二十七斬り目
ある一軒の家内。長照は一人暮らしの女と間隔狭く身を寄せて近頃の様子を尋ねた。
女は落ち込んだ顔で悩み事を返してきて、雰囲気は沈着へと成り変わった。
「家の周りで奇妙な事が度々起きてるんです…」
物は食材などが散乱したり、障子を破られたりするのを近頃目の当たりにしたという。
いつも一人きりだというのに、何かに荒らされた感じが濃くも頭に浮かぶのだ。
それらしいと抱かせたのが文字の畳の上に置かれた一枚の紙。
“いつも見てるのになんで気づかないかな”
異様で気味の悪さにで彼女の肩を震わせた。掃除も食事の支度も麻痺してしまった。
字の形から見て、過去に追いかけ回された男の書き方と酷似していた。初めは彼の口を素直に聞いていたが付き合いを控えるようになって顔を合わさないようにする事にした。無視するように。ちょっと…自分の興味に没頭してしまって男と話かけづらくなったから。
そうすると男の顔が日増しに苛立ちが見えてきた。
それが乱暴を生み出したと感じた時が物をぶつけてきたのだった。それ聞いて今長照が頭を沸騰させた。
「悪くないのに傷付けるなんて最低!」
魔物と同等位に存在価値を位置付ける。
今日女は梯子を持って天井裏を掃除するつもりだった。この家に住んでから五年間。まだ一度も天井裏を目にした事がないと灰の含んだ水の桶と手拭い。そしてこの村人側にとって貴重で清潔な石鹸を用意していた。
台所に古い紙に包んでいる、鮭の成魚程大きい塊の欠片である。高級脂を用いた洗剤は高く、数少ない。村人が手に入れるのも信じられない程の奇跡である。
女は無駄使いに気を配って大事さを抱きながらちびちびと石鹸をすり減らしてきた。
今日はこの欠片が半分以上はすり減るだろう。長照がチラリと目と同時に顔の角度も上げた。
「これは猫の手も借りないといけないわね」
手伝ってくれるのかと顔の明るさが上がる女。
「屋根が広いからきっと中も広いですよ」
「ええ。魔物が入れるくらいのね」
えっと目を丸くした女。長照と同じ角度で顔を上げた瞬間。糊のような透き通った両手が降ってきた。
ひゃあと悲鳴上げ、身を屈んだ。
「危ない!」
長照が女に目掛けて飛びついた。長照の腕が女の身体にしがみついた。そして押し込んで不気味な手から外した。床へぺたんと音と軽い音を立てた。
不気味過ぎる。震えが止まらず女は特武である長照に身を寄せていた。対して長照は女を抱えながらも不気味な姿を鋭い目で見合わせているいた。
蛞蝓のようにヌラヌラと揺らぐと更なる姿が天井をバリバリと激しい音をし立てながら突き破った。
木屑が砂のように舞い落ちる。鰻のような顔。ぷくらとした丸い目が二人をギョロッと蠢いた。




