三十三斬り目
降りてこいと言われて糸綿という女は素直に「はい」と返事して降りる。いや飛脚せずに壁に這って降りてきた。降りてから立つ時も両手握って姿勢は真っ直ぐ直立していた。
「何のご用でしょうか?」
「倉に唐黍巻いて欲しいぞね」
「でもそんな事したら黄蜀狐さんから酷く怒られますよ…」
「自分思いで甘えた罰や。一度位教えてやらないといかんやき」
「でも…」
「そんなおめおめ言ってどうするが?このまま米食えずのままでええが?」
黄蜀狐を組から外そうしているような言いぶりだった。
一体どういった仲なんだろう…
美悦子が授けて貰ったのが…数え切れない本数の唐黍。美悦子からではまさしく玉蜀黍と言うものだった。
紐ではなく、糸で結んでいて、ランドセルと同じく位の大きさを二つを持ち運んでいた。
あてら自慢の唐黍をどうぞと迫られて、美悦子は顔だけ善人振っていた。
手にした時には…
もう他の食べ物を得られない程だからっと火鉄は健気に高笑っていた。
まるで残飯処理係を強いられているのではないかと道で一人歩んでいる時に返そうかと考えていた。
「美悦ちゃん!」
目の前に突然現れた!ように見えたのも思いの世界に目に置いていたから気づかなかった。
カラカラと高く鳴く叫びを出してきたのは長照だった。広場でずっと待っていたらしく、美悦子へ向けて駆け足で迫ってくる。
なんか…怒っている…
「どこ行ってたのよ!」
美悦子に向かって飛びついてきた。両手を広げて、間の中に入れる。美悦子の身体をしがみついちゃた。押し倒すまでも相当早かった。
「もう!何で糞毛男の家に行ったのよ!村人から聞いたのよー!」
少呑胡という人との接点が歪んでいるのではない。もう折れ曲がっている。
唐黍とかもったいぶらずに食べてくれるのかそれも気になっていた美悦子だった。
◇
人命を吸い尽くして自由を奪うのは魔物だけではない。ルブスには傍若無人である統治者も存在しており、魔物の被害を除いて犠牲人が、時には一万人以上を軽く超える例もある。ラレナ帝国の場合…現在で約五万人。父親の死から得たエムハルトが王として後任。
死とは病死だと公表に載せられているが他殺である事を国民は知らなかった。
後任の直後に労働組合を廃止。老若男女問わず、自国のラエム鉱山で強制労働させた。
後任の前から狙っていたもので軍隊の増強の為に発掘された鉱石を武器製造に、もしくはに売り儲けに引っ張り回し、軍資金を確保。勿論、財産までも流れるようにつぎ込んでいく。世界会議ではこのような奴隷制度を認めない目で最後に追放する。口封じの為にエムハルトは鉱山の出入り口を約千人以上を警備に置かせた。ネズミ一匹もすら出られない厳重体制ともいう。もし知られて孤立すれば全てがおじゃんである。貿易が丸ごと崩れる。金が得られなくなるであろう。
噂一つもすら流される事なく、国そして自分の地位を守れる事ができる。エムハルトは空に向けて轟々と笑い上げていた。
嘲笑できる間も終末が近付いているのを気付かず。




