三十四斬り目
鉱山に入ってあれから…と今までの仕事ぶりや生活が恋しくなっていた人々。太陽の光も愛しくなってはたいまつでは我慢し難い有り様だった。あまり寝床とも言えないベッドで睡眠も不十分。出される三食の食事も泥みたいで味も悪かった。
脱出を図ろうと企てに向ける者もいたが入り口は一つしかない。岩盤も分厚い。洞窟内で不審な真似をすれば目を瞬きする間もなく見つかる。
労働の身となった人々に体力が落ち始める。
(これじゃあ洞窟中でお陀仏だぜ)
十代未満の少年ルウも骨を折っていた。今ではつるはしを投げ捨てたい程、我慢には耐え難くなっていた。
皆は黙って働いている。俺だけだ。俺だけでも逃げなきゃ。第一、この鉱山の洞窟の大半は自然洞穴だって知っているんだ。誰も知らないもう一つの出口があるに違いない。探索を始めたのが夕食の後だった。巻き縄とつるはしと食糧を携わってルウは旅出した。
たいまつを前に向けて照らしながらも古い靴が柔らかくなりつつ砂利や岩肌を踏むのだった。誕生日のプレゼントとしての靴は新ピカではなかった嘗てでは嬉しい物だった。腹一杯食べるのが幸せという程の時代だったから新しい靴の価値観も高くなる。
上の連中どもは好きな物だけ選んで取り上げ、嫌いな物をどんどん捨てる。
貴族の街は綺麗なままで下街の方へその嫌いな物が積もれていく。新品じゃなくてもお古はまだ使える。肉や魚のあらやあまり育ってない野菜。拾う奴らは嬉しいかもしれないが逆にいかがわしい。
親父にはこう聞いたんだっけ。
“クロヌリではゴミとかないんだろ”
すると短い言葉で返される。
“勿論さ。だから汚れとか一切ない”
本当は家族で誰も行った事がない。だが遠いし引っ越す金がないし。
自然洞穴だと認識して、進むと鍾乳洞に近い背景になっていく。水の流れる音が騒々しく、鉱山よりは少し広かった。そしてふと丸い岩に緑色を張った何かをルウは細く見つめた。照らし当てると苔だった。
二酸化炭素を吸収して育った植物。ならばここには生き物も潜んでいると捉えた。
次に待ってたのが更に広い空間。明かりをを真上に照らしても天井が見えなかった。真夜中みたいにもう出口に出たように空間さを身体に受ける。
凄いと目をパチパチさせたが自然で形成したとは思えない。不思議だな。自然形の鍾乳洞とは違ってこの洞窟は不自然だ。いや通路と類いするべきか。それに壁を打ち砕いて開けたかのようにも見える。
気を冷めて鍾乳洞の域から通路らしい洞窟をルウは足を踏み入れた。気配も何も感じず、恐れなど無であった。冒険心も芽生えそうなったところ、明かりを前に出した。目の前に巨大な物体が立ちはだかる。
何だこれ岩か?家よりも…いや城よりかなり巨大さが伝わる…通路の真ん中に岩だなんて妙な発見が続くものだ。翡翠色に照っていてはこれも不自然。
通路を遮られては登るしかないと手を伸ばして当ててみた。岩にしてはトゲトゲしている。そして何か…動いている…
グルゥアァ…
鋭く見つめた目。生暖かい息がルウを覆った。




