EP39 密使
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その夜、緑川綾乃のスマホのSNSにメッセージが入っていた。
生徒会長・大泉裕一郎からだった。
〈明日の放課後、華道室で会いたい〉
綾乃はすぐに返信した。
〈承知しました〉
〈お久しぶりに会えるのを楽しみにしてます〉
華道室に紺色のワンピースで現れた綾乃。
花が咲いたような満面の笑みだ。
大泉に笑みはない。
白いシャツにカーキ色のチノパン。
端正な目はクールな光を放っている。
綾乃に言う。
「元気だったか?」
「ええ。会長も変わりなく?」
「ああ」
「ずっとお声をかけていただけなかったから。私はお会いしたかったですよ」
「それはすまなかった」
「今回は何のご用件ですか?」
「ああ。このところ1年が騒がしいだろう」
「退学者の件ですか?」
「それだけじゃない。6組の成績の異常な急上昇でクラスの序列に変動が起こっている」
大泉はロン毛をかき上げながら、こう続ける。
「綾乃はそんなことに頑張るタイプじゃないだろう。いったい6組で何が起きているんだ?」
「勉強会をしてるんですよ。石橋奈緒ちゃんがリーダになって頑張ってくれて。おかげでみんなの成績が上がってきたんです」
「それだけじゃないだろう」
「でも本当に、それだけなんです」
大泉は黙っている。
綾乃が続ける。
「5組の退学の3人についても、私たちは色々と噂されているようですが、全く接触はないんですよ」
大泉はゆっくり腕組みをする。
そして言った。
「わかった。時間取らせて悪かったな。ありがとう」
「どういたしまして。何かありましたら、いつでも呼んでください」
綾乃は深く一礼して、部屋を出る。
大泉は顎をさすっている。
そしてスマホを取り出し、登録ナンバーを押した。
「俺だ。いま華道室にいる。来れるか?」
しばらく待っていると、ノックの音がする。
「どうぞ」
大泉が言う。
ドアを開けて入って来たのはメイチェンだった。
うっすらと微笑みを浮かべて、座っている大泉を見下ろす。
「あなたが私に声をかけてくるなんて、よほどのことね」
メイチェンの言葉に、大泉も、
「ああ。かたじけないが、動いてくれるか?」
「いいわ」
そう言うとメイチェンは大泉のロン毛を撫でた。
「任せておきなさい」
ウィンクして、部屋を出ていくメイチェン。
残された大泉は脚を組むと、
「からかいやがって!」
とつぶやき、大きなため息をついた。
引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします。




