第十一話:第三砦防衛戦 其の玖
※読者の皆様へ
本作には一部、戦場における暴力描写・残酷な表現(流血や部位の損壊など)が含まれます。苦手な方はご注意のうえお読みください。
「ぬぅぁぁぁぁッ!!」
重厚な大斧の一閃が空を切り、石畳を砕く。
広場に降り立った陣は、老齢を感じさせぬ咆哮とともに土蜘蛛へと挑みかかっていた。だが——相手は巨躯からは想像もつかない俊敏さで跳躍し、多脚の尖端を槍のごとく連続で突き繰り出してくる。
ガギィィンッ! ガンッ!
「……くっ、速い……ッ!」
大斧の刃で間一髪受け止めるものの、重い衝撃が陣の全身を揺さぶり、じりじりと後退を余儀なくされる。土蜘蛛の外骨格は固く、俊敏な動きと相まって、老将一人では傷を負わせることすら困難な苦戦を強いられていた。
一方、大鉄門の外——。
シュババババッ! ドォンッ!!
壁上からの弩砲と火矢が絶え間なく降り注ぎ、森から押し寄せた雑鬼の増援は次々と磨り潰されていく。剛造の長槍と蓮二の太刀、そして凛の牽制が噛み合い、門外の戦況は人間側が押し返す形で善戦していた。
その光景を壁上から確認した戦術家が、即座に身を乗り出して叫んだ。
「外の抑えは十分だ! 武者走りの横、小鉄扉を開けろ! 剛造、蓮二……陣様が限界だ、広場へ入り共闘せよッ!」
号令とともに、門脇にある小さな側門——小鉄扉の鎖が引き抜かれる。
剛造と蓮二が速やかに中へと躍り出ようとしたその時、剛造が立ち止まり、血と泥に塗れた凛へと視線の圧を向けた。
「そこの桃上衣.....名前は?」
剛造の低い声が凛の足を止めさせた。
「……?.......凛です。」
「お前のその眼と足さばきを見込んでいる。俺と蓮二だけじゃ、あのすばしっこいバケモノの隙を作れんかもしれん……ついてきてくれ」
不意の要請に凛が驚きを見せると、副部隊長の蓮二が肩に太刀を担ぎ、凛の目元をじっと見つめながら問いかけた。
「おい凛、流派はなんだ? 俺は『犬心流』だ」
「……『正眼流』です」
凛の短い答えを聞いた瞬間、剛造と蓮二の顔に「ちょうどいい」と言わんばかりの安堵の表情が浮かんだ。
これまでの凛の戦いざまを見ていた精鋭二人。それがあれば、陣を助け、あの巨大な土蜘蛛の懐へ飛び込む足掛かりになると二人は確信したのだ。
「俺らについてこい。あの老いぼれ将軍を死なせるわけにゃいかねえからな。」
「……了解です。甚平、外を頼むぞ」
「凛ッ!? お前、あのバケモノの前に戻るのかよ!……くそっ、生きて戻って来いよ!」
甚平の叫びを背に受けながら、凛は刀を握り直し、剛造・蓮二とともにギィと開いた小鉄扉の暗闇へと足を踏み入れた。
——広場へ躍り出た直後、陣は土蜘蛛の糸に絡まって身動きが取れなくなっていた。体中に見られる痛々しい切り傷やアザが事態の深刻さを表していた。
そして土蜘蛛が陣を頭から食べようとしていると剛造の長槍、蓮ニの太刀が陣の視界を覆った。
「陣様! 助太刀いたしますぞッ!」
「剛造……! ぬうっ、水を差すな野郎どもッ!」
陣が汗と血をぬぐいながら笑顔を浮かべて鋭い眼光を取り戻す。
凛は素早く陣を絡める蜘蛛糸を切った。
「蓮二! 左右から挟むぞ! 凛も隙を作れッ!」
「応ッ!」
蓮二の『犬心流』独特のしなやかさと猛烈な連撃が、暴れまわる土蜘蛛の右側の多脚を襲う。執拗な鋭い斬撃が外骨格の継ぎ目を刻み、土蜘蛛の意識を逸らした。
「そこだッ!」
剛造の重厚な長槍が反対側から唸りを上げ、土蜘蛛の側頭部を強く打ち払う。巨体がわずかに体勢を崩したその瞬間——。土蜘蛛のおぞましい笑顔が剛造に向けられた。
(見えた……!)
凛の超人的な動体視力が、スローモーションのように世界を切り取った。
粘液の糸を吐き出そうと開いた口元、その口元の予備動作に凛はいち早く気づいた。
凛は泥を蹴り、低い姿勢のまま土蜘蛛の懐へと滑り込んだ。正眼流の極意たる無駄のない一閃が、粘液を溜め込んだ土蜘蛛の喉元を深く穿つ。
「ギシャアアアアッ!?」
黒い血が噴き出し、糸の吐出が不発に終わる。隙が生じた。
「でかした、凛ッ! 陣様、今です!!」
剛造の叫びに応え、頭上から老将・陣の大斧が雷鳴のごとき勢いで振り下ろされる——!
(第十一話 完)
読んでいただき感謝感激です!!!!!!!!!!!!
AIをふんだんに使用していますが
これからも「桃太郎を継ぐ者たち」をよろしくお願いします!




