↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第十八話 :矜持と当主(交流戦 後編)

※読者の皆様へ


本作には一部、戦場における暴力描写・残酷な表現(流血や部位の損壊など)が含まれます。苦手な方はご注意のうえお読みください。



「始め!」


善蔵(ぜんぞう)の掛け声が響くと同時に、空気の弾ける音が道場に充満した。


「ハッ!」


雄真(ゆうま)の踏み込みは、同い年の九歳とは思えないほど鋭かった。桜迅流の真髄である「抜刀術」。鞘から解き放たれる一撃は、まるで一陣の風のごとく凛の首元へと肉薄する。


ガキンッ!


間一髪、凛は木刀の柄で受けるのが精一杯だった。圧倒的な踏み込みの勢いに押され、凛の小さな体が大きく後ろへ弾き飛ばされる。


「どうした、受けるだけで一杯一杯か!?」


雄真の連撃は止まらない。一撃を交わした瞬間には既に次の構えへと移行し、鋭い柄打ちと抜刀の軌道が凛を容赦なく襲う。


(速い……! 軌道が見えない……っ)


凛の体には浅い打撲痕が刻まれ、完全に防戦一方に追い込まれていた。しかし——極限の集中の中、凛の『眼(め)』が変容を始める。


世界が、急速に遅くなっていく。


雄真が刀を抜くコンマ数秒前、その「肩の筋肉がわずかに収縮する予兆」が、凛の瞳にはっきりと映し出された。


(あそこだ……!)


「取った!」


勝利を確信した雄真の必殺の一撃。だが凛は、相手が打ち込んでくる軌道の上へ、吸い込まれるように刃を「置く」形で滑り込ませた。


パンッ!と高らかに甲高い音が響く。


凛は相手の刀を力で打ち落としたのではない。雄真が自ら踏み込んでくるエネルギーと軌道を完全に読み切り、その刃の側面に最小限の動作で木刀を添え、威力を逃がしながら滑り込ませたのだ。


雄真の振り抜いた木刀は虚空を切り、無防備になった喉元に、凛の木刀の先がピタリと突きつけられていた。



「……そこまで! 勝者、凛!」



静寂の後、道場に歓声が上がった。

地面にへたり込んだ雄真は、悔しさに肩を震わせる。


「くそっ……! なんだよ今の……! 覚悟しておけよ、リン! 十五になって一緒に戦に出るまで、絶対に俺がお前より勝ってやるからな!!」


涙目で叫ぶ雄真に、凛はどこか嬉しそうに頷いた。


「うん。……僕も、負けない」


しかし、その爽やかな決着を台無しにする怒声が響いた。


「ふざけるな! たまたま手元が狂っただけだろ!」

「欠陥流派のガキに負けてたまるか! おい、正眼流の奴らを叩きのめせ!」



一馬を卑怯な手で下した男をはじめ、納得のいかない桜迅流の先輩門下生たちが暴徒と化し、集団で凛や詩織へ襲いかからなくと木刀を振りかざした。



「やめろッ!」



暴走する先輩たちの前に、真っ先に飛び出したのは雄真だった。

木刀を固く握りしめ、自分より体格の大きな先輩門下生たちの前に立ち塞がる。その瞳には、先ほど凛に向けた悔しさではなく、身内の見苦しさに対する強い怒りと誇りが宿っていた。


「なにしてんだよ! 勝負はついただろ! 凛は……正眼流の剣は、俺の抜刀を見切った! ズルして勝とうとしたり、負けて暴れるなんて、桜迅流の面汚しだ!!」


戸惑いながらも凛を守るように立ち塞がる雄真の姿に、一馬と詩織も目を見張り、凛の胸の奥にも熱いものが込み上げた。



「雄真、お前……味方する気か!?」

「うるさい! 俺は正々堂々勝った凛に負けたんだ! 邪魔するなら俺が相手になる!」



緊張が頂点に達し、身内同士の衝突すら起きかけたその瞬間——


「——そこまでだ、愚か者ども」


道場全体を震わせるような、腹の底に響く重厚な声が落ちた。


踏み込んできたのは、身の丈六尺を超える巨躯の男。白髪混じりの髭を蓄え、圧倒的な覇気を纏う男——桜迅流当主、桜井頑鉄(さくらい がんてつ)だった。


「し、師匠……!? なぜここに……」


門下生たちが青ざめて縮み上がる。頑鉄は鋭い一瞥で身内を一蹴すると、静かに善蔵へと向き直り、深く頭を下げた。


「篠原殿、我が門下生どもが不作法を働き、誠に申し訳ない。わしの目を盗み、勝手な殴り込みをかけるとは……当主として恥の極みだ」


頑鉄は怯える先輩門下生たちを鋭い眼光で見下だし、雷のような声を張り上げた。


「目潰しに足を引っ掛け、挙句に敗北を認めず集団で襲いかかるとは何事か! 幼い雄真にすら諭(さと)されるなど、桜迅流の誇りをドブに捨てたか! 今すぐ道場へ戻れ!」


「は、はいっ……!」


門下生たちが逃げるように去っていく中、頑鉄は凛の前で腰を落とし、そのまっすぐな瞳を見つめた。


「小僧……いや、凛と言ったな。お前が見せたあの合わせ技、実に見事であった。相手の力を殺し、無駄なく中心を奪う正眼流の神髄……見事に体現しておる」


頑鉄は立ち上がると、善蔵に向かって力強く宣言した。


「篠原殿。本日の立ち合い、我が桜迅流の不徳を詫びるとともに、正眼流の完全なる勝利と認める。正眼流……決して衰えぬ見事な剣術よ」


当主みずからの言葉に、一馬と詩織は胸を熱くし、誇らしさに顔をほころばせた。

世間から何を言われようと、本物の達人には正眼流の強さが届いている。



頑鉄たちと共に去り際、雄真は振り返り、凛に向かって力強く拳を突き出した。

凛もまた、まっすぐな笑顔で拳を突き返したのだった。


(第十八話 完)

読んでいただき感謝感激です!!!!!!!!!!!!

AIをふんだんに使用していますが

これからも「桃太郎を継ぐ者たち」をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。