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『真っ青な嘘』と『真っ赤な嘘』  作者: ベータ版
2章 1期生の参加者集め [その1] 怪しい二人組

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15話 リバースサイド



ーーーー時は少し戻って40分。


 「おい、月島。今ちょっといいか」


 取り調べ室から出て、シワのできたYシャツを正した「スーツの男」は二人組に話していた例の「専門家」へすぐさま電話を入れた。


 「はい、月島ですが...」


 「悪いがすぐにこっちへ来てくれないか? ちょっと手に負えなくてな」


 男はバツが悪そうに電話先の女に頼み込むが、月島は基本的・・・に多忙なためダメ元覚悟での連絡だ。

 しかし、男には月島を説得できる算段がいつも通りあった。


 「そうですか。ちょうど今日の仕事が今終わった所なので向かうことはできますが...」


 「ああ、わかってるよ。また、こちらの情報が欲しくなった時にこっそり教えてやるからさ」


 「すみません、今日は大きな仕事を1つ片付け終わって疲れていますので、それだけではちょっとうけたまわりしかねますね...」


 「な、なんだ?他に何か欲しいものがあれば言ってみろ。遠慮はいらないぞ!」


 「…….でしたら、今度のデスゲームに携わる機会をください。それでしたら、すぐに向かいますよ、そちらに」


 「ぐぬっ、それは俺の権限だけじゃ、ちょっとな...」


 「先ほど行ったじゃありませんか?遠慮はいらないって」


 数秒の静寂を経て、どうしても手助けが欲しくなった男は重い口を開いた。


 「....わかった、どうにかして取り合ってみよう」


 「では、後ほど」


 通話つうわ状態がすぐにプツリときれ、失礼なやつだと不満をこぼしつつケータイを胸ポケットへとしまった。


 くそっあの二人組め。手間を取らせやがって。


 どうせ金欲しさにTRUERトゥルアーを名乗るいつもの連中に違いないと、今日取り調べの席にについたばかりの時はそう思っていた。


 が、男のある種の直感が自身に告げていた。今回はどうもそうじゃないかもしれないと。


 長く取り調べをやっていると「真実」を見抜きやすくするルーチンワークというものが自然に築かれていく。俺はそれを見つけたことでこの仕事を何年も任されるようになったのだ。


 その手順として、まずは適当な会話を始めとして、初対面の硬直をときほぐす。そして、場慣れし始めたところでスイッチを切り替えるのだ。声色こわいろをかえ、大声で怒鳴り散らし相手の動揺を引き出したところで、質問をする。そうして得た回答はよほどのことがない限り、嘘偽りのない純粋な回答なのだ。


 そこまで行けばすんなりとマニュアルである20問の質問も終えることができた。少なくともこれまでは。


 しかし、この長きに渡ってお世話になって来た、まさに完璧なルーチンはあのカップルには点で通用しなかった。敗因はわかっている、あの男だ。あの肝の座った男はこちらがどんなアクションを起こしても全く動じず、そっけない反応しか見せない。その上、質問には答えないの一点張りでこちらとしては本当に手も足もでない状態だ。



 と言うことで、あの月島を呼んでみたわけだが。


「お待たせしました、山本さん」


「おう!?びっくりした。急に声をかけるな」


「すみません、でどこなんです? その苦戦している取り調べ相手は」


「まあ、そう焦るな。1つ言っておくことがある」


 ごほんっ、と軽く咳払いし月島の注意を引く。


「なんです?」


「先に言っておくが多分、今回は本物だ。用心してもらいたい」


「ええ、わかったわ。じゃあ、案内して」


「おいおい、月島。来たばっかりなんだから少しばかり、コーヒーでも飲んで休んだ方がいいと思うが」


「さっさと仕事を片付けたいんです。それからゆっくりさせてもらいますよ」


「随分仕事熱心だな、まあいい。こっちだ」


 山本と呼ばれた男はスーツを両手で伸ばし、身だしなみを整えると、つい40分前に悪戦苦闘していた例の部屋へと早速、月島つきしまを案内した。



 部屋に入って、月島は机を挟んで向こう側にいる二人が楽しそうに話しているところを見て微笑を浮かべた。な〜んだ、別に普通の男女じゃないか。ここが取調室だと忘れさせるほどに微笑ほほえましさすら感じさせるそれを破るのに少々はばかられるほどだ。


