第19話 双花 in ギルド
「やーっと着いたわね。全くどれだけ歩かされたことか」
「お前は大体俺が運んでやっただろ」
一夜明け俺達はようやく目的地にしていた町、ズウェルテに到着した。リヒトの傷もすっかり完治している。既に自分の足で歩けるほど元気だ。これもホロスの回復魔法のおかげ。それが分かっているから俺はホロスのわがままに従っているわけだが。
「オレはこれからギルドに顔出してきますけどお二人は……」
「俺達もついていく。魔王の情報が欲しいからな」
「前も話しましたけど正直ギルドが魔王の情報をどこまで握っているかわからないッスよ。あれは騎士団の管轄ですから」
「わかってる。一応だ」
◇ ◇ ◇ ◇
そんなこんなでギルドに到着。リヒトが扉を開けるとカランカランと軽快にベルの音が鳴った。
するとこのギルド所属と思われる冒険者たちが品定めでもするかのように俺たちを見る。
なるほど、粒ぞろいだ。
「すみませーん。受付嬢さーん。報告があるんですけど」
道中魔族と接触したこと、俺の故郷が魔族に壊滅されたことなどはめんどくさいから全部リヒトに報告してもらうことにした。ギルドに所属していない人間が言っても説得力なさそうだしな。
「──ってことがあったんですよ」
「……すみません……。もう一度伺ってもいいですか……?」
一通り話を聞いた受付嬢は困惑している。まあそれも仕方のないことなのかもしれない。リヒトも魔族があんな辺境の村をわざわざ襲うのは不可解だと言っていたからな。
リヒトもすんなりと理解してもらうのは難しいとわかっていたのかもう一度丁寧に説明をした。
「──っわかりました…! リヒトさん、とりあえず魔水晶に魔法指輪をかざしてください」
「了解ッス!」
受付嬢が取り出した水晶にリヒトが指輪をかざすとその指輪が淡く光りだした。
「リヒト、これはなんだ?」
その光景を不思議に思い俺は素直にリヒトに聞いた。
「これッスか? 魔法指輪を通して戦闘記録を読み取ってもらってるんスよ」
「他にも魔力の痕跡の記録とかもできるんですよ。でもどちらも大雑把にですので口頭での説明もしてもらう必要はありますが」
リヒトの説明に付け加える形で受付嬢が補足をしてくれた。
なるほど便利なものがあるのものだ。魔法というのはやっぱりすごい。
「っと、確かにリヒトさんが魔族と交戦した記録がありますね。この記録だけではルイグが壊滅したかどうかまでは分かりませんが異常事態なのは確かです。上に報告しておきます。恐らく調査団が派遣させることになるでしょう」
流石にまだ完全には信じてもらえてはいないみたいだが嘘だと断定されなくて一安心といったところか。
「しかしエインさん? でしたか? あなたが魔族を倒したという話は正直信じがたいのですが……。失礼ですがあなた魔力が……」
疑いの目。当然の反応だ。俺だって魔力のない人間が戦えるとは思っていなかったのだから。
疑いの感情は目の前の受付嬢からだけでなく聞き耳を立てている冒険者たちからも伝わってくる。
「本当に失礼ね! エインはこの中にいる誰よりも強いわよ!」
「ホロス。かばってくれるのはありがたいがそんな喧嘩を売るような言い方をしなくても」
あーあ。本格的に嫌な視線を向けられてしまったよ。そりゃあ魔力がない俺より弱いと言われれば苛立ちだってするだろうに。でも、なんでだろうな。あまり悪い気はしない。
それよりも聞きたいことがあるんだった。話を進めよう。
「話を変えるが受付さん。魔王の情報をくれないか? 居場所がわかっていれば最高なんだが」
「申し訳ないですが部外者の方に情報は……」
「そうか。じゃあリヒトが聞いてその内容をあとで教えてもらうとしよう」
「わかったッス!」
「いやいやダメですよリヒトさん! 情報漏洩はっ!」
当然止めるよな。まあこれは想定通り。めんどくさいがここは仕方ない……
「なるか、冒険者。そしたら俺も関係者。情報漏洩にはならないだろ?」
「いいッスね! ホロスさんもどうですか!」
「しょうがないわね。エインが入るなら私も入ってあげるわよ」
俺たちの会話を聞いていた受付嬢が何か言いたげな表情をしている。そして控えめに口が開いた。
「……すみません。なれないです」
「なんでッスか!?」
リヒトが俺たちに代わって抗議する。
「一定以上の魔力を保持していない人と未成年は魔法師ギルドには入れない規則となってまして……」
そうきたか。だが妥当な規則ではあるな。死と隣り合わせの仕事をする冒険者にはある程度の実力を初めから求める。その実力は魔力量によって判断する。そして命がけの仕事を子供にやらせるわけにもいかないから未成年もダメと。無駄死にを出させないためのお優しい規則だ。
「でもこの二人本当に強いんですよ!? 入れたほうが絶対ギルドにとっても得ですって!」
それでもリヒトは引き下がらず説得を試みている。しかし実際どうしたものか。俺達の目的はあくまでも魔王討伐だからギルドに入ることは絶対条件というわけではないが……
「おいおい、そこの四等。あんまり受付を困らせるもんじゃないぜ」
「そうよ。力のない子は素直に守られていればいいのよ」
そんな光景を見てか二人の冒険者が話しかけてきた。一人は筋骨隆々のガタイのいい男でもう一人は如何にもな魔女帽子をかぶった女だ。二人とも恐らく20半ばといったところで指輪は青く輝いている。二等魔法師ということか。
「だからエインさんとホロスさんはめちゃくちゃ強いんですって!」
「そうは見えないからこうして忠告してあげてるんじゃない」
こうしてリヒトは二等魔法師ふたりと言い合いに。リヒトが勝手に抗議してくれるから楽でいい。楽でいいが暇ではあるな。
さてどうしたものかと眺めていると服の裾を引っ張られた。その手の主はもちろんホロス。
「どうするエイン? 出直す?」
「そうだな。迷惑をかけたいわけではないしな」
「じゃあ折角だし町を見て回らない?」
「いいな。俺も初めての町だから気になってたんだよ」
代わりに抗議をしてくれたリヒトには申し訳ないがここは一旦出直すということにしよう。
そんな感じで俺達の中で話が固まったところで受付からパンと手の叩く音が聞こえてきた。
「じゃあこんなのはどうですか? この二等魔法師ふたりと模擬試合をしてもらって勝ったら支部長に打診するということで!」
黙っていたかと思えば急に何を言い出すんだ、この受付嬢は。一体何を考えてそんな提案をしたんだか。
「いいじゃないッスか! やってやりますよ!!」
リヒト、なんでお前が勝手に決めんだよ。
「俺達もそれでいいぜ」
「手加減はしてあげるわよ」
随分とノリのいい奴らだな。そっちにはなにもメリットがないというのに。
「はぁ、どうするホロス?」
「決まってるじゃない! ボコボコのボコよ!」
ホロスはぶんぶんと拳を振りながら答えた。
ノリのいい奴がもう一人いたよ。
「わかった。じゃ、やりますか」
第19話 双花 in ギルド




