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細かすぎてクビになった僕と、僕をクビにした冒険者パーティと  作者: ロケマロ


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14/17

5か月半後 ― その夜(デルガント)

 

 ブルーノを待たずに飲み始めていた4人のところへ、ジェラルドがやってきたのは、全員2杯目の酒が半分ほどなくなった頃だった。


「遅かったな。……あれ?ブルーノは?」

 エルマーが隣の椅子を引いたが、ジェラルドはそこへ座りながら首を振った。


「パーティ辞めるってさ」

 卓上へ伸びかけていたロルフの手が止まった。

 ネイトが顔を上げ、カーティスもジェラルドを見る。



「はあ?」

 エルマーの声が大きくなり、近くの卓から何人かがこちらを振り返った。


「何だよ、それ。今日?」

「今」

「なんで?」


「……ニコのこととか、いろいろ考えたらしい」

 ジェラルドは店員を呼び、自分の酒を頼んだ。

 それから、ブルーノとの話をかいつまんで説明した。


 ニコが話を聞いてもらえなくなっていたことに、ブルーノは気づいていた。それでも自分の居場所を失うのが嫌で、何も言わなかった。それを後悔しているらしい。

 そこまで聞いたところで、エルマーが眉を寄せた。

「いや、あいつも一緒にいただろ」

「ああ」

「ニコが長々しゃべってるとき、普通に先行ってたよな?」

 ロルフが酒杯を持ったまま考える。

「止めてた記憶はねえな」

「俺もない」

 ネイトも小さく頷いた。


「だろ? なのに今になって、それが嫌だから自分は辞めますって何なんだよ」

「自分も同じだったって言ってたよ」

 ジェラルドが答えると、エルマーはますます納得できない顔になった。

「だったら余計に分かんねえよ。今さら急にいい人になったって仕方ないだろ」

「いい人になったっていうか……」

 ジェラルドは運ばれてきた酒を受け取り、一口飲んだ。

 自分だって、ニコへの態度が良かったとは思っていない。


 カーティスに言われてから、思い当たることはいくつもあった。ニコが話している途中で先へ進んだこともあるし、聞かずに済ませたこともある。

 最近になってノートを読み、そんなことをしてくれていたのかとは思った。


 だが、それと5年間すべてが悪かったという話は別だと思う。



「俺たち、そんなひどかったかあ?」

 口に出すと、ロルフが困ったように笑った。

「話聞かねえことくらいはあったけどな」

「毎日ずっと仲良しってわけにもいかないし」

 ネイトが言う。



「別に殴ったり蹴ったりしてたわけじゃないだろ。報酬だって同じだったし」

「そもそもニコだって、最初からあんな感じじゃなかっただろ」

 エルマーが卓に肘をついた。

「だんだん細かくなってったんだよ。何か見つけるたびに止まって、こっちがもういいって言っても説明続けてさ。5年も毎日一緒にいたら、そりゃ聞かなくなるときだってあるだろ」

「まあな」

 ロルフが頷く。

「合わなくなってたのは確かだと思うぞ」



 それはジェラルドも同じだった。

 だから辞めてもらった。

 今になって分かったことがあるからといって、あのとき何も理由がなかったことになるわけではない。

「ブルーノ、考えすぎなんじゃねえの」

 エルマーが言った。

「今さら自分だけ反省して辞めるって、ちょっと偽善っぽくないか?」

 ジェラルドは酒杯を置いた。

「ニコは辞めてよかったって言ってた」

「は?」

「あのままいたら消耗しきってた、って」



 エルマーの顔から笑いが消えた。

「何だよ、それ。俺たちがニコを潰してたみたいじゃねえか」

「俺もそう言ったよ」

 ジェラルドは肩をすくめた。

「そしたら、俺は分かってないらしいぜ」

「何が?」

「知らねえよ。聞いたけど、『それも分からない』って」



 一瞬の沈黙のあと、ロルフが吹き出した。

「何だそれ。謎かけかよ」

「だろ?」

「本人も説明できねえんじゃねえの?」

 エルマーも呆れたように笑い、ネイトも困った顔をした。

 ジェラルドもつられて口元を緩めた。

 ブルーノは昔から、思ったことを器用に言葉にする男ではない。それは分かっている。

 ただ、卓の端に座るカーティスだけは笑っていなかった。

 話に加わることもなく、皿の肉を切っている。



「何だよ、カーティス」

 エルマーが気づいた。

「また何か言いたそうだな」

「いや」

「言えよ。前も言っただろ」

 カーティスは手を止めた。



 少し考えてから、卓の上にナイフを置く。

「ブルーノさん、自分は悪くないって言ってたんですか?」

「いや」

 ジェラルドが答えた。

「逆だよ。自分も分かってて何も言わなかったって。それを後悔してるってさ」

「じゃあ、別に自分だけいい人だとは言ってないですよね」

 エルマーの眉が動いた。

「でも今さらだろ」

「そうですね」

 カーティスはあっさり頷いた。

「今さらだと思いますよ。俺も」

 それだけ言うと、またナイフを手に取った。


 エルマーは何か言い返しかけたが、相手がそれ以上話すつもりがないと分かったのか、酒杯へ手を伸ばした。

 ジェラルドも、それ以上カーティスに聞こうとは思わなかった。


「で、どうすんだよ」

 ロルフが話を変えた。

「ブルーノ抜けるなら、前衛1人減るぞ」

「ああ。それなんだよな」

 ジェラルドは椅子に深く座り直した。


 カーティスが入ってから、探索については問題がない。だがブルーノが抜ければ、今度は単純に戦力が減る。5人でも受けられる仕事は多いが、これまでと同じ依頼を選ぶなら、新しい前衛を探した方がいいだろう。

「また募集出すか?」

「そうだな。急がなくてもいいけど、剣士か盾役あたりは欲しいな」

「今度はちゃんと戦えるやつにしろよ」

「分かってるよ」

「カーティスみたいな当たりなら楽なんだけどな」

「俺を基準にされても困りますよ」

 カーティスが苦笑する。

 エルマーが笑い、ロルフが次の酒を頼んだ。



 そのまま話は、次に受ける依頼へ移っていった。

 ブルーノが座っていた席だけが空いたままだったが、それでも酒は減り、料理は追加され、いつものように夜は過ぎていく。


 《デルガント》は続く。

 ニコが抜けたときもそうだった。ブルーノが抜けても、きっと同じだ。

 ジェラルドはそう思いながら、酒を飲んだ。


 ただ、ブルーノの言葉だけが、ときどき頭に戻ってきた。

『あいつは帰ってこないよ。もう放っておいてやれよ』

 なぜブルーノが決めつけるのか。


 自分たちが悪かったところは分かった。今度は話を聞くつもりもある。探索はカーティスに任せれば、ニコが何もかも背負う必要もない。薬や記録のように、ニコに向いていることだって分かってきた。

 以前とは違う。


 確かにブルーノの言うとおり、自分には分かっていないことがあるのかもしれない。


 だが、何が分かっていないのか分からないのだから、考えたところで仕方がない。

 会う機会があれば話してみればいい。

 実は向こうだって待っているかもしれないではないか。



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書いているうちにどんどん変わって、今ではほぼ別物ですが(笑)、ご覧いただければ嬉しいです。
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