三十斬り目
美悦子はしゃんしゃん赤筒と対峙する者が気になると女の横から覗き込んだ。
一発小さな火炎弾が放たれると男は仰け反って避けた。男は反しに太刀の切っ先を相手の本体に向けて突きつける。しかし平を掴まれ、動きが封じられる。砲口から赤く炎が漏れる。男の蹴りが腹に入り込んだ。手から放してしまい、後退りするしゃんしゃん赤筒。男は攻め続けた。左手に包丁のようにも似ていては非常に大きく長い太刀を掴んでいる。右手をしゃんしゃん赤筒を握り潰す怪力。その隙を太刀を頭に叩き込んだ。血は出ず、グシャリときしむ音が広く響いた。対峙というよりも虐げるような様子だった。森林級を圧倒するとしたら特武
以外にない。そしてあの彼の腕。獣みたいで毛深かった。
“特に腕に獣みたいな毛が生えた糞野郎は関わっては駄目よ絶対”
長照の言葉が頭に横切った。会ってはいけないのはこの男かしら…なら特武じゃないのか?
蹴りでしゃんしゃん赤筒の身体を力強くして蹴り倒す。間髪無く、足踏みを連続で顔を押し潰す。
最早この人が人間とは類するのか分からなくなった。
この時から決着が早々に片付いた。
森林級は特武一人分に対応するのが基本だというが、余裕過ぎる。
顔の形が崩れたしゃんしゃん赤筒。その亡骸を誰がどう処理するのかと不穏を覆う。
「坊ちゃんも今も狂っとるで。あんたの不甲斐なさが図々しかったに決まってんやろ」
獣耳の女がコロコロと愉快ぶりな声を叩いて言うと…
「ギャーハハハ!馬鹿馬鹿しいくて受け…ウゲェアァッ!」
女ではなく、疫病神よりも醜態さが上手となる者が美悦子の横を過ぎて飛んだ。いや蹴飛ばされた。
男が美悦子側の方面へ向いている。
美悦子が投げた薙刀を余った右手で鞘を掴んでいた。
輪郭は男前だが顔的には美男でもなかった。
女の言う通りなのか、厳めしそうで目が揺らめいて美悦子を見ている。
「…」
何も言ってこない。此方から言えばいいのか曖昧が生じる。とにかく礼儀正しくしないといけない。
「助けて頂き、感謝の言葉もありません」
短く、教科書に乗っているような例文をそのまま丸写しして言葉にした。
だが男の顔も全く変化なかった。しかしこの時に口を動かしてきた。若くも細くない音で威圧感が濃い。
「炎々の熱輪に囲まれている仲間に自分が飛び込もうとするような真似をした。お前がどのような心構えに類いに等しいのか…それが知りたい」
「…?」
「要するに理由だ。答えなければこの薙刀を返さん」




