【10】
一行は虹色の入り口をくぐり、赤い山に入山した。入山してからまもなくすると、赤い木々から、一羽の赤い鳥がこちらに飛んできた。そしてその赤い鳥が声を高らかにして言った。
「ようこそ赤い山へ。貴方達は赤い山を登るにふさわしい方達。この山は、登るごとに、不思議が訪れる山。私達、赤い山の精達も、貴方達を応援します。どうぞ登り切って下さい…。ですが、私達にもこの山の主の御心には、計り知れないものがあります。どうか、注意深く、お登り下さい」
こう言い終えると、赤い鳥は、まるで異次元世界にワープするかのように、消えていった。三人は、驚きながらも、赤い鳥から言われたことやアルレスからの言葉を、一つ一つ咀嚼するように登っていった。
それからしばらくすると、鬱蒼と生い茂る赤い灌木から、不思議な旋律が流れてきた。すると、赤い山であるのに、様々な色に、草木が彩りはじめた。そんな中を一行はひたすら登っていくと、時空のねじれのようなものが見えた。そのねじれからは、ワタル達の現代の日本が映し出されていた。
ヒロキは言った。
「この世界から僕達が住んでいる世界を改めて覗くと、まるで異世界のようだね。共通点があるとしたら、心というものが、あっちの世界も、こっちの世界も、創造的な働きかけとして、主導権を握っていることだよ」
ヒロキがこう言い終えたあと、その時空のねじれに、一行は、身体ごと引き込まれていった。
一行は、ぐるぐると回転しながら、現代の日本に飛ばされていった。
一行の意識は一時失ってしまった。まもなくすると、意識を次第に取り戻していった。気付いたら、学校のグランドにいた。そこで、一行は、あるものを見た。それは、学校から下校している過去の自分達であった。しかも、あるものも、見えていた。それは、三人の周りをくるくると回っているフィルーであった。あんなにも、当時求めていた赤い妖精のフィルーが、こんなにも近くで、飛び回っていたのだった。その事実を三人は知らされて、ショックを受けた。
ワタルは言った。
「僕達の目は、どんなに暗かったのだろう…。あんなにもすぐそばに、求めていた妖精はいてくれたのに…。」
フィルーは慰めるように言った。
「ワタル…、みんな…、気付かないときも…ある…。それでも…大丈夫…。妖精や聖霊はいつでも…、そばにいる。いつでも…求めて」
フィルーの言葉や想いに献身的なものや無償なものを感じ、三人は胸を打たれた。
ユカはフィルーに言った。
「ありがとうフィルー…本当に可愛いんだから!」
ユカは続けて言った。
「それにしても…、過去の自分自身をこんなにも客観的に見えるのも、面白いものね。普段の私って、こんな感じだったかしら」
ワタルは言った。
「ハッハッハ!いつもユカはこんな感じだよ」
ヒロキも首を立てにふり、相槌を打った。
それからも、三人で公園に行くところやカラオケをしているところなどが、映し出された。次第に回想の空間は、引力を強めていった。三人は、この回想の空間に、居心地の良さを感じてきてしまっていた。意識は次第に回想の虜になり、三人の行動は止まった。その様を見ていたフィルーは三人の目を覚ますように言った。
「ワタルたち…、ここから…抜け出そう…」
それでもなお三人は、回想と郷愁に囚われていた。フィルーは危機感を覚え、三人の目の前を飛び回り、全身全霊で輝きはじめた。すると、ヒロキが先ず最初に正気を取り戻した。ヒロキは言った。
「あ…、ありがとうフィルー!二人の意識も取り戻さなきゃ!」
ヒロキは次第に、光を帯びていった。ヒロキは、あの時のように、胸が高鳴った。 ヒロキのミューイが輝きだした。
「ワタル!ユカ!目を覚まして!今やるべきことを、思い出すんだ!」
すると、ヒロキのミューイによって、微かに、ワタルとユカのミューイも無意識のところで、共鳴し、光った。微かに、光はじめると、ワタルとユカも正気を取り戻すことが出来た。
ワタルはだんだんと意識をはっきりさせながら言った。
「あれ…、僕は今まで何をやっていたのだろう。僕達には、まだ、やらなければならないことがある…。いや…、心からやりたいことがあるんだ!みんなでエルプロージェの世界に還ろう!赤い山を登り、赤い秘宝を探し出すんだ!」
ユカもワタルに共鳴するように言った。
「そうよ!私達は、エルプロージェでやりたいことがあるのよ!旅は始まったばかりだわ!今は、私達の世界には、まだ帰らない!!」
三人と妖精の気持ちが一つになった時に、再び、赤い山に繋がっている、時空のねじれが見えてきた。
ワタルが言った。
「よし!あそこだ!みんなでもっと、願うんだ!僕達は、赤い山に戻るんだ!!」
一行の思いもさらに、強く、じんわりと胸の奥まで深まっていったときに、時空のねじれに、再び、吸い込まれていき、赤い山に戻ることに、成功した。一行は、最初に入った時空のねじれの場所から、さらに高いところに、飛ばされていた。
戻ってきた赤い山にて、確信とよろこびを分かち合った。




