EP52 路地裏
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その週の金曜日の夜。
辻獅堂は学校帰りに黄城駅で途中下車した。
繁華街が広がるこの街。
駅から500mほど離れたところに7階建ての大書店がある。
獅堂はいつも、そこで本を物色している。
駅を降りるとロータリーは大混雑している。
金曜となるとなおさらだ。
メインストリートは人だらけで、なかなか前に進めない。
獅堂はいつも裏道を使うようにしていた。
かつては商店街だったが、区画整理により街の中心から外れたエリア。
すでに空き家となった飲食店や商店が、ほとんど廃墟となって並んでいる。
人通りはほとんどなく、薄暗い路地だ。
ここを使えば、目当ての書店までは10分程度で着ける。
獅堂はこの日も、目当ての本を堪能した。
閉店時間まで書店で過ごした帰り道。
獅堂は薄暗い裏道を足早に歩いていく。
周囲からは交通騒音が絶えずに鳴り響いている。
獅堂は路地裏の物陰に潜む刺客には全く気がつかずにいた。
路地に入って2分ほど。
獅堂は金属の凶器で後頭部を殴られた。
ガン、という衝撃が頭から体中に響き、意識が飛びそうになる。
おそらく鉄パイプだろう。
すかさず足払いをかけられ、倒される。
そして4人ほどの男が体中にのしかかる。
そこまで30秒ほどの早業だ。
暗くてよく見えないが、みな、見知らぬ、いかつい男たち。
〈おそらくプロの組織だ〉
獅堂は薄れそうな意識の中、逆転の策を探ろうとする。
〈なんとか起き上がらなくては〉
蹴りや、パンチがあらゆる方向から飛んでくる。
両腕で顔と頭を守りながら、獅堂は馬乗りになっている男の目をかきむしる。
さらに右手で男の耳を引きちぎろうとする。
ひるんだ男の体重が右に傾く。
その瞬間、獅堂は左ひざを立てて男と体を入れ替える。
しかし立とうとした瞬間。
すぐに横から、別の男からの強烈なタックルが入る。
獅堂は吹き飛ぶように地面に倒された。
息ができない。
その瞬間、再び鉄パイプで後頭部を殴られた。
獅堂は完全に意識を失った――。
再び目覚めたのは病院のベッドだった。
天井の白い電灯がまぶしい。
周囲には誰もいない。
立ち上がろうとすると、体のあらゆる場所が痛む。
特に後頭部や首回りに重い鈍痛が残っている。
すぐに立ち上がるのは諦め、寝ていることにする。
しばらくすると、看護師の女性が来た。
30代ほどで長めの髪をまとめ、目元が優し気だ。
「気が付きましたか」
獅堂がうなずく。
看護師が言う。
「黄城駅近くの路地で倒れていて、運ばれたんですよ」
「そうですか」
「警察で身元確認を行い、ご家族がいなかったため、学校に連絡を取ったそうです」
「ご迷惑おかけしました」
「いえいえ。意識は戻ったので命には別状ないんですが、全身に激しい打撲の跡がありましたね」
確かに獅堂は患者用の衣類を着ていた。
「いま何時ですか?」
「午前11時です。今日はこのまま病院にいていただき、明日、容態に問題がなければ退院となります」
獅堂はうなずいた。
「警察から話を聞きたいという要望がありますが、病院で行いますか? それとも退院後にしますか?」
「病院でお願いします」
引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします。




