【12】
一度テントから顔を出して、亀のように頭を引っ込めてから、ヒロキが言った。
「どうしようか?まだ、風は強いようだし…」
「そうだね…。風が強いということは、何かしら、山のご意志がありそうだよね。どんなご意志なのだろう…」
ユカが閉じていた口を開いて言った。
「う~ん…、私が感じるのは二つの可能性なの。1つは、今は進まないで、待機していて欲しいという御心。もう1つは、風が強くても、先を進んで欲しいという御心よ」
ヒロキが何度か首を縦に振りながら言った。
「確かにね…。前者の選択の方が、安全なような気がする…、けれども、それが山の御心と一致するかどうかは、また別の話しではある…。後者はリスクの高い危険な選択のような気がするけれど、もしかしたら、山の御心と一致するかも知れない…。う~ん、困ったなぁ」
三人は、それからも色んな可能性について、意見を出し合った。三人寄れば文殊の知恵というが、今回は、なかなか難しい問題であった。いっこうに風は弱くならないし、どの意見が正解なのか、確信を持てずにいた。そんな三人を見ていたフィルーが何かに突き動かされるように言った。
「考えることより…、大切なことがある…。それは…ひとつになること…山と…仲良くなり…ひとつになること」
このフィルーの言葉によって、三人はハッとした。今まで、意見や可能性について、ひねり出して考えていたのだけれども、肝心の赤い山の御心や赤い山のエネルギーと、考えれば考えるほど、離れてしまっていた。頭でっかちになっていたのだった。
ワタルは感心しながら言った。
「本当にフィルーは、凄い!きっと、フィルーは、いつもそうやって、いろんな存在とひとつになっているんだね!考えすぎることは、考えものだ!思い切って、考えることをやめちゃおう!!」
三人の意見交換は、一時止まった。三人は、眼を閉じて、鎮まり、ひたすら、赤い山のエネルギーと一体となれるように努め、赤い山に心を預けていった。瞑想をはじめてから、30分ほど経過すると、ある荘厳な声が響き渡ってきた。
【心を通して我は語りかける。汝らは、何を求めているのか?我が、赤い山に何ようか】
三人は、声を出して答えようとはしなかった。瞑想の流れのなかで、野に芽を出す花のように、柔らかな心の声で語り出した。三人の想いは、ひとつだった。
【分かっている。赤い秘宝だな。我名はラーヌ。この赤い山の主である。我に会いたければ、心して、さらに登るが良い】
すると、テントに時おり強く吹き突けていた風は止んだ。その変化に気付き、一行は静かに、眼を開けた。
ワタルは、立ち上がり言った。
「風は止んだみたいだ。どうやら、僕達は、歩みを進められるようだよ」
「ええ、そのようね。それにしても、地響きのような声だったわ」
「よし!一度、ここで眠る予定だったけど、善は急げだ!」
一行は、テントから出た。
ヒロキは説明書に書かれていた「ロッサム」という魔法の言葉を唱えて、再び、テント道具を小さな木彫りの箱にしまい、リュックに戻した。




