十三斬り目
黄色い綿を花の上に乗せ、翌朝に露を含んだ綿を身体をふくと無病になるといわれている。
明かりが微かに差す時。羅瑠渡は寝間着を脱ぎ捨て、常時の漆黒の衣を着していた。
眠りに落ちていた美悦子。その有志を安らぎの顔にちらりと目を回した。
「行ってくるぞ」
ん…眩しい。目蓋をゆっくりと開けた。外に光の照りが私の顔覆った。私は起き上がった。
(羅瑠渡さん…もういない)
羅瑠渡は早くも家飛び出去った。いつもあの人は朝が元気ね。早起きを見習いたい。
「美悦ちゃんおはよー」
「ひゃっ」
長照さんも私より早い。驚きながらも私は彼女の顔を眺めた。嫌いじゃないけどついこの人には轟きを晒してしまう。別にお困りではないですから。だから羅瑠渡さんと同じぴったりで大好き。抱きついちゃう。
「おはようございます長照さーん」
「あはっ元気!今日は二人で仲良くしましょうね」
こうして私が意識を向けば怖くはなかった。
霜降の朝。涼しい空気が庭に漂っているのをひんやりと感じた。寒い時期の間近。もしくはこの暑さと涼しさの混沌した季節でこれで最後である。花や葉っぱなど綺麗どころさも失われ、枯れはて、枝だけが残される。ところが一つの紅に開く花が麗しくも目立つ。寒い季節なのに元気なのが不思議であるこの椿。つい私はその花の前に近づいては屈んでまじまじと花を見つめる。
椿は春だよね。長照の親からの授かり物だと過去の言葉を思い出す。まだ私が金兆ではなかった。いやまだ私がこの世界に来る以前から長照はこの椿を手にした。恐るべき生命力があると伺える。
ただの椿とは言えないと長照も語っていたが…奇妙で想像苦しいものとは見えていない。素敵。だと。元気な子だからと。
「私も同情しますよ…」
と呟いたその時、私の目の前で一瞬上から落ちてきた。慌てては何!?と叫んだ。それは着物のぼれ切れた男だった。
躊躇って場合を冷静に捨て、私は男の身体を揺さぶる。長照が私の叫びに気づいて飛び出した。そして
「何男が庭に勝手入ってのんよ!?泥棒か!?死ねぇ!」
怪我人だと分かっても男という性別を背負っている以上、配慮厭わず、強く蹴り、踏みつけ始める。
極度の男嫌い…長照らしいもう正真正銘もう一つの本性。羅瑠渡が止めなければこの男は本当に命が危うい。
私が羽交い締めで抑止する。それしかなかった。
「美悦ちゃん離して!」
「早まった事は止めて!」
キャアキャアと騒いでいる最中に男の呻きが耳に届いた。
「魔物が出たんだ…川だ…」
私はうんと頷きたいけど長照の反応は逆鱗に触れる一方。白い歯をギリギリと噛み締める。
「しらを切るのかぁ!?牢獄入りで済むと思うなよ!」
何を刺そうとしてるのか、腕を振り回そうとして拳でぶつけそうにない!
その時だった。微かな悲鳴が家に響き渡っていた。私も聞き、それに応じて長照の動きもピタリと止まった。
美悦子達の住む港街は江戸並みに騒々しい




