十八斬り目
この世界で神は数多に存在する。
躍動感も無く、のしりとそいつは樹木を押し倒しながら森の奥から現した。
水色をしただるま。ではない。巨大で全体が水色の塊の魔物の姿だった。
手は水かきがあり、短い尻尾を揺らしていると両生類の類だなと心の中で呟いた。
何より強調しているのが胴体に似合わない巨大な口および並ぶ臼歯。異色悪いことに唇が付いている。目が無いように見えるが目を細れば小さなというだけで本当はある。
巨大さに騎士達は呆然とし、フイルベリアも同じこの魔物を目の前にして立ち往生した。村長の解説した記憶が横切った。
“名前はクチビルだ。両生類みたい奴の”
まさか…こいつが村の壊滅の危惧を齎すのか?紙一枚風の白薄な外見的には闘争心を芽生える程も至らない。
溜め息を吐き漏らしつつ、フイルベリアを部下の指示を下した。
「者共。こやつにはお前たちだけで十分だ」
潔く返事と伴い、シュルンと一斉に鞘から剣を抜いた。部下達が踏み出した。
(我が子達も強さは神が正確に認めた。貧弱など有り得ない)
一人の部下がフイルベリアの横に飛ばされる。
「えっ…」
前方に意識を向いた。
「げぇっ…!止めっ…!」
水掻きの足に圧され、
「うわあぁっ!離せぇぇっ!」
鎧諸共ゴリゴリと音を響きたたせて巨大な歯に砕かれる。何か様子変と薄々感じた時、味方への救いに更なる加勢が突っ切る。
彼女達は連携に用いるが結果が繰り返される様だった。救う事ができず、数回噛み砕き、ゴクリと丸ごと体内に飲み込れた。
ペロリと舌を垂れ回した後、臼歯の揃った大きな口が開いた。
「ブモォオオオオオ」
牛のような低い声だった。奇妙な奴だが雑魚の類ではなさそうだと見切ったフイルベリアが鎧と同じ色を纏った紅き剣を握り構えた。
水棲。または水その物の身体など蒸発させる熱さに黒く染める力を抱えた剣だ。そうだ。この剣で数多の竜の肉を焼き刻んだのだ。
部下より速い動きで踏み込んだ。
「下がってろ!」
「体長!」
討伐の期待を込めた部下達の群れを過ぎた。土手っ腹に目を向けて睨む。そこだ。
しかしクチビルの手がガシッとフイルベリアがぶら下げながら、剣を鷲掴み取った。クチビルには何の熱さも伝わらず、奴の湿り気が剣に炎を消した。
何て奴だ!と驚愕している隙をクチビルのもう片腕の殴打がフイルベリアの後方へ押し飛ばした。
横一線に身体が直線して地面に転がる。部下達が一つの点に集中するよう、フイルベリアに集る。副隊長がフイルベリアの身体を揺さぶる。
「待て…!奴に目を反らすのか?」
「隊長!幾ら命があっても足りません!放棄しましょう!」
何を…!貴様ら怖じ気つくのを見るのは始めてだ…!
口紅みたいなのを付いて実際クチビルはオスである。




