第22話 話が早けりゃ結論も
私は魔法師ギルド ズウェルテ支部所属の受付嬢ノーリス24歳! 勤続年数8年! そんな私ですが私史上一番のピンチを迎えています……
「約束を守らないのは人としてどうかと思うわよ」
「同意見だ」
先ほどとんでもない戦いを見せた二人が私に詰め寄ってきてしまいました……!
「はわわわわわ」
まさかガデロンさんとリサさんがこの子たちに負けるなんて思ってもみなかったんです……。ちょっとリヒトさんがしつこかったから本物の二等魔法師の力を見せたら引き下がるかなって、ただそう思っただけなんです……。
どうします? このことを素直に支部長に報告? いやいや勝手にウチのギルドの魔法師と一般人を戦わせたなんて言ったらとんでもなく怒られるに決まってます…! いや怒られるだけならまだマシです……これは……
……下手したら、クビ……!!
「あば…あばばばばばば」
「あーあ、ノーリスさん壊れちゃったよ」
一等魔法師のフェルドが見かねて声をかける。
「お前も倒したら認めてくれるかな」
エインはにやりと笑い鞘を触りながらフェルドに向けてそう言った。
「勘弁してよ。というかそういう問題ではないと思うし。少なくともガデロンとリサに勝てた時点で十分実力は示せたでしょ」
「そうよ~。だから怒らないでください。ホロス様~!」
どういう心境の変化かリサがホロスに擦り寄る。
「なんか様で呼ばれるのは意外としっくりこないわね」
「じゃ…じゃあホロスちゃんって呼んでもいいかしら…?」
「え~? ん~、まあいいわよ」
なんだこのやり取り。
「ん~っ! やっぱりかわいいわホロスちゃん!」
あー、なるほど、リサはかわいいもの好きなんだな。
でもそのヒト神ですよ、なんて言ったら驚くかな。当然言いはしないけど。
そんなくだらないことを考えていると視界の端にホロスの頭に手を伸ばすリサが映る。
「撫でていいとはいってないわよ!」
ホロスはそれを拒絶。ついでに威嚇。そして俺の背中に隠れた。
なんで俺を壁扱いするんだよ。
「そんなところも猫みたいでかわいいわ!」
あんなことされてよくそんな態度とれるな。今日一番の驚きだよ。
「それで結局俺達はギルドに入れるのか?」
「支部長には俺達からも頼んでおくぜ。支部長だってお前らほどの強者をみすみす見逃したくないだろ」
ホロスに近づこうとするリサを引き留めながらガデロンが話す。
なるほど二等魔法師と一等魔法師からの推薦か。それは心強い。
「そういえば支部長今なにしてるんスかね」
リヒトのその言葉の直後上から謎の男の声が
「お、ちょうど俺の話してるな」
その男は二階の窓から植物の蔦をロープのように使い降りてきた。
カウボーイ風の帽子を被っており、落とさないように片手でそれを抑えている。
「いよっと」
着地をすると手から伸びていた蔦が消えた。
「なんでわざわざ上から来たんですか支部長」
「なんだぁ? 文句あるのかフェルド。そりゃかっこよく登場したいからに決まってるだろうが」
あごひげの生えた中年の男。なるほど、こいつが支部長か。
「ようエイン、それと……ホロスだったか?」
なぜ俺たちの名前を知ってる……なんてわざわざ言うつもりはない。どうせそこらのギルド職員か魔法師にでも聞いたのだろう。ギルドではホロスのせいで変に悪目立ちしたからな。
「事情は粗方受付嬢から聞いた。ルイグが壊滅……ね。信じたくない話だがだからこそちゃんと調査しなきゃなあ。おっと当然聞いたのはあそこでアホみたいな顔をしている奴からじゃないぞ」
支部長は受付嬢ノーリスに指を差した。
アホみたい……か。まあ否定はしないが可哀想だから話を切り替えてやるか。
俺は足を一歩前に進め名乗ることにした。
「はじめまして俺はエイン、こっちがホロスだ」
「あー、そうだな……自己紹介がまだだったか。俺は魔法師ギルド ズウェルテ支部の支部長、ワルドだ。お前たちの戦いは見させてもらった」
上から感じていた妙な視線の正体はこいつだったか。
「ご丁寧にどうも。それで俺達はギルドに入れてもらえるのか?」
「おう、入れ入れ! 本部には俺から話を通しておく。まあ文句を言う奴もいるかもしれねぇがお前らなら腕っぷしで黙らせられるだろ!」
なんかめちゃくちゃなこと言ったな。そんなこと言う奴が支部長でいいのか?
「あ、あの~、しぶちょ~……」
「お、やっと口を開いたかアホ受付」
「エインさんとホロスさんが強いってわかったのは私がガデロンさんとリサさんに戦うことを勧めたからですよね……? だから……そのぉ……」
受付嬢ノーリスは明らかに自らの保身のため言葉を綴っている。
「確かに実際に戦うところを見れたのはよかったよ」
「じゃ…じゃあ……!」
「でもお前には普通に処分を下す」
その言葉を聞いたノーリスは途端に青ざめ、「かひゅう」と間抜けに喉の音を鳴らした。
「当たり前だろ。まずは俺に話通せよ。本当はこいつらが口先だけの弱っちい奴らで大怪我でもさせてたらどうするつもりだったんだ」
「それはそのぉ……ちゃんとガデロンさんとリサさんには手加減してもらうよう頼んでてぇ……」
ノーリスは助け舟でも求めるかのように二人をチラッと見た。
「そうだガデロン、リサ、お前らも勝手に戦ったから同罪な」
「なっ!?」
「私たちは頼まれただけよ!」
助け舟ごと沈められてる……
「あはは、ドンマイ二人とも」
フェルドは笑いながらガデロンとリサに励ましの言葉をかける。が……
「俺に報告せずただ見ていただけのお前もアウトだな」
あっちの陣営勝手に壊滅した……
「え~、僕もですか? というか処分ってなんですか」
フェルドは頭を掻きながら不満げな様子で文句と疑問を投げかけた。
支部長は帽子を触りながらそれに答える。
「これから壊滅の報告があったルイグ周辺の調査を始める。忙しくなるぞ。お前らはその調査の担当をしろ」
「ふ…ふぅ……クビじゃなくてよかったです……」
ノーリスは額の汗を拭きながら安堵の声を漏らした。
他人事ながら良かったな。俺たちのせいでクビ、となっていれば流石に心が痛んでいた。
「やっぱお前は減給くらいはしとくか」
「一生懸命働くので勘弁してくださ~い!!」
「だったらさっそく仕事しにいけ。フェルド、お前たちもだ」
「はーい」
こうしてフェルドたちは去っていった。約一名名残惜しそうにしている奴はいたが……
「ホロスちゃ~ん! 次は…次は頭撫でさせて~!」
「うえっ…」
気持ちはわかるが嘔吐くなよ……。
◇ ◇ ◇ ◇
俺たちは変わらず稽古場に残っている。しかし喧しい奴らがいなくなったからだろうか。先ほどよりも稽古場が広く感じる。
「んで、本題だがお前らは魔王の居場所が知りたいんだったな」
支部長ワルドも引き続きこの場にいる。それにしても話が早くて助かる。
「まあ、結論から言うか。魔王の居場所は……わからん。というか魔王の目的も正直よくわからん」
……うーん、なるほど。
「じゃあギルド入るのやめます」
「ちょっ…ちょっと待て結論を出すのはまだ早いだろ!」
だってこれギルドに入る意味ないだろ。
第22話 話が早けりゃ結論も




