第三話:第三砦防衛戦 其の壱
※読者の皆様へ
本作には一部、戦場における暴力描写・残酷な表現(流血や部位の損壊など)が含まれます。苦手な方はご注意のうえお読みください。
桃太郎様が死んだ。あの英雄が殺されたのだ。それなのに、英雄の死を悼むことすらなく、機械的に次の戦力を準備する。
……桃太郎の名が引き継がれることは知っていたが、なぜそこまで桃太郎の襲名にこだわるのだろうか.....
「……おい、ボーッとするな! 弓隊は矢を補充しろ!衛生兵は負傷者を! 」
陣の怒号が飛び交うこの「第三砦」は、最前線を支える人間側の大要塞だ。人5人分くらい高く積み上げられた四角状の石壁の上には大型の弩砲が十数個ほど並び、数百を超える防衛兵と潤沢な物資が揃っている。本来なら、雑鬼が数百押し寄せようとビクともしない絶対の防衛・補給拠点だった。
人材も設備も、抵抗するための力は十分ここにある。
だが今、砦の広場を支配しているのは重苦しい絶望と動揺だった。
「桃太郎様が死んだ」「もう終わりだ……」
と、甲冑を外して崩れ落ちる中堅兵や、震える手で刀を抱える若手が後を絶たない。防衛拠点としての機能はあっても、それを動かす人間の心が完全に折れかけていた。
陣は冷徹な眼差しで陣地を見渡し、指揮を執り続けている。 さすが砦を任される老将だが、その背中にもどこか不安のようなものが漂っているように見えた。
その時——重厚な鉄の門がわずかに開き、泥と血に塗れた何かがすべり込んできた。
「……う、あ……っ」
「隊長!?」
俺——凛は、思わず駆け寄った。 潰れたはずの先鋒隊を率いていた隊長だった。
右腕は肘から先を深く断ち切られ、両脚もまともに動かないのか、左腕一本の力で泥を掻き、這うようにして戻ってきたのだ。顔面は血と土で覆われ、誰だか判別もつかないほどに痛々しい。
「隊長! しっかりしてください! おい、衛生兵を——」
「凛……か……」
隊長は俺の胸ぐらを血塗られた手で掴むと、喉を鳴らしながら血を吐き出した。 そして、震える指先で外を指さし、かすれた声で途切れ途切れに叫んだ。
「……来る……鬼どもだ……!」
広場の兵たちが息をのむ。
「桃太郎様を殺して……勢いづいて……! 雑兵の群れが……ここを……っ!」
「な……ッ!?」
兵たちの中に動揺の波が広がった。 上位三体(黒・赤・青)の姿はないようだが、九代目を討ち取ったことで勢いづいた無数の雑鬼たちが、血の匂いを追ってこの第三砦へなだれ込もうとしているのだ。
「門を鎖で固めろ! 迎撃の準備を急げ!」
老将・陣の声が雷のように響き渡る。 陣様は這いつくばる隊長を凛に任せ、すぐに石壁の上の防衛兵たちに向かって采配を振るった。
「怯むな! ここは第一線にして最強の防衛拠点だ! 設備も兵も十分に揃っておる! 雑鬼ごときに破らせるな!」
陣様の怒号によって、かろうじてパニックは抑え込まれた。 しかし、兵たちの表情に宿っているのは「戦意」ではなく「死への恐怖」だ。頼みの綱だった英雄を失ったいま、いくら立派な石壁があっても、誰も自分たちの勝利を信じられていない。
「……凛」
隊長が俺の腕を強く握った。
「お前は生きろ……生き延びて……この戦争を......」
「隊長、喋らないでください!」
遠くから、地の底を揺らすような地鳴りが聞こえ始めた。
ドス、ドス、ドス、と規則正しく迫ってくる。 それに混ざって聞こえるのは、破壊と殺戮を前にした鬼たちの濁った笑い声と耳をつんざく咆哮だ。
(来る……!)
設備はある。兵もいる。 だが、心の折れた人間たちが、殺戮に飢えた鬼の群れを前にしてどこまで持ちこたえられるか。
最前線要塞・第三砦の、本当の地獄が始まろうとしていた。
(第三話 完)
読んでいただき感謝感激です!!!!!!!!!!!!
AIをふんだんに使用していますが
これからも「桃太郎を継ぐ者たち」をよろしくお願いします!




