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【完結】畑の魔王と光の勇者 ~世界征服よりパンを焼きたい魔王、異世界の魔王にマウントパンチを叩き込む~  作者: 週一週二
東の魔王編

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31/83

第31話 brigade(ブリゲイド)

 序盤のテンポを見直し、第2・3話、第4・5話をそれぞれ統合しました。


 そのため全体の話数が以前より少なくなっていますが、物語の内容に大きな変更はありません。

 迫撃砲と機関銃の防衛線を強引に突破した魔物の群れは、ついに三人が陣取る岩場へと到達した。


 ゼンは躊躇うことなく群れの真っ只中へと飛び込み、「オラァ!」と怒号を上げながら容赦なく殴り、蹴り、投げ飛ばして屍の山を築いていく。


 カレンはその圧倒的な光景を横目で見ながら、ポツリと呟いた。


「……むちゃくちゃですね……あの人は……。」


 シャロンも震える膝を奮い立たせ、迫り来る魔物と剣を交えた。


 その時、一頭のオークが巨大な棍棒を荒々しく振り上げながら走ってきた。


 オークが殺気を放ち、巨大な棍棒をカレンの頭上へ振り下ろした、その瞬間。


 カレンは身を翻し、89式小銃の床尾板でオークの顎下を強烈にかち上げた。


 激痛でオークが怯む。


 カレンは素早く踏み込み一閃、銃剣をオークの胸元深くへと突き刺し、力強く引き抜いた。


 オークの一体を仕留めたものの、彼女の呼吸は荒かった。


「……はぁっ、はぁっ……っ!」


 激しい緊張で、心拍数が跳ね上がる。


────


 カレンは魔王としての能力〈brigade(ブリゲイド)〉を有していた。


 生命、または目的の達成に重大な支障が生じ、他に打開する手段が残されていない時。


 陸上自衛隊などで使用されている必要最低限の兵器や装備品が、そのままの姿で現出する。


 それだけではない。


 装備品の使用方法、正確な諸元、運用要領に至るまでの知識が脳内へと直接流れ込んでくるのだ。


 だからこそ、彼女は一度も撃ったことのない81ミリ迫撃砲を自在に操り、機関銃を掃射し、小銃による銃剣格闘すらもこなしてみせた。


 だが——。


 この能力がカレンに与えてくれるのは、あくまで「知識と技術」に過ぎなかった。


 彼女自身の筋力も、体力も、身体能力や反射神経も、何一つ強化されるわけではない。


 カレンは元いた世界では、陸上自衛隊の「衛生隊員」であった。


 普通科などの戦闘職種のように、直接戦闘を主任務とする隊員ではない。


 彼女は小柄な身体つきで、身長は150センチ。体重も50キロに満たない女性だった。


 100キロを優に超えるオークと、正面から渡り合える体では到底なかった。


 今回は運よく床尾板打撃が顎に決まったが、次も同じように上手くいく保証などどこにもない。



「……はぁっ、はぁっ……っ!」


 一方、シャロンも剣を振るい、魔物を一体、二体と斬り伏せていた。


 だがその時、視界の端でカレンが複数のオークに囲まれていくのが見えた。


「カレン……っ!」


 カレンは息を整え、必死に銃剣を構え直した。しかし、今度は二頭のオークに左右から挟み込まれてしまう。


「まずいですね……でも、やるしかありません……!」


 決死の覚悟で刺突を繰り出し、目の前のオークの腹部へと銃剣を突き立てた。


 しかし、刃は肉の奥深くまで食い込み、うまく引き抜けない。


 慌てて足を踏ん張り、なんとか抜こうと必死に引っ張るが、その隙を見逃さず、もう一頭のオークが棍棒を振り上げ、カレン目掛けて叩きつける。


 少し離れた場所で別の魔物にトドメを刺していたシャロンが、青ざめた顔でとっさに手を伸ばした。


「カレンッ……!!」

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