↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】畑の魔王と光の勇者 ~世界征服よりパンを焼きたい魔王、異世界の魔王にマウントパンチを叩き込む~  作者: 週一週二
南の魔王編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/83

第49話 暴かれた世界1

 南の魔王とゼンは、木製の椅子に向かい合って腰をかけていた。


 ゼンは一言の言葉もなく、湯気の立つお茶の入った木彫りのカップを、テーブルへ置いた。


「……。」


 ゼンは腕を組んだまま、静寂の中で相手をじっと見据えている。


 ガチャリと扉が開き、カレンが入ってきた。


「こんばんは、ゼン。お腹すいて、何か食べたい……」


 言葉の途中で、カレンの足がぴたりと止まった。


 部屋に満ちるただならぬ重苦しい空気と、ゼンの険しい表情を敏感に察知し、瞬時に身体の重心を落として警戒の態勢をとる。


「……ゼン、そちらの方はどなたですか?」


「……。」


 ゼンは何も言わない。


 深緑のフードの奥から穏やかで、それでいてどこか底知れない声が響いた。


「こんばんは、西の魔王……初めまして。私が南の魔王だ。」


 その名を聞いた瞬間、カレンは息を呑み、ドアの前で金縛りに遭ったかのように立ち尽くした。


「……貴公らは、この世界における『魔王』という存在の本当の役割を知っているか?」


 ゼンは答えない。カレンもまた、無言のまま相手の出方を探る。


 沈黙が、狭い室内を支配していた。


 南の魔王が静かに言葉を紡ぎ足す。


「人間が増えすぎれば、森は削られ、魔物は生きていく場所を失う。それどころか、生態系という世界の環境そのものを破壊しかねない。」


「逆に魔物が増えすぎれば、人は畑を耕すことすらできなくなり、いずれ絶滅へと向かうだろう。」


「この世界は、双方の数を間引く……その絶妙な『均衡』の上に成り立っているのだよ。」


「我々魔王とは、人間と戦い、その爆発的な増殖を一定数で抑制するための『自動システム』としての役割を担っているのだ。」


「それだけではない。」


 南の魔王は首を横に振る。


「さらに厄介なのは、魔王という抑止力が討たれた後なのだよ。」


「北の魔王が討たれてからというもの、北方領域では魔物の群れが野良化し、制御を失っている。」


「統率を失った猛獣たちは暴走し、己の縄張りを求めて各地を彷徨っている。そのせいで街道は荒れ果て、行商人も以前ほど通らなくなったはずだ。」


「魔王とは、ただ人を無差別に滅ぼす悪ではない。魔物という脅威をその身で縛り付けるための『重い鎖』でもあるのだ。」


「……。」


「勇者も魔王も、この世界の壮大な仕組みに組み込まれた単なる歯車に過ぎん。」


 ゼンは呆れたように深く息を吐き出すと、面倒くさそうに口を開いた。


「そんなことはどうでもいい。さっさと要件を話せよ。」


 南の魔王は微動だにしない。深緑の暗がりから、その表情を窺い知ることは不可能だった。


「まあ慌てるな。つまり、人間に無駄な手を貸し、魔物に仇なす貴公らは、この世界の均衡を崩す『イレギュラー』なのだよ。」


「だったらなんだ。俺は困ってる奴を助けるために戦う事はあっても、むやみに魔物を殺した事なんてねぇ。自分から進んで人間に加担した事も無い。それは、こっちに来た時にカレンと約束した。力が大きすぎるから、目立つと静かに暮らせなくなるってな。」


「何を言っているんだね。現に貴公らの介入のせいで北の魔王は死に、東の魔王はその役割を放棄して逃げ出したではないか。」


「それは、あいつらが勝手に俺らの生活に踏み込んできたからだろうが。俺はここで普通に暮らしたいだけだ。」


「なるほど。では東の魔王の件はどう説明するのかね? 貴公らの足でわざわざ砂漠に踏み込んだと思ったが?」


 ゼンは一瞬言葉に詰まった。


「……お前と話すのは面倒くさいな。あいつだって放置しておいて倒しに行かなきゃ、いずれ俺たちのところへ来ただろうが。」


「なるほど……では三日後の朝、私が王都だけを狙うと言ったらどうだろう?」


「その時、貴公らは私に絶対に剣を向けないと言い切れるかね?」


「バカが。王都にはシャロンがいる。騎士団だっている。お前ごときじゃ勝てねぇよ。」


「……その通りだ。私自身の力は非常に弱い。……だが、私が負けることは無いのだよ。」


「言ってる意味がさっぱり分からん。」


 そこで、それまで黙って会話を聞いていたカレンが重い口を開いた。


「……あなたはどうして、この世界のシステムや私たちの事を、そんなに詳しく知っているのですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。