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アミューと七色の山  作者: アミュースケール
第一章 フィリアムの赤い山
14/22

【9】

ワタル、ヒロキ、ユカ、フィルーの一行は、赤い塔から離れて、沈黙の森を抜けていった。抜けていく時も、来た時の同様の条件であったが、修得した甲斐があって、難なく抜け出ることが出来た。また、抜ける間際に、沈黙の森から、このような歌が聴こえてきた。


『沈黙の森』


沈黙にいざなわれし魂よ

その園には始まりも終わりもない

混沌や喧騒はもはや生じることもない

そこにあるのは

ひとつの無垢な息吹き


森は豊かな生命を育み

多彩な力が泉のように湧きたつ

葉には花びらを予感する歌があり

花粉からは根を伸ばす音がする

フェアリーや精霊達の輪舞は

来る者の深淵を呼び覚まし

おとぎの秘密を告白する


静けさは閃きの友となり

閃きは至福の(ロゴス)となる


プリズムの閃光には

幾つもの陰影と

新たな(さえ)ずりがそこにあり

水晶の川には

とこしえのまほろばが

映し出される


いついかなる時も

立ち還り続けよ

魂の声に


求めよ

その瞬時に黄金なる日々を


君もここを去れば幾日も

この時ばかりを待つ


胸が(くれない)の幽玄に染まる

その時を

全ての(みなもと)を統べる

沈黙の世界を



アルレスから言われたとおりに、沈黙の森を抜けていった後は、南西に歩いていった。アルレスとの別れ際に、ワタルはエルプロージェの魔法で創られたコンパスを受け取っていた。沈黙の森を抜けたあとは、水晶のように煌めく草原が広がっていて、幾つか道は分かれいたが、南西に向かう道を選んだ。すると、荘厳な赤い山がだんだんと近づいてくる。近づいてくると、赤い山が持つエネルギーがだんだんと強まってくるのを一行は感じた。しばらく歩を進めていくと『デネシス』と書かれた宿屋が見えてきた。その宿屋に一行は、入ることにした。


宿屋には、何人かの旅人達がいた。そのうちの青色のワンピースを着ている一人の女性が、カウンターの席から離れて、こちらに歩み寄り、もの珍しげに、ワタルに話しかけてきた。


「あら、珍しい服を着てらっしゃいますね。あなた達はアーネですね」


「そうです。私達は、異世界から来た者です。理由(わけ)がありまして、これから赤い山に登ろうとしております」


すると、女性は言った。


「赤い山に登るのね…。どおりでここらではいない珍しい雰囲気。赤い山に、登る前に、この宿屋に寄って、正解だわ。この宿屋で一度、食事をしてから、登りなさい。ここで食事をすることは、赤い山に順応していく上でも、必要なことなのよ」


その女性の言うことには、力があった為、一行は納得し、ミッポやアルレスから頂いていた通貨をポケットから、取り出して、ワタルは言った。


「じゃあ、ひとまず腹ごしらえでもしようか!」


すると、『デネシス』と書かれた左方の暖簾(のれん)の奥から、身体付きが岩のようにゴツく、いかにも豪傑な(おとこ)がやってき。そして、地響きのような声で言った。


「アルレスからは、聞いている」


ユカは、おののきながらも、勇気を振り絞って言った。


「はい。私達は、ここでお食事をさせて頂こうと、思っております」


漢は宿主であった。


「分かった。さあ、赤い山定食を今から、作るから。あそこの空いてる席で、待っていろ」


三人とフィルーは、ドギマギしながらも空いている席で料理が出来るのを待つことにした。青いワンピースの女性は、面白おかしく三人とフィルーに言った。


「宿主が直接顔を出しに来るなんて、めったに無いことよ!よっぽどの理由があなた達にはあるのね!!」


ヒロキは、女性に言った。


「そうなんですよ…。アルレス様からも色々と託されております。どこまで話して良いか分かりませんが、僕達は、これから赤い秘宝を探しに行くのです」


女性は、そのヒロキの言葉を聞くなり、驚いて、一度天井を見上げてから言った。


「アルレス!?赤い秘宝!!?たまげたわね…!あの宿主も出てきているから、間違いはなさそうね!私の名前は、青い国のサジェラスから来たフィーネよ、宜しく」


青い国と聞いて、ワタルは、驚いて言った。


「青い国から来られたんですね!本当に遠い国から!!」


フィーネは、言った。


「そうね…。私もずいぶんと旅をしてきましたから。サジェラスは、ここからだと、黄色の国やオレンジの国を通過するのが、最短ルートだわ。私もちょっと理由があって、これからフィリアムの知り合いのところに、行く必要があったの。貴方達と、出逢えて本当に良かったわ」


