EP56 紫シャツ刑事は鼻で笑った
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始まった取り調べ。
まずはベテラン刑事が、辻獅堂の名前、住所、通学先を聞く。
獅堂は無表情に答える。
確認が取れると、ベテラン刑事が本題に入る。
「今回の容疑は6月16日の大泉裕一郎くんの殺人未遂事件になる」
それを聞いて獅堂の目が据わった。
大きく息を吐いて、言う。
「弁護士との面会を求める。それまでは黙秘する」
すると紫シャツの刑事が鼻で笑った。
獅堂がゆっくりと視線を向ける。
紫シャツが言う。
「そんなことをすれば自分が不利になるだけだぞ」
それを聞いた獅堂。
黙ったまま視線を横にそらす。
紫シャツが怒鳴る。
「おい、聞いてんのか!」
その反応を見て、獅堂は声を出さないまま失笑する。
「てめえ! とことん取り調べてやるからな!!」
紫シャツが怒鳴り、獅堂に向かって身を乗り出す。
ベテラン刑事が間に入るように体で制止する。
獅堂が笑顔で言う。
「ああ、そうですか」
紫シャツは鬼のような顔になっている。
ベテラン刑事が言う。
「弁護士との面会を認めるよ。当番弁護士を呼ぶか、自分で弁護士を呼ぶか、どちらにする?」
獅堂が言う。
「知っている弁護士に依頼する」
弁護士の連絡先は父から教わっていた。
高校に上がる際、スマホに電話番号を登録させられたのだ。
父は言っていた。
「何かあったらここに電話しなさい」
弁護士の名前は縦山信之。
しかし獅堂は、そんな機会が、あるはずないと思っていた。
だが本日、それが現実のものとなった。
獅堂はベテラン刑事に言う。
「弁護士の連絡先は俺のスマホに入っている」
するとベテラン刑事は自分のスマホを取り出し電話をかけた。
しばらくすると事務員らしき女性が、獅堂のスマホを持ってきた。
ベテラン刑事はそれを獅堂に渡して、言う。
「弁護士に連絡を取ってくれ」
獅堂は電話をかける。
2コールほどで相手が出る。
「縦山です」
電話に出た弁護士に、名前を告げる。
「俺は辻獅堂です」
縦山弁護士が言う。
「ああ、辻さんの息子さんですね。いずれ連絡が来ると思っていましたよ」
「えっ!?」
「お父様から、そのときはよろしくと言われていましたから。お困りの状況なんでしょう?」
「ええ、逮捕されてしまいまして、警察署にいます」
「それは一大事です。すぐにうかがいますよ」
獅堂は弁護士がこちらに向かう旨を告げる。
ベテラン刑事が言う。
「取り調べは弁護士面会後に再開する」
紫シャツ刑事は苦虫を嚙み潰すような顔で獅堂を睨む。
そして大きな音を立てながら乱暴に席を立ち、部屋を出ていく。
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