 この部屋にくる途中の廊下でスーツをしっかりと着こなしている山本に「彼らの資料」と「取り調べの情報」はもらっている。


 まずは椅子にどっしりと構えている巨躯きょくな男、こいつは有栖川ありすがわ 浩介こうすけ。どうやら恐怖や畏怖を抱く素振りは今のところ一切見せていないらしい。そして、今回のキャプチャー対象でもある。


 キャプチャー対象と言うのはデスゲーム参加者の一人として確保する対象ということだ。当然この情報は非公開であるが、嘘を見抜くことが本質であるトゥルアーで気づいている者は少なくないだろう。事実、今日それを指摘して来た「あの青年」は全く騙されることがなかったのだから。


 まあ、目の前の二人は見た所気づいた様子はないみたいだし、本当に1億円もらえるのだと思っているのだろう。呑気のんきなものだ。


 ああ、そうそう、後ろにちょこんと立っている小柄な女性についても山本さんが話していたな。彼女は一億円に目がくらむいわば密告者と言うことで今日この場に来ているらしい。まあ、こうして仲良く話しているところを見ると本当に二人に対してそれぞれ一億円が支払われるのだとまだ信じているのだろう。


 よし!それじゃ、チャチャッとこの仕事を片付けて一人で飲みにでも行きますか。


 基本的には対象に20問の質問を行うことがここでは前提であり規則になっているが、トゥルアーである私だけは別だ。と言うことで、対象者を安心させるためにまずはーー1つプレゼント。


 「そうですか。少し迷っているようなので言っておきますが、私がする質問はたったの1回です。前の担当者は無能だったので20問などと言っていたようですが….」



「1つ?さすがは専門家だねぇ。それなら、質問に答えてやるよ」


 乗って来た、乗って来た。


 「それでは質問を始めます。では、一問目。あなたはTRUERトゥルアーですか?」


 これに対し、有栖川ありすがわはすぐに反応を見せた。


 「なんだそりゃ?」


 ーーー質問。判断不可。



 「本当にそんなんでいいのか?」


 ーーー質問。判断不可。


 「俺がなんと言おうが確かめようがないだろうに」


 ーーー嘘は.....ない。





 月島は「質問」の答えが出る前の会話に集中していた。理由はもちろん判断材料を増やすためだ。たった1つの質問、そう投げかけられれば人間なんていとも簡単に緊張の糸がとけるものだ。そして、油断して発したそれ以外の一言一言は実にボロが出やすい。


 「月夜に釜を抜かれる」とはまさに、この事だろう。確か、月がなくて真っ暗なうちに盗まれるのは仕方ないけど、月明かりが確実に灯っている日に堂々と盗まれる「バカ」って意味だったかしら。


 心のうちで「多大な情報」を期待しつつ聞いていた月島は有栖川の返事に対して少し肩を落とした。


 原因はただ1つ。特に有益な情報は得られなかった、それだけだ。そして、私は気を取り直して再び有栖川に声をかけようとしたその瞬間、少しばかり違和感を覚えた。


 なんだろう...。何か引っかかる。


 彼は「俺がなんと言おうが確かめようがないだろうに」って。


 これって、まさに。

 「私がトゥルアー」だと気づいていないと言うことなんじゃ...。


 ってことは。いや、まだ確信するのは早すぎる。


 断言できる段階に入るには、やはりあの質問の答えを聞いてからだ。そう思った私は用意していた「たった1つの質問」をもう一度改めて問いただした。


 

 「あなたはTRUERトゥルアーですか?これが私の最初で最後の質問です。これに答えていただければすぐに解放しますよ。もちろん、回答の内容にもよりますが」



 そして、なぜか彼は沈黙し、代わりに呑気のんきな彼女が答えた。


 「そうだよー」


 その回答は嘘であるとわかった瞬間 月島は思考をフル回転させた。


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