ヒロインは頑張っている(後編)
とある休日。
市街地を歩いていたら、噴水の側に座っている騎士見習いのブライトを見かけた。
学校の中庭でのイベントが、場所を変えて起きたんだ。
この時期、彼は優秀な弟に劣等感を抱いて、苦しんでいるはず。
同年代で考えたら、充分強いのに。
だから、ヒロインの励ましが必要なのよね。
「ブライト。大丈夫? 元気ないみたい」
うふふ。
キュンキュンするでしょ?
ちゃんと台詞通り言えたから、よし。
これで生きる希望ができて、彼は覚醒していくはず。
「君は、一体、何がしたいんだ?」
ん? こんな台詞あったっけ?
もしかして、私を好きになっちゃいそうだけど、ヘンリーのことを思って身を引かなくちゃと葛藤しているのかな。
忠誠心と真実の愛。
悩むよね、苦しいよね。
でも、今はどちらを選ぶとか言えない。
そこまで親しくなっていないもん。
いけ好かないラルフを除外した時点で、逆ハーレムルートはなくなった。
だから、わたしは残ったみんなを大切にしてあげたい。
苦悩から救ってあげる。
どんと来い、だよ。
「みんなを幸せにしたいだけ。えへっ」
可愛く見える角度を意識しながら、ブライトにウィンクしてあげた。
そして、第三王子ヘンリーの命の危機。
毒蛇に噛まれるイベントだ。
蛇の毒なんて怖いよね。
だけど、森で野外実習なんていうイベント。
いつ、どこで開催されるのか。
同じ学校じゃないから、情報が入ってこないんだよ。
学院の生徒じゃない私には、イベントの発生場所なんてわからない。
学院へ一緒に見学に行った子には、距離を置かれている。学院長にお説教されたから、わたしの印象が悪くなったよね。
ヒロイン特有の能力があるんじゃないかと期待したけど――あったね。
苦しいときのヒロイン頼み。
王都に近くて蛇が出そうな森。
それに学院が野外実習に使うなら、広い野原と水が必要。
そう考えて、場所を推理した。
そうしたら一発でビンゴ。
やっぱりヒロインは強運だね。
それに、農家のおばちゃんから教えてもらった民間療法も、馬鹿にできないよ。
おばちゃんにもらった飲み薬で、ヘンリーのピンチを華麗に回避できたもん。
アルバイトでお小遣いも稼げたし、一石二鳥だね。
ヘンリーがお礼を言いに会いに来てくれるかもと、ちょっぴり期待した。
それなのに、感謝されるどころか、怖い顔をしたおじさんたちに根掘り葉掘り話を聞かれた。
「なぜ、ここにいた?」
「誰の指示だ?」
「その薬は、どこで手に入れた?」
なんか、疑われてる?
知らないよ。ゲームで知っていただけだもん。
幸せになる前の、不幸を積み重ねるターンか。
う~ん。盛り上がりに必要だとわかっていても、実際に味わうと辛いなぁ。
とぼとぼ農家に戻ったら、おばちゃんたちに叱られた。
どこに行っていたんだって。
アルバイト料も減らされた。
現実は、ヒロインにも厳しい……。




