第十話:第三砦防衛戦 其の捌
※読者の皆様へ
本作には一部、戦場における暴力描写・残酷な表現(流血や部位の損壊など)が含まれます。苦手な方はご注意のうえお読みください。
「今だッ! 門を閉めろぉぉぉッ!」
伝令兵の叫びが、狂乱の戦場に響き渡った。
前線が雑鬼を殲滅し、大鉄門の周りから雑鬼どもを弾き飛ばした直後——。
ゴゴゴゴゴ……バガァァンッ!!
背後で重厚な大鉄門が凄まじい音を立てて固く閉ざされた。
門が閉じられたことで、広場に取り残された土蜘蛛と、門外に残された雑鬼の群れは完全に分断された。
そして直後、閉ざされた門の向こう側——砦内の広場から、地鳴りのような怒号と凄まじい破壊音が響き始める。
「全兵、撃ち下ろせぇぇッ!!!!!」
老将・陣の咆哮。
逃げ場を失った広場で暴れ狂う土蜘蛛に対し、壁上の武者走りから無数の弩砲と火矢が容赦なく降り注ぐ。
凄まじい機動力で回避を試みる土蜘蛛だったが、狭い広場の中では限界があった。太矢が黒漆の外骨格を穿ち、爆ぜる火矢が肉を焼き焦がす。だが、将鬼の硬質な外殻は想像を遥かに超えて強固だった。
追い詰められた土蜘蛛は、頂点に鎮座するおぞましい顔を天井へと向け——
「——ギシャアアアアアアアアアアッ!!」
鼓膜を割るような大絶叫が夜空を突く。
その咆哮に呼応するように、大鉄門の外、闇に包まれた森の奥から更なる雑鬼の群れが地を埋め尽くす津波となって押し寄せてきた。
「悪夢はもういいから,早く覚めてくれ........」
目の前の災害に甚平が力なくささやく。
剛造や蓮二、凛も体の限界を悟りつつあった。
「伝令ッ! 外の森から新たな雑鬼群が接近! 門前の遊撃部隊がッ!」
報告を受けた戦術家の顔が苦悶に歪む。だが、絶望はそれだけでは終わらなかった。
「——ギガァッ!!」
手負いとなったはずの土蜘蛛が、狂乱のままに壁面へと飛びついたのだ。
無数の多脚が石垣を抉り、凄まじい速度で壁上の「武者走り」へと直接よじ登ってくる!
「の、登ってくるぞッ! 距離が近すぎるッ!」
間近に迫る巨大な牙とおぞましい顔面を前に、たじろぐ弓隊と弩砲隊。
防衛線が瓦解しかけたその瞬間——。
「うろたえるなッ!!」
一閃の雷鳴のような怒号とともに、前へ出たのは老将・陣だった。
その手には、指揮官の威厳を脱ぎ捨てた巨体相応の「大斧」が握られていた。
陣は全身の筋力を絞り出し、石垣の淵にかけられた土蜘蛛の太い前脚へと大斧を叩きつけた。
ガァァァンッ!!
金属同士が激突したかのような激しい火花が散る。
だが、傷ひとつ付かない圧倒的な外骨格の硬度と質量に、陣の腕が痺れ跳ね返される。それでも渾身の力で押し込み、土蜘蛛の巨躯を力任せに壁下へと弾き落とした。
ズサァァンッ!
広場の泥の中へ落とされた土蜘蛛が、なおも黒い血と粘着糸を撒き散らしながら起き上がってくる。あまりにもしぶとい異形の生命力。
外からは群がる雑鬼、中には倒れぬ鬼の将軍。挟み撃ちの絶望が砦を覆う中、陣は大斧を強く握り直す。
「弓隊、弩砲隊は狙いを外へ切り替えろ! 門外の雑鬼どもを撃ち殲滅せよッ!」
「し、しかし陣様! 広場の鬼はどうするのですか!?」
「奴の注意は……ワシが引き受ける!!」
陣は叫ぶや否や、壁上から広場へと渡る階段を駆け降り、一人土蜘蛛の目の前へと降り立った。
「来い、化物! 第三砦の老将が相手になってやるッ!」
一人で巨大な将軍と対峙する陣の背中と、門外で死闘を続ける剛造や凛たち。
戦術家らは壁上で頭を抱える。
戦場は決着どころか、更なる混沌と死闘の渦へと叩き落とされようとしていた。
(第十話 完)
読んでいただき感謝感激です!!!!!!!!!!!!
AIをふんだんに使用していますが
これからも「桃太郎を継ぐ者たち」をよろしくお願いします!




