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転生ヒロインの被害者の会  作者: 紡里


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7/12

ヒロインは頑張っている(前編)

 乙女ゲームで学校が共学じゃないって、おかしいでしょ。

 入学式の日の出会いイベントは?

 同じクラスだからこそのエピソードは?

 廊下でぶつかるとか、お昼を一緒に食べるとか、放課後に勉強を教え合うとか。

 そういうのがなかったら、どうやって愛を育めばいいわけ?


 わたしは、ヒロインなのに。

 ヒロインだから、自分から動くことにした。


 こうなってみると、一番接触が難しいのは、王族である第三王子のヘンリーだ。

 攻略の難易度は高くないけど、偶然会うとか無理でしょ。


 仕方なく、彼が通学する馬車の前に、飛び出した。

 もちろん、すっごく怖かったよ。

 馬車って、近くで見るとものすごく大きいんだよね。

 馬の蹄も怖かった。蹄鉄を打っているから、痛そうじゃん。

 いななきとか鼻息とかホラーみたいな迫力で、涙が出そうになった。

 護衛の人たちには怒鳴られるし。


 ヘンリーは馬車から降りてこなかった。

 ガラス越しに目は合ったけど、顔を覚えてもらえたかな。


「お互い頑張ろうね」

 って、声が聞きたかった。この出会いは失敗かなぁ?


 だけど、やらなきゃならない。

 わたしはヒロインだから。



 次のチャンスは、キングスフォード学院の行事だ。

 女学校の同級生が、その行事に行くと言うから、一緒に連れて行ってもらった。

「田舎から出て来て、知り合いもいなくて寂しいの」と泣きついたら、いいよって。

 持つべきものは優しい友達だよね。


 寮の台所を借りて、手作りのお菓子をたくさん作った。

 寮の職員さんにも配ったし、連れて行ってくれるお友達にもあげた。

 みんな美味しいって言ってくれて、作った甲斐がある。

 ヘンリーは喜んでくれるかな。

 もちろん、ヘンリーの周りにいる人たちの分もちゃんとある。ブライトの分もね。


 一人だけに渡すなんて、依怙贔屓はしない。

 男の子にだけ媚びて、女の子を馬鹿にするとか、そういう露骨なことをするのも良くないよね。

 正当派ヒロインは、清く正しい子なのだ。



 ……なのに。

 ヘンリーのお友達に警戒されて、お菓子を取り上げられた。

 毒が入っていないか確認するためだって。

 失礼しちゃう。

 でも王族だから、そういう危険もあるのか。


 そのあと、院長室に呼ばれて、厳重注意を受けちゃった。女学校の校長にも言いつけるって。

 なんだか、ゲームみたいに上手くいかない。

 好感度のチェックもできないし、イベント達成率もわからない。


 まあ、いいか。前進あるのみ。



 その次は「野摘み会」だ。

 第三王子の母親である第二王妃が、令嬢やご夫人たちを集めて開くイベントだ。

 ここで選択を間違うと、ヘンリーは女性恐怖症になってしまう。


 ヘンリールートに入るかどうかにかかわらず、助けてあげなきゃと思う。

 でも、わたしは招待されなかった。

 どうすればいい?


 そこで、農家のお手伝いに潜り込んだ。

 農家のおばちゃんたちと一緒に、お嬢様たちが摘んできた草の仕分けをした。

 だって、お嬢様たちが変な物まで摘んでくるんだもん。

 食べられる草。

 薬になる草。

 触らない方がいい草。

 似ていて間違っても仕方ないと思えるのと、どうしてこれを摘んできたと首を捻るものまである。


 まあ、おしゃべりしながら仕分けるから、結構楽しかったけどね。


 ただ、一部のご夫人たちはすごく詳しかった。

「この薬草、うちの領地でも育てられないかしら」

「薬草を加工できる薬師の確保が必要で……」

 なんて、領地経営の話で盛り上がっている。

 へえ。

 ご夫人って、お茶を飲んでおしゃべりしているだけじゃないんだ。

 意外だった。


 でも、それより大事なのはヘンリーだ。

 彼が奥様がたの毒牙にかからないよう、わたしがガードしてあげるんだ。


 そう張り切っていたんだけど、ヘンリーは一瞬顔を出しただけで、いなくなってしまった。

 変な事件に巻き込まれるよりいいけど、もうちょっと見たかったな。


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