ユカは、フィーネに言った。


「フィーネさん、次に私達が行く国は、オレンジの国のオランドレムなんですけど、どうしたらいいのかしら」


フィーネは言った。


「ならば、赤い秘宝を見つけた後に、一度、この宿屋まで下山してくるといいわ。ここからいくのが、オランドレムへの最短ルートよ。オランドレムはここから西にあるわ」


「情報を提供して下さいまして、ありがとうございます。赤い秘宝を見つけた後は、この宿屋で羽を休ませて頂きたいと思います。それから仕度をして、オランドレムへ、また旅に出ようと思います」


「そうね。ヒロキの言う通り!それが私も良いと思うわ。フィーネさん、情報をありがとう」


このように会話をしていると、漢が定食を持って現れた。


「はい。お待たせ」


三人は、早速、赤い山定食を食べることにした。どんな珍味なのかと、少し、よそよそとしていたが、いざ食べ始めると、風変わりな見た目に寄らず、その美味しさで、言葉を失うほどであった。


また、食べるごとに、腹の底から力が(みなぎ)ってくるものを感じた。


三人が食べ終わる頃に、再び、手荷物を持って漢が現れて、言った。


「これを背負って、赤い山を登るといい。中には、必要なものが、入っている」


赤い色のリュックを三人は、渡された。それからまた漢は言った。


「俺には分かる。俺は、タゴク。アルレスが言ったとおりの三人。大丈夫。また、下山したあと、この『デネシス』に寄るがいい。部屋は、空けておく」


態度や言葉は悪いが、意外にも情の深いところがあるのをワタルが気付き、親しみを込めて言った。


「ありがとうタゴクさん。赤い秘宝を見つけて、必ず、またここに戻って来ますね!」


三人は、フィーネとタゴクに別れの挨拶をしてから宿屋『デネシス』を出て、歩をさらに南西に進めて行くと、赤い山のまえには、虹色の大きな鳥居のようなものがあるのが見えた。それを見つけてワタルが言った。


「あっ!あれが赤い山の入り口だね!アルレスの言ったとおりだ」


「本当ね!それにしても、虹色の鳥居なんて、見たことがないわ。なんて美しいのでしょう」


するとワタルが好奇心で虹色の鳥居のようなものに触れようと、そばに駆け寄ったが、アルレスから言われたことを思い出した為、その足を止めた。それを見るなりヒロキが言った。


「山には、山の御心がある。これから先は、その山の御心に添った心構えをする必要があるよ」


「そうね。アルレスが言っていたものね。全ての存在の奥の奥には、神秘なるミューイも隠されている。山のミューイに合わせること、順応していくことも大事になってきそうね。どうでしょう。一度この入り口の前で、三人で礼拝をして、ご挨拶をしましょう」


このように、ユカが言い終えると、三人は虹色の鳥居のような御前に並んで立って、深々と礼拝をした。すると、赤い山の方から声が聴こえてきたような気がした。それは風のいたずらなのか、空耳なのかは分からないが、とても心地の良いものであったことは、確かであった。


ヒロキが言った。


「これからは、何が待ち受けているかは、分からないが、無理はしないようにしよう。山の御意志が僕達の歩を止めるならば、従順に足を歩めよう。山が僕達を歓迎してくれるならば、素直に、歩を進めていこう。何よりも大事なことは、アルレスが言われた畏敬の心だ。【畏敬】という言葉が、僕達に何を指し示すのかは、まだ分からないけれど、感謝の気持ちを持って、登らせて頂こう」

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