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誰も知らない 〜日本最高峰の学園は究極のカオス〜  作者: 瀬戸隆平


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EP44 2人組の刑事

お読みいただき、まことにありがとうございます。

 翌日の朝、刑事が数人、東光学園にやって来た。

 警察の制服を着ているわけではないが、かしこまったスーツや、鋭い目つきでわかる。


 1年6組の教室。

 校内に警察が入ってきたことで、ざわついている教室内。

 朝のホームルームのため担任の富樫由美が教室に入って来る。

 しかし生徒たちのざわめきは止まらない。

 由美が切り出す。

「生徒会長の傷害事件…」

 その瞬間、教室は一瞬で静まった。

 由美が続ける。

「その捜査のため、警察の関係者が校内に訪れています。皆さんにも協力を求めています。これから放課後、クラスの皆さんに警察の方が、一人一人、お話を聞いていきます」

「ええっ!?」

「俺たち、疑われてるの?」

「噓でしょ!」

 驚きの声が一斉に上がる。

「静かに!」

 由美が言い、こう続ける。

「落ち着いてください。生徒を疑っているわけではなく、情報を集めるためと聞いています。場所と時間は個別にお知らせします」

 

 事情聴取のスケジュールは各生徒のスマホに送信され、その日の放課後から事情聴取が開始された。


 辻獅堂(しどう)の聴取は3日目だった。

 指定されたのは進路指導室。

 部屋に入ると、2人の刑事が机に座って待っていた。

 左が50歳代、白髪交じりの銀縁眼鏡のグレースーツにエンジ色のネクタイ。

 右が20歳代後半、短髪の紺色スーツにグレーのネクタイ姿だった。

 年配の刑事が柔和な表情で右手でイスを指して。

「どうぞ、おかけください」

 と勧める。

 獅堂は黙って腰掛ける。

「クラスと名前を教えてくれるかな」

 というのは若いほうの刑事だ。

 笑顔はなく鋭い視線を投げてくる。

 獅堂は、

「1年6組 辻獅堂」

 と視線を外しながら言う。

 続いて若手刑事が聞く。

「住所と生年月日も」

 獅堂は抑揚のない声で質問に答える。


 すこし間を空け、ベテラン刑事が、微笑みを浮かべながら言う。

「学校生活はどう? 楽しいですか?」

 獅堂は、

「まあまあです」

 と、うつむいたまま言う。

 ベテラン刑事はさらに、

「部活動はなにかやってるの?」

 と聞いて来る。

「何もしてません」

 獅堂は即答する。

 沈黙のまま、再び間が空く。

 刑事2人の視線は変わらず獅堂に注がれている。


 やがてベテラン刑事は両手で書類を整え、口を開いた。

「生徒会長・大泉裕一郎君の暴行事件が校内で起きたことは知っているね」

 獅堂はうなずく。

 ベテラン刑事が言う。

「これからその事件に関して、いくつか質問をさせてもらいます。それをもとに供述証書を作成します。言いたくないことは言う必要はないからね」

 年配刑事の前置きが終わると、今度は若い刑事からの質問が始まった。

 まずは大泉裕一郎との関係をこと細かに聞いてくる。

 獅堂は一度会って挨拶をしただけの関係だと答えた。

 するとその日時、場所、挨拶の言葉の一言一句まで細かく確認をとる。

 あまりの執拗さに、獅堂は何度も、

「覚えていない」

 と繰り返す。

 獅堂は大きく息を吐き、天を仰ぐ。

 そして腕組みをして足を組む。


 若手刑事は動じる様子もない。

 今度は、事件当日の獅堂の行動を聞く。

 起床時間、朝食にはじまり、トイレの時間にいたるまで。

 獅堂は

「覚えていない」

 でやり過ごそうとするか、刑事は執拗に質問を重ねる。


 事件のあった時間帯の行動確認についての質問は、さらに粘着度を増した。

 若手刑事が聞く。

「6月16日の午前0時、君はどこにいた?」

「自宅にいた。もう寝る支度に入っていた」

「それを証明する人物は?」

「一人暮らしだから、誰もいない」

 若手刑事は大きく息を吐く。

 そして質問を続ける。

「翌日の登校までの行動は?」

「午前1時までには就寝。6時50分に目覚まし時計で起きて、パンを焼いて食べて、身支度を終えて7時45分の電車に乗って、8時10分過ぎに学校に着いた」

「それを証明する人物は?」

「学校に着くまではいない」

 若手刑事は再び、大きく息を吐く。

 その後は、クラス内の人間関係に関する質問をいくつかしてきた。

「特に印象はない」

「覚えていない」

 を繰り返して、やり過ごそうとする。


 1時間ほどが経過しただろうか。

 ベテラン刑事が腕時計を見る。

 そして若手刑事と視線を交わす。

 若手刑事がうなずく。

 するとベテラン刑事が紙を差し出して、獅堂に言う。

「これが今回の君の供述証書だ。確認の上、サインしてくれ」

 見るとA4サイズに、獅堂が答えた内容が手書きで記述されている。

 内容は

〈私は6月17日の午前0時に寝る支度をして、午前1時までに就寝し~〉

 と小学生の作文のような箇条書きが羅列されているだけのものだった。

 最後に

〈以上の通り録取して読み聞かせたところ、誤りのないことを申し立て署名した〉

 と記述されており、サイン及び押印部分がある。

 特に内容に誤りはなかったので、獅堂はサインを行った。


 するとベテラン刑事が言う。

「本日はこれで終わりです。ご協力ありがとうございました」

 若手刑事は無言のままだ。

 獅堂は席を立ち、部屋を出た。


 1年6組でただ一人、警察から聴取依頼がなかった者がいる。

 東大島神保だ。

 彼は5組の平手グループからも外されて失意の中、しばらく学校を離れて夜遊びを続けていた。

 服装もボディスーツにチェーンのネックレス、金属のトゲが装飾されたアームバンド、皮のパンツ。

 しかも頭は紫の髪を逆立てたスパイキースタイル。

 近寄りがたい雰囲気を増している。

 6月16日の生徒会長傷害事件もアリバイを調べるまでもなくノーマーク。

 捜査からは蚊帳の外だ。


「警察の取り調べも仲間外れかよ…」

 舌打ちをしながらつぶやく東大島。

 放課後、ひとりで帰宅しようとすると、靴箱に四つ折りの紙切れが入っている。

 それを開くと、

〈カラオケボックス「ナイトショー」405号室で待つ〉

 と書いてある。

「これ、ぜってー男だろ!」

 舌打ちしながら東大島は「ナイトショー」に向かう。

引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします。

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