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誰も知らない 〜日本最高峰の学園は究極のカオス〜  作者: 瀬戸隆平


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58/66

EP57 アドバイス

お読みいただき、まことにありがとうございます。

 縦山弁護士は1時間も経たないうちにやってきた。

 グレースーツを着た年配の男性だった。

 身長170センチほど、表情も所作も落ち着いた印象である。


 警察署内のの面会室で、辻獅堂(しどう)は逮捕の経緯と、取り調べの状況を説明する。

 樅山弁護士が気にしたのは紫シャツの刑事のことだった。

「彼は花田隆史刑事じゃないですかね」

「誰ですか、それは?」

「刑事裁判の弁護士の間では有名ですよ。重要な事件になると顔を出して来る」

「重要な事件、とは?」

 獅堂が尋ねると、樅山弁護士は腕組みをして言う。

「政界や財界や裏社会がからんだ案件です」

 獅堂はあごに右手を当てながら言う。

「でもこれって、単なる学校内の事件ですよね?」

「いや、そうでもないんじゃないですか?」

 樅山弁護士は獅堂の目を見て、続ける。

「東光学園の生徒は重要人物の二世が多い。事件の動向は現在のこの国、そして将来の日本にも影響する」

「なるほど」

「花田刑事は政界、財界、裏社会とつながっていると噂される。その意向を受けて捜査を行っているのだと」

「そんなことが可能なんですか?」

「証拠はない。だが多くの弁護士が花田刑事の強引な捜査や悪賢い手口を指摘しています」

 樅山弁護士は額に右手を当てて、こう続ける。

「そしてその結果、数多くの者が送検されている。中には無実だったのではと思える容疑者もいた」

「それって、ひっくり返せないのですか?」

「花田刑事のやり口は巧妙です。すきを見つけるのが難しい。しかも一度送検されてしまえば99%の確率で有罪になる」

 獅堂は頭を掻いていう。

「やっかいな人に目をつけられたな」

「まったくですね」

「俺は、どうしたらいいんだろう?」

「辻さんは、事件当日、現場にいたのですか?」

「いました」

「彼に暴行を加えたのですか?」

「いや。一方的な暴行じゃない」

「では何ですか?」

「彼に呼び出されて、向かったんです。そこで相手が先に手を出してきたので、戦った」

「なるほど」

 樅山弁護士は再び腕組みをした。

 そして静かだが、力のこもった口調で言う。

「ではやはり、一切を黙秘してください」

 獅堂は言う。

「わかりました」

「取り調べはきついと思いますが、気持ちを強く持って、ぶれないで下さい。気持ちが折れたら、相手の思うつぼです」

 獅堂はうなずいた。

 樅山弁護士が言う。

「他に何か、留置場で困っていることはありますか?」

「食事がひどい」

「であれば、自分で弁当を買うことができます。メニューは限られますが」

「あとは今回のことをメモしたり、今後のことを考えるためのノートや筆記用具がほしい」

「それも買うことができます。1万円をお貸ししますので、お使いください」

「いや、そういう訳には…」

「遠慮しなくて結構です。御両親にはお世話になりましたし、後でお返しいただけることもわかっていますので」

「恩に着るよ」


 獅堂は職員に現金を預け、弁当の発注と、ノートと筆記用具の購入を申し出た。

 

 午後、再び取り調べが始まった。

 ベテラン刑事が主体となり、穏やかながら、詳細に、事件に関する詳細を聞いて来る。

 獅堂は一切を黙秘する。

 

 黙って聞いていた花田刑事が、突然、腕を机に叩きつけて大きな音を立てる。

 獅堂の方に身を乗り出しながら、睨みつけて、

「こらガキィ、警察なめてんじゃねぇぞ!」

 と怒鳴る。

 そしてこう続ける。

「黙れば黙るほど不利になるぞ。言わねえのなら、てめえの身辺、根こそぎ聞いて回って調べ尽くしてやる。どこにも住めないようにしてやるぞ!」

 獅堂は言い返したい気持ちを抑える。

「おまえの顔は生意気だ。見てるとイライラする」

 花田刑事が言う。

「どうぜ親からろくな育て方をされてないんだろ。親からも捨てられたんじゃないのか?」

 獅堂は黙ってうつむく。

 その後も花田刑事の執拗な言葉が続く。

 獅堂は自分がサンドバックにされているように感じる。

 3時間ほどの精神攻撃が繰り広げられ、取り調べは終了した。

引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします。

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