから、みんなの力を貸してほしい」


 沈黙。


 最初に動いたのはコンラートだった。


 壁から背を離し、腰の剣を抜いた。鋼の音が部屋に響いた。


 「俺の剣はお前のためにある」


 短い言葉。飾りがない。だが、重い。


 リディアがセレスティアの手を取った。


 「外交は任せて。南方の情報網も使える。わたしの故国の仲間が」


 ヴィオレッタが微笑んだ。仮面のない、本物の笑み。


 「情報戦は得意よ。父の証言もある。貴族院での弁論も、わたしがやる」


 アネリーゼが手のひらを開いた。淡い光が灯った。光魔力。


 「わたしの光で守ります。治癒も。神殿の力も。全て、セレスティア様のために」


 ナターシャが一歩前に出た。頭を下げた。深く。


 「影で支えます。八年間そうしてきたように。これからも」


 フェリクスが書類の束を掲げた。


 「知識は全て妹のために。三百年前の記録の分析も、聖魔力の理論も。学術的な武器は俺が作る」


 六つの声。六つの力。


 セレスティアの目から涙が落ちた。


 止められなかった。止めようとも思わなかった。


 「みんな——」


 声が震えた。十二歳の少女の声。政治家でも戦略家でもなく、友達に囲まれた、一人の少女の声。


 「ありがとう——」


 コンラートが剣を鞘に納めた。金属の音が、部屋の空気を少し軽くした。


 「泣くなよ。お前が泣くと、こっちまで」


 「泣いてない。目から水が出てるだけ」


 「それを泣いてるって言うんだ」


 リディアが笑った。「あなたの国の諺にそういうのあるの? 『目から水が出る』」


 「ない。今作った」


 「即興の諺ね。お揃い」


 ヴィオレッタが肩をすくめた。「あなたたち、諺を作りすぎよ」


 アネリーゼが微笑んだ。「でも、素敵な諺です」


 フェリクスがため息をついた。「妹の友人たちは賑やかだな」


 ナターシャが紅茶を注ぎ足した。全員分。温かいのを。


 笑い声が部屋に満ちた。


 七人の笑い声。


 ◇


 夜が深まっても話は尽きなかった。


 作戦の話。情報の共有。役割分担。


 でもそれだけではなく、他愛ない話もした。


 コンラートが訓練場で転んだ話。リディアが香辛料を入れすぎて料理を焦がした話。ヴィオレッタが読書中に居眠りして本に顔の跡がついた話。アネリーゼが猫に法衣を引っ掻かれた話。


 フェリクスが「この中で一番頭がいいのは間違いなくナターシャだ」と言って、ナターシャが「それはフェリクス様です」と返し、二人で譲り合った話。最終的にセレスティアが「二人とも」と言って解決した。


 人の話が一段落した頃、アネリーゼがセレスティアの隣に来た。小さな声で。


 「最近、眠れていますか」


 「まあまあ。ラベンダーのおかげで」


 「よかった」アネリーゼは少し間を置いた。「わたしも、昔、眠れない時期がありました」


 「治癒師でも?」


 「治癒師だから、かもしれません。光で治せないものを見てしまった時——何もできなかった自分が、ずっと夢に出てきました」


 「今は?」


 「今は大丈夫です」アネリーゼが穏やかに笑った。「あなたたちがいるから」


 セレスティアは笑っていた。ずっと。


 「あのね」


 セレスティアが言った。みんなが振り向いた。


 「わたし——今、すごく幸せ」


 部屋が少し静かになった。笑い声が途切れた。全員が、セレスティアを見た。


 「怖いこともある。不安なこともある。でも、今、この瞬間は。みんながいて。笑ってて。すごく幸せ」


 コンラートが頭を掻いた。照れくさそうに。


 リディアが目を伏せた。微笑みながら。


 ヴィオレッタが「何よ急に」と言いながら——唇を噛んでいた。泣きそうなのを堪えて。


 アネリーゼが両手を胸の前で組んだ。祈るように。


 フェリクスが眼鏡を外して拭いた。曇っていたからではなく。


 ナターシャが静かに微笑んでいた。


 「お嬢様。わたしたちも、幸せです」


 その言葉が部屋に残った。


 七人の夜は長く続いた。


 蝋燭が短くなるまで。紅茶のポットが空になるまで。クッキーの最後の一枚を誰が食べるかで揉めるまで。夜が深くなるまで。


 (コンラートが食べた。「一番体がでかいから仕方ない」と言って。リディアが「体の大きさと食欲は関係ない」と反論した。)


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