二十三斬り目
あの物事に促し光景を目に瞑って想像する。美悦子の想像が今、
山の光景を目にし、美悦子達はその自然の光景の中に潜り込んだ。羅瑠渡との稽古していたあの日と紅葉の色は健在だった。
あの二人で立ち会っていた場所で落ち葉に埋もれつつだった。長照がここで
「昔の眺めも変わらない…ずっと長い前から私も励んでいたわ」
子供から既に始めていた。回りの様子を目に映し、身体が動きやすくなった六歳時から武人の道を歩んだ。
修行。それと共に触れ合っていた自然。美悦子と同じく食材を背負い籠に詰めているのを愛しいのを風のような涼しい目で眺めている。
「その時…戦士を選んでひたすら進んでいた私達」
「皆は弱かったんですね」
「ええ…今、力量が溜まった私達。それでも弱い」
長照の悲しく静まった目。過去の光景を目の当たりにした瞳が今空しく蘇る。
魔王は全て支配するおぞましい存在だと過去に知れ渡っていた事だがその話は既に廃れていた。魔王よりも恐ろしい災厄単位天空級の魔物の存在を強く、気圧されながら教えられた。しかしこの頃の災厄単位の最上位は山脈であり、天空という名前はなかった。
本当に実在するのかと疑わしかった。今もルブス大陸の人々と同じ位だった。
神ですら勝てないなんて有り得ない。神は世界の創造主だ。
「神は生命と大地を掻き立てのは誰もが理解している。しかし創られた生命は完全に意思を疎通している訳ではなかった。神の目をくぐって独自で奇跡的な力を手に入れた連中もの」
自分の疑いの口を呟いた時に羅瑠渡の投げ込んだ言葉が頭に横切った。
このクロヌリは現在無信仰国だ。国の柄を一幕変えられたのは全ては魔物の齎した暁だった。土蜘蛛大蛇と呼ばれた…いやそいつの正体も知るどころもなかった。奴の齎す力は災害そのもの…いや…この世界全ての文明が滅びるに至るのではないかとクロヌリの人は嘗てない危惧を抱いた。痛ましい光景を目に焼き付けた。神が数体ぐらいが救いの乞えを受け、人々の目に触れる前で地上に降臨した。恐怖から退ける為に、一斉に闘争の目が光らせ、構えた。しかし目の瞬きをする間に…
何が起きたと思う?
“…神が全てだという想像が崩れ去った…”
残った力である軍隊。そして特武…勝算など沸き立ってない上で悲しく絶望が残るだけだった。武術を詰め込んでまだ行く先が未定のままだった羅瑠渡。そして長照の受けた絶望感までも民と浸り渡った。
クロヌリの全てが何も応える事がなくなった。力を抜いて腰を落とした。顔を伏せて嘆いた。命が次々と消え去っていくのをただ悔やんで目を細めた。
その後どうなったかと問い詰められても…経験者である自分達も答えられるのはたった一つ、
“蒸発したかのように消えた”
荒れ果てた街や大地。狐化かされたかのようで人々は幻だったのかと目を丸く開いた。
しかし巨大な足跡が強く押し込んで残っていた。
人々は自分の建てた住処に戻った。しかし帰る家なんて無いと気付いた。家は潰れ、庭は焼かれた。経営も趣味までも犠牲の一つだった。
大事に育てた花も…
盛んに景気を保っていた店も…
知り合っていた命と血の繋がっていた命も…
混ざり立てた雑炊のような残骸の野原と化していた。




