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『真っ青な嘘』と『真っ赤な嘘』  作者: ベータ版
2章 1期生の参加者集め [その2] 怪物の息子

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19話 思わぬ再開



 複数の薄汚れた灰色のファンが天井でぎこちなくクルクルと換気を促す。


 「これは、廃工場....」


 製造ラインは完全に停止され、かつては勤勉に働いていたであろう機械はもう見る影もなく廃棄的な塗装に見事に塗り変わっている。入り口から覗けた様子は予想していた通り数人の人影ひとかげがちらりと確認できた。


 ーーーゴクリ。


 生唾を飲み込み、一体こんな場所で何をどうするつもりなのか。


 「本当に嫌な予感しかしない.....」


 恐る恐る廃工場への入り口へと私は向かった。


 「さて、誰が集まっているのやら」

 

 私は人影の人物特定を行いたくて、工場内の高い位置にある小窓から射す僅かな日差しの光を頼りに覗き見る。


 視力を絞ってみるが、まだ太陽が完全に立ち上がっていないのか、中の人物を特定できるほどにはなく、肩を落とした。


 これから何が始まるのか、皆目検討もつかないが、これほどの人気ひとけのない場所を選択する道明寺には何か内密にコトを運びたいという意図があるのだろう、ということだけは察した。



 「ふむ、 35分遅刻だぞ、月島」


 「はい、すみません....」


 先ほどの電話先の上層部こと、道明寺どうみょうじは多少のイラつきを見せて、月島にペットボトルを弧を描くように投げつけた。


 ーーーコロコロ。ットン。


 弧を描いたペットボトルは重力という制約に従って落下し、私の足元へと転がった。

ボトルは私の靴に当たってわずかに戻った。まるでこの廃工場に入ってこいと言っているような、いやそれが道明寺の意思なのだろう。


 そして、転がってきたペットボトルがどういう意味で転がしたのか、なんとなく私には察しがついたが、精一杯の抵抗として、私はとぼけてみた。


 「え? なんですか、コレ」


 「お前、酔ってるんだろ? 体がふらついているし、電話であの様子だ、どうせ明日は休みだから〜とかなんとか考えていたんだろうな。朝方まで飲んでいたはずだ。さあ、それ飲んでさっさと目を覚ましてくれ、仕事の時間だ」


 さすがに電話先のあの状態では酔っていたことはバレバレだったか。


 そして、驚くことにこの富士山の天然水。結露した水滴が随分付着している。


 蝉がうるさいこの季節、太陽が完全に登りきっていないとはいえ、温度は25度近くで蒸す暑さだ。私にこの状態つめたさで私に渡せるのは今から20分ぐらい前で無いとおかしい。


 つまり、この場に道明寺が来たのは予定時間ちょうどぐらいか、それより少し遅かったと考えていい。


 ーーー道明寺め。


 35分遅刻したと言ってきたが、実祭、道明寺はさほど待っていないではないか。くっ、まあ、この件はあとで道明寺に突きつけて、突っついてやる。


 酒を飲んでいたせいか、感情の起伏が激しく道明寺への腹立たしさを加速させた。


 来て早々、休日の過ごし方への説教も今思い返せば言われる筋合いなどない。急に仕事を入れたのはあんたじゃないか、と悪態をつき、道明寺へのイライラを募らせるが、ここばかりは酒の勢いで癇癪かんしゃくを起こすわけにはいかない。


 奥歯をグッと噛んでこらえ、表向きには笑顔でお礼を言ってやることにした。


 「ありがとうございます」


 これまでの腹立たしさを忘れるかのように、冷えた水を一気に飲み干した。冷たい冷水は抵抗なくグビグビ喉を通過し、まるでお風呂上がりのコーヒー牛乳を飲み終えた時のように溜まっていた息を最後にプハッ〜と吐き出した。


 周りには逆に酒でも飲んでいるのかと思われる飲みっぷりだったかもしれない。だが、そんな事は気にしない。


 酒の後の水とはこれほどに身体に染みるものなのかと、新鮮に感じていた私はちらりと道明寺の方を目で捉えると、こちらに来いと手で合図を送るのが見えた。


 「今行きますよ、そっちに」


 古びた工場の入り口付近にたたずんでいた私は仕方なく今回の現場へと足を踏み入れ、道明寺の元へと歩き出す。


 「どうだ? 月島。 コイツを見ればもしかしたら、察しがつくんじゃないか?」


 「へ? いやいやいや、全く1ミリも理解できませんよ.....もしかして、ふざけてます? 道明寺さん」


 「ふむ。 俺は全くふざけてなど、いないのだがな。月島、椅子に座っているコイツに心当たりがあるだろう?」


 「誰なんです?」


 状況の把握に努めようと、まずは道明寺が示唆する椅子に縛り付けられた男に近づくと「あっ」という間抜けな声を出して視認した。


 それはまさしく数時間前に取り押さえた男。斜めに前髪をバッサリと真っすぐ切りそろえた至って真面目そうな、しかし汚い言葉を吐いて暴れていたアイツだった。


  大蔵 大輔の息子。


 ーーー何故こいつがここに。


 「どういうことですか? コイツは例のゲーム参加者に決定したからそちらに送り届ける手筈になっていましたよね」


 「ふむ。確かに月島、コイツは俺の元へと間違いなく届けられたよ。だが、そのままあの場所に送るだけではちょっとこちらに都合が悪い事態が出来てな。そうもいかなくなったんだ」


 「ちょっとこの状況お察ししかねます。詳しい事情を聞かせてもらえますか?」


 「ふむ。では、どこから話そうか....」

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