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第五章 覚醒 第七節 鎌鼬 第一話 家族会議

第五章 覚醒 第七節 鎌鼬 第一話 家族会議


「皆、今から家族会議を始める。集まって欲しい」


蒼真の呼びかけに、家族はそれぞれの椅子へと腰を下ろした。室内に緊張感と静けさが漂う中、蒼真はまっすぐに蒼也と葛の葉を見据えて言葉を続けた。


「蒼也、葛の葉。昨日は大活躍だった。本当にありがとう。お前たちが仲間であることを、心から誇りに思う」


感謝の意を伝えた後、蒼真はふと気になっていた疑問を口にした。


「そういえば、蒼也。昨日の戦いで占い師に『影縛り』を使っていたが、いつの間にあんな技を覚えたんだ?」


「ああ、あれか。天狗から学んだんだよ」


蒼也は涼しげな顔で答えた。


「最近は、あの天狗から学ぶことが多くて本当に助かっている。この力は、これからの戦いでも大いに役立てたいと思っているんだ」


頼もしく成長した蒼也の姿と言葉に、父親である蒼真は胸が熱くなり、密かに嬉しさを覚えた。しかし、感傷に浸っている暇はない。蒼真は表情を引き締め、家族会議の核心へと入っていった。


「それでは、本題に入る」


蒼真は机の上に視線を落とし、一同を見回した。


「今回も、討魔庁からの正式な依頼だ。対象となる妖(あやかし)は『鎌鼬(かまいたち)』。気をつけてくれ。こいつは飛ばしてくる鎌のスピードが異常に早いだけでなく、鎌鼬の本体そのものの移動速度も常軌を逸している。被害者たちも、『いつの間にか切りつけられていて、何が起きたのかまったく分からなかった』と口を揃えているそうだ」


鎌鼬は時間帯を選ばず、日中でも夜間でも、どこにでも姿を現すという厄介な特性を持っている。


「これが、討魔庁から提供された監視カメラの映像だ」


蒼真は手元にあったタブレット端末をテーブルの中央へと滑らせた。画面には、夕暮れの街路を一人で歩く女性の姿が映し出されている。


映像の女性は何の変哲もない様子で歩いていたが、その背後から、目にも留まらぬ速さで鎌鼬がふわりと現れた。鎌鼬は冷酷な笑みを浮かべると、両手を鋭く振り上げた。


その瞬間。


画面の女性の頭部が、音もなく胴体から切り離されて地面へと落下した。一瞬の出来事だった。直後、鎌鼬はまるで風に溶けるかのように、一足飛びに画面の外へと消え去っていった。あまりにも残虐で、あまりにも早い犯行だった。


「……動きが、早すぎるな」


葛の葉が険しい表情でタブレットを見つめた。しかし、蒼也の目は微動だにせず、冷静に映像を分析していた。


「動きは確かに早い。だが、人間の動体視力では絶対に追えないほどの速さというわけじゃない」


そう呟くと、蒼也はすっと立ち上がり、父親にまっすぐ視線を向けた。


「お父さん。今回の鎌鼬との対戦は、僕にやらせてもらえないだろうか」


その言葉に、蒼真は思わず目を見開いた。蒼也が自ら進んで前線に立ち、討伐を買って出るなど、これまでの彼からは考えられないことだった。息子の意外な成長と決意の表れに驚きを隠せない蒼真だったが、すぐに表情を引き締めて問い返した。


「……分かった。もし鎌鼬との本格的な対決になったら、その時はお前を信じて任せよう。だが、勝算はあるのか? 作戦は考えてあるのか?」


「ああ、ちゃんとあるよ」


「僕には勝つ方法がある。」


そのために、目隠しをする。」


「理由は戦いになったら分かるよ。」


「待て、蒼也」


蒼真はたまらず声を荒げた。


「鎌鼬のスピードは尋常ではないぞ。そんな正面からの力技で、本当に大丈夫なのか?」


「もちろん、何の策もなく、ただ普通に戦ったとしたら、勝算は低いと言わざるを得ないだろうね。だからこそだ。僕は、目隠しをして、周囲の気配だけで戦おうと思う」


「目隠しだと……?」


信じられないという顔をする蒼真をよそに、蒼也は淡々と続けた。


「わざわざ目隠しをする必要があるのか? ただ目を瞑るだけじゃダメなのか、って顔をしているね」


「当たり前だ! そんな危険な真似を――」


「お父さん、聞いてくれ。目隠しを完全にすることで、視覚という余計な情報を遮断し、精神を極限まで集中させることができるんだ。聴覚や肌で感じる風の流れ、そして妖の殺気。それらだけに全神経を研ぎ澄ませれば、鎌鼬の動きなど手に取るように分かる。だから、大丈夫だよ」


蒼也はからりと明るい声で笑い飛ばした。


「たまには、息子を信じてみてよ!」


しかし、息子の無邪気とも言える自信に満ちた笑顔を前にしても、蒼真の顔が和らぐことはなかった。胸の奥から湧き上がる言い知らぬ不安は消えず、父親の心は重く沈んだままだった。

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