二十二斬り目
あの物事に促し光景を目に瞑って想像する。美悦子の想像が今、現実と重なり合っていた。
獅子海の船の横で自分の小舟と藻屑となった海賊達。それを無言で飛び移った小舟から見下ろす、獅子海出身の特武。生き残りの海賊が彼の小舟に泳ぎ近づく。それはそれは男集団の中に紛れていた女の海賊が手を伸ばす。
全て思う事を。全て言った事を。許し乞えて欲しい様。
「ああ…せめて私と結びたい…」
間髪に待たされず、彼の足底が彼女の顔にめり込んだ。
「うしぇてんな」
前から惚れ込んでました。と言われようが目の前で命亡くしても顔を向けなかった。
たった一つの黒でも容赦ない「獅子海の蠑」の冷たい目線。そして容赦ないのはもう一人…港街でまた別の場所で騒ぎが生まれる。またしても魔物の出現。
通い道の上で仁王立ちして細長い身体を張る。黒い棒。それは…海苔だった。
災厄単位 草原 「海苔巻き」
手巻き寿司に手足が生えた。それだけ。しかも具はおしんこだけ。
「巻いてやるぞ人間共!おいらの身体で巻いて具になるのだ!ギャハハハハ!」
と豪語放っていた。しかしシュンと斬れる音が横切った。気配を配らずの海苔巻きの声がその音と同時に途切れた。グラッと海苔巻きの上部分の黒柱が傾いた。
魔物の前の立つ美悦子と同じ位の長さの薙刀を振った姿勢の羅瑠渡。今職場から飛び出してきた模様。
◇◇
前から惚れ込んでました。と言われようが目の前で命亡くしても顔を向けなかった。
たった一つの黒でも容赦ない「獅子海の蠑」の冷たい目線。
飴を口に含んで口の中に甘味が広がると羽ばたくような感覚を感じる。しかし自分の薙刀を見て黙認した顔に一変する美悦子。
金兆となって数ヶ月、魔物を討伐してきて、この器とずっと握ってきた。その間に水で汚れや血を落としたり、砥石を研いだりしてきた。
次第には何か限界が近づいているようだった。
長照はこれを一目で解いて告げた。
「もうナマクラになっている」と
彼女だって生身だけでやっている訳じゃない。背後に棒や拳鍔が壁に飾っているのを目に映った。
「研ぐだけで足りないと思うのよ。もう溶かした方がいいと思うわ」
「溶ける?」
「鍛冶に鍛え直すのよ」
「鍛冶…ですか」
鍛冶屋を営んでいる場所を知っていた。しかし導かれた先が街中ではなかった。美悦子の思っていた先とは逆方向の山であった。




