↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】畑の魔王と光の勇者 ~世界征服よりパンを焼きたい魔王、異世界の魔王にマウントパンチを叩き込む~  作者: 週一週二
南の魔王編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/83

第47話 激しい雨2

 翌朝——。


 大雨はやみ、ぬかるんでいた畑も、なんとか杭を打ち込める程度には水が引いていた。


 ゼンとカレン、無事だった被災者たちは、天幕の展張作業を進めた。


 倒壊した家屋に代わる、当面の仮設住宅だ。


 緑色のテントが四張、ゼンの小麦畑に立ち上がった。


「皆さんのお食事と水は用意してあります。ゼン、私たちは王都に向かいますか?」


「急ごう。」


 ゼンはパンを詰めたバッグを背負い頷いた。


 二人は73式小型トラック――通称「パジェロ」の無機質なバケットシートに乗り込み、王都へ向けて発進する。


 道中、荒れ果てた道を進む。


 普段なら街道脇の森から飛び出してくる魔物の姿も、今日は見当たらなかった。


 凶暴な魔物たちであっても、この未曽有の大雨と土砂崩れには多大な影響を受けているようだった。


 倒木があればゼンが退かし、土砂が立ち塞がればカレンが自衛隊の装備を駆使して路面を切り開いていく。


 途中、かつて王都北方を護るために築かれた古びた要塞の脇を通り過ぎた。老朽化が進み、今はごく少数の守備兵が置かれているだけだとカレンが教えてくれた。


 本来なら徒歩で丸一日半を要する長旅も、四駆の機動力と二人の連携によって、半日もかからずに到着した。


 カレンとゼンは車体を王都から少し離れた森の中に隠し、そこから徒歩で街へと向かった。


「……これは、酷いな……。」


 ゼンが数日前に目にしたばかりの、活気に溢れていた華やかな街並みは嘘のように消え去っていた。


 倒木や崩れ落ちた建物の破片が主要な街道を塞ぎ、昨日まで賑わっていた市場は泥水に浸かって売り物の野菜や布切れが散乱している。


 あちこちで、茫然自失となりながらも必死に泥を掻き出している住民たちの姿があった。


 身寄りを無くして路上で泣き叫ぶ子ども。担架で負傷者を運ぶ人々。街の広場からは、炊き出しの煙が細く立ち上っていた。


「王都の救助は騎士団が担当しています。私たちがいても混乱を招くだけです。シャロンの無事だけ確認したら戻りましょう。」


「そうだな。」


 二人はシャロンの姿を探して荒廃した街を歩き回った。


 やがて、先日『海幸亭』で鉢合わせた厳格な騎士フローレンスの姿が目に入った。


 フローレンスは騎士団の中でも重要な立場にあるらしく、大声を張り上げて他の騎士たちに指示を飛ばし、自らも懸命に救助活動にあたっていた。


 そして、騎士たちの輪に混ざり、泥と汗に汚れながらも美しい金髪を振り乱して駆け回るシャロンの姿があった。


 彼女は傷ついた人々に温かい声をかけて励まし、小さな子どもを優しく抱き上げ、勇者という存在ではなく、一人の人間として街のために奔走していた。


 ゼンは背負ったバッグに手をかけ、中のパンを取り出そうとした。


 フローレンスが次々と騎士たちへ厳しい指示を飛ばす。


 シャロンも休む間もなく、倒れた負傷者のもとへ駆け抜けていく。


「……。」


 ゼンは何も言わず、静かにバッグの口を閉じた。


「……無事だったか。」


「戻りましょう。」


「そうだな。」


 二人は王都を後にし、車に乗り込んでゼンの家へと走り出した。


 車内で、カレンが前を見据えたまま切り出した。


「ゼン、大変厚かましいお願いがあるのですが。」


「なんだ?」


「ゼンの畑を、災害救助の拠点にさせて欲しいのです。あの近辺には、まだ孤立している集落があります。お願いします。」


「好きに使ってくれ。」


「……ありがとうございます。」


 バッグに入ったパンは一つも減ることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。