第四話:第三砦防衛戦 其の弐
※読者の皆様へ
本作には一部、戦場における暴力描写・残酷な表現(流血や部位の損壊など)が含まれます。苦手な方はご注意のうえお読みください。
ドス、ドス、ドス——。
地の底から伝わる不気味な地鳴りは、一刻ごとにその大きさを増していた。 桃太郎を討ち取り、歓喜の咆哮をあげる雑鬼どもが、血の匂いを追ってこの拠点へとなだれ込んできているのだ。
「全兵員、配置に付け! 遊撃隊、弓隊、弩砲隊、補給隊! 直ちに持ち場へ集結せよ!」
老将・陣の怒号が、砦の広場に鼓膜を破らんばかりに響き渡る。
俺——凛は、息絶えた隊長の身体を他の兵たちと共に広場の脇へ運び、静かにその眼を閉じさせた。立ち尽くしている暇すらない。
あらためて見上げた「第三砦」の姿は、冷徹なまでに完成された戦争の巨大な道具だった。
切り立った二つの巨大な岩山——その狭い谷間を削り取るように建てられたこの砦は、鬼どもが人間界の奥深くへ侵入するのを阻む絶対の「関所」だ。
正面に聳え立つのは、人間五人分もの高さを誇る巨大な石壁。削り出された石そのままの無機質な灰色が、鈍く重苦しい存在感を放っている。その石壁の内側には、兵士たちが自由に行き来して弓や弩砲を構えるための木組みの通路——「武者走り」が巡らされていた。
正面の中央には、数人がかりで重い鎖と滑車を巻き上げて開閉する巨大な『大鉄門』。 そして、石壁の右隅には、影になった場所に人一人が身をかがめてやっと通れる程度の『小さな鉄扉』が存在する。巡回や緊急時の伝令が使う裏口のようなものだ。
「遊撃隊! 大門前へ出撃! 敵の先鋒を食い止める防波堤となれ!」
伝令兵の叫び声に従い、俺は百人程の兵たちと共に重々しく持ち上がった大鉄門をくぐり、砦の外へと押し出された。
周りを見渡すと近接武器を得意とするものが多かった。
俺たちの背後で、巨大な大鉄門が不気味な重音を立てて閉ざされていく。 背後には人間五人分の高さを誇る絶壁のような石壁。退路のない門前で、俺たちは前方に長槍や刀などを構え、壁上の弩砲隊や弓隊、補給隊との連携のもと、敵を迎え撃つ「防波堤」としての陣形を組んだ。要塞の防衛としては理にかなっている。
だが——道具がどれほど完璧であっても、人数もそうだがそれを使う人間の心が脆すぎた。
「おい……本当に俺たちだけで食い止められるのかよ……」
「桃太郎様がいらっしゃらないのに……」
百人の列を組む兵たちの肩はガタガタと震え、握りしめた槍の柄がカタカタと乾いた音を立てている。 壁の上に配置された兵たちも、血の気の引いた顔で固まっていた。 どれほど強固な壁があろうと、十分な兵力が残っていようと、絶対的な支柱を失った兵たちの目は「戦う者の目」ではなく「屠殺を待つ家畜の目」だった。
俺は自らの腰から刀を抜き、柄を強く握りしめた。
人より少しだけ素早く動けること。人より少しだけ剣が立つこと。 それが二度の地獄を生き延びさせてくれた俺のすべてだ。
大軍を導く英雄にはなれない。全体を左右する戦術も分からない。 だが——最後まで俺に「生きろ」と言い残した隊長の顔が、脳裏から離れなかった。
「——鬼が来やがったあああああ!!!!!」
伝令を受けた壁の上の見張り兵が、悲鳴に近い叫びをあげた。
(第四話 完)
読んでいただき感謝感激です!!!!!!!!!!!!
AIをふんだんに使用していますが
これからも「桃太郎を継ぐ者たち」をよろしくお願いします!




