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「チッ!」
親父は舌打ちをした後、椅子に座る。
あんなにはしゃいでる親父を見たのは初めてのことだった。
「何見てる?今日は学校のテストだろ?早く朝飯すませろ。
…髪ボサボサだな、シャワー浴びてから学校に行けよ」
さっきまで子どもみたいだった親父は、威厳のあるいつもの姿に戻っていた。
(さっきまで、あんなにはしゃいでたクセしやがって)
内心そう思ったが、それよりも気になることがあった。
「なんで俺がステータス覗いてたの、気づいたんだ?」
「直感スキルを持ってるからな。鑑定系に見られてる時と同じ感覚がして、外にお前がいるのもわかってた」
「私も鑑定してたわよね?朝から仁王立ちで私を見てたし。私は直感スキル持ってないけど、あんな視線じゃバレバレよ」
(強欲の目の使い方には注意しなければ)
「まぁ、直感とか自動発動スキル持ちは高レベルだ。自分のステータスを無断で覗かれたら、何されるかわからん、無闇に使うのは気をつけろ」
「わかった」
見放題ってわけにはいかないのか。
朝食を終えて風呂へ向かう。
シャワーを浴び終え、鏡の前で髪を乾かす。
(俺って強欲の目以外にスキル持ってたっけ?)
ふと、自分を鑑定してみる。
ステータス確認:対象 "雑賀 喜一"
年齢:15
身長:171cm
体重:58kg
種族:人間
欲落ち:強欲 (ユニーク)
現在の欲:スキルが欲しい
好感度:80
レベル:3
HP:140/150
MP:30/150
その他ステータス:開示不可
スキル
・【ユニークスキル:強欲の目】
・隠密鑑定
・クイック鑑定
「スキルが増えてる?」
スキルもクリックできそうだ。
ポップアップウィンドウが開く。
『隠密鑑定:自分の気配を極限まで消し鑑定可能。
クイック鑑定:3項目に絞り、3秒の凝視で鑑定可能。鑑定項目は固定でき、複数設定可能。』
「なるほど」
「クイック鑑定は、レベル・HP・スキルを戦力鑑定
欲落ち・現在の欲・好感度を日常鑑定にしておこう」
髪を乾かし終わり、スキルの発現にワクワクしながら階段を上がり、制服に着替える。
「もうこんな時間か、朝から色々あったな」
急いで家を出ようとすると、親父が声をかける。
「走って行く気か?新宿のダンジョン本部に行くついでに送ってやる」
親父と軽トラに乗ると、荷台に襲撃者が積み込まれていることを思い出し、不安を感じる。
「親父、さっき自分を鑑定してみたらレベル3になってた。あと鑑定スキルが増えてた」
「自分の欲に沿った行動でレベルアップするぞ。スキルもその系統で出やすいが、基本の戦闘スキルくらいなら鑑定系でも獲得できる。鑑定系がダンジョンに向かない理由わかったろ」
(なるほど)
俺は新しく手に入れたスキルを使ってみる。
「隠密鑑定+クイック戦闘鑑定」
3秒だけ親父を見た。
ウィンドウが出るが、親父のステータスに変わりはない。
「親父、なにか違和感ある?」
「ん、何がだ?」
(隠密鑑定は親父でも気づかないのか、これは使えるかもしれない)
「そういえば開示不可って何?」
「レベル差だろう、俺も高レベルの鑑定系にわざわざ頼んでる。そいつはスキルまで見れるが、その分金がかかる。最後に頼んだのは何年前か…」
荷台から物音がする。
「うぉっ!?今、俺安全?」
「あぁ」
「何でこいつ襲ってきたんだ?こいつ本部に連れてってどうするんだ?」
「……………………………。」
親父は話す気がないみたいだ。
重い空気に耐えかねて、俺は口を開く。
「ていうか親父、ダンジョンの管理人だったんだな」
「母さんから聞いたのか?ただの管理者じゃないぞ、S級管理者だ、凄いだろ?」
(いや、なにがすごいかわからん、ダンジョンの情報は未成年には情報規制されてるし)
(S級管理者ってことは未成年の俺でも入れるようにしてくれるかも?)
テンションを上げ返答する。
「すげぇ!マジかよ!親父がS級!ダンジョンに連れてってくれない?」
「いや、ダンジョンの情報知らないんだから、S級が凄いとかお前にはわからんだろ」
「引っ掛けてくるなよ」
浅はかな考えはすぐにバレた。
「お前のダンジョンに行く目的はなんだ?遊び感覚で行くと死ぬぞ」
(死ぬのか…単純に面白そうって理由もあるが、それより予知夢のことを言うべきか……いや、まだ勘違いかもしれない…ダンジョンに行けば何か手掛かりが掴めるかも…)
どう言うべきか迷ったが…嘘ではない、本心も少し混ぜて答える。
「家族を守れるくらい強くなりたい」
しばしの静寂。
「そうか」
「それにしても、ダンジョンに行きたいと言い出すと思っていた。拒否したところで、どうせお前は勝手に一人で行くだろう。俺と一緒の方が安全だ。今日学校終わりに一緒にダンジョンに行くぞ、1階層までだがな」
「ありがとう!」
信号待ち、親父がふと聞く。
「今日何回スキル使って鑑定した?MPはスキル使うと減って、0になると気絶するぞ」
「マジか」
「ちょっと待ってろ」
アタッシュケースを探る親父。
「あった。MPポーションだ、飲め」
赤黒い液体が入った小瓶を渡される。
「これ飲んで大丈夫なやつか?」
瓶の蓋を開ける。
臭い。
「好き嫌いする子は強くなれないぞ」
親父は顔を背けて言う。
車のドア窓に反射する親父の顔はにやけていた。
(こいつ、わかってて…)
赤黒い液体を一気に飲み干す。
青汁を焦がして凝縮したような味が口に広がる。
思わず吐きそうになるが全部飲み干す。
「おえっ、まずっ!」
思わず、吐きそうになる。
「今飲ませたのがMPポーション小だ、効果が上がるにつれ味も酷くなるからな」
「これ以上に!?」
学校到着。ホームルームには遅刻確定。
急げばテスト開始10分前には間に合うが、MPポーションの後味で吐きそうだ。途中で水道に寄り口を洗い流す。
だいぶタイムロスしたが、テスト開始5分前にクラスにつく。
「はぁ、間に合った」
幼馴染の雛が笑顔で手を振ってくる。
手を振り返す俺。
「遅刻よ、後で職員室にきなさい」
担任の美人先生は俺に厳しい。
(嫌われてるんだろうか?そうだ!隠密クイック日常鑑定!)
対象"美園 咲"
欲落ち:性欲 (Lv.5)
現在の欲:口説かれたい
好感度:85
(ん?なんだこれ?)
「早く席に着きなさい」
(口説く?難しいな…)
とりあえず適当に言ってみる。
「すみません。つい先生に見とれちゃってて」
そう口にした瞬間、彼女のステータスが変わる。
欲落ち:性欲 (Lv.8)
好感度:98
現在の欲:結婚して子宝に恵まれ、おばあちゃんになっても手を繋いで散歩したい
(怒られるより、やばいかもしれない...)




