第6話 魔界接客界隈、初めての視察
魔物マートを卒業した翌日、オルガに連れられて俺は魔界の接客界隈を回ることになった。
オルガ「今日は特別だ。お前を本物の接客の世界に連れてってやる。笑えるぞ、熱血紫色」
俺(笑えるって……俺は見学側だよな……? なんか嫌な予感しかしない……!)
最初に連れて行かれた高級レストラン。
客「このワイン、味が薄いんだが? 作り直せ」
吸血鬼店員「申し訳ありません、伯爵様。
……昨夜の魔王軍会議で上司に八つ当たりされましたね?」
客「なっ!?」
吸血鬼店員「左肩が上がってますよ。『ストレス解消コース』に変更します。
上司の悪口付きでどうぞ」
客「は、ははっ……お前、良い店員だな」
俺(……一瞬で心読んだ!? 俺が3日かけて苦戦してた無口客を、笑顔一つで落とすとか反則すぎるだろ!)
オルガ「読心接客の達人だ」
俺(達人って……俺はまだ「対応する」レベルなのに、こっちは「丸呑み」レベルかよ!)
次は喧騒の居酒屋。
酔ったオーク「この酒、薄えんだよ! 作り直せ!」
牛頭族店員ガルド「ははっ、今日も元気だな!
昨日、上官にぶん殴られたんだろ?」
オーク「うおっ!? なんでわかってんだよ!?」
ガルド「俺の目をごまかせると思うなよ!
今日は『ストレス粉砕コース』だ! 飲んで吐いて、また飲め!」
オーク「うおおおお!?」
ガルド「魔王様に『今日も頑張った!』って叫べ!」
オーク「はははっ! お前、最高だな!」
俺(……一瞬で機嫌直した!? 俺が30分粘ってやっと「チッ」って言わせた客を、30秒で大笑いさせるってどういうことだよ!)
オルガ「感情誘導接客の達人だ」
俺(達人って……俺はまだ「耐える」レベルなのに、こっちは「飲み込む」レベルかよ! みんな化け物かよ……!)
オルガは俺の頭をガシガシ撫でながら大笑いした。
オルガ「どうだ? 魔界の接客はただのバイトじゃねえだろ?」
俺(ただのバイトじゃねえって……俺は今、ただのバイトとして生き残るので精一杯なんだけど……!)
オルガ「どこまで行けるか……俺は楽しみにしてるぜ、熱血紫色!」
俺(楽しみにしてるって、俺は今めちゃくちゃ焦ってるんだけど……! この人たち、みんな何してんだ……!)
その日、俺は魔界接客の深さと広さを、初めて本気で知った。
そして、もっと強くなりたいという気持ちが、胸の奥で熱く燃え上がっていた。
(……絶対に、いつかこいつらを超えてやる! 紫色ピエロの意地で!)
第6話 